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ババアの店
高校の帰りにたまに寄った駄菓子屋
穏やかなおばあさんが
住宅街の中の目立たない場所で
ひっそり店を構えていた
口の悪い友人は
ババアの店と呼んでいたっけ
放課後の教室で
丸めた紙をボールがわりに
スリッパをバットにした
時には部活をしている奴らより遅くまで
野球好きでもないのにな
夕焼けの空の下
田んぼの中の道で
自転車に乗せたラジカセから
録音したテープを流して
そんな帰り道
時々寄った店だった
高校を出てから会わない友人らと
何を話したかは
もう覚えていない
今はもうない駄菓子屋で
十円の菓子を買い食いした
そんなことはたまに思い出す
町は変わって
田んぼも減って
昨日のことのように感じる
あの頃が
ひどく遠いような
すぐそばにあるような




