アーケード

　仕事の帰りにアーケードを通った

　もう遅い時間だから

　天井の照明は消えていた

　歩く人の姿は少ないが

　数軒おきに開いている飲み屋から

　歌声や笑い声が聞こえた

　自転車を押しながら

　独りだった

　少年や若者の頃

　アーケードには

　昼間も人が沢山歩いていて

　時にはぶつかりそうにもなった

　自転車を降りて押すのは

　その頃の名残

　今はもう会うこともない

　古い友人と並んで歩いた

　ゲームセンターはカラオケ屋になり

　百円ショップは消え

　何度か入った飲み屋は更地になった

　パチンコ屋の跡には水が溜まって

　池の様だ

　このまま池になったらいい

　そう思いはするが

　おそらく今だけの眺めだろう

　無くなったものが多い

　在り続けるものもある

　新しく出来たという認識のラーメン屋

　いつしか十年以上開いていた

　全ては変わるし

　いずれ滅ぶ

　重く感じるようになった自転車を押す