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忘れる
二千年、そのぐらいは生きたい
そう思っていた
若い頃
やりたいことが沢山あって
いずれ出来ると思っていた
自分を信じていた
今、まだ百年も生きてはいない
忘れたくない
そう思っていた
人たち、こと、もの
沢山忘れてしまった
忘れてしまった
関わってきた
大事だった
けれど思い出せない
もっと永く生きたら
きっともっと忘れてしまう
そう思うと
二千年は長すぎる
今はもうない広い田んぼ
学校の帰りに見上げた夕方の空
いつも風が吹いていた町
好きな人と並んで、あずまやで聞いた雨の音
少しずつ、忘れる
前向きでないのだろうけど
忘れたくない




