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緊急事態に暇人は呼び出しを受ける


 ミーンミーンミーン


 ああ、蝉が鳴いている。完全に夏だ、暑い……

 こんな中、外に出てるやつらとかアホだろ。


 俺は自室でクーラーの出す冷たい空気の元、サッカー漫画を読んでいた。

 季節的に何処か暑苦しい気がするな。いや、自分でスポーツ漫画を選んでおきながら何を思ってるんだよ。

 まぁ当然、面白いから読んでるんだけどね。


 よくよく考えると2年になっていろいろあったなぁ……


 俺はここ数ヶ月の出来事を思い返していた。


 音葉と出会い、東雲と友達?になり、今では天音とも一緒にご飯を食べるようになっている。


 気がつけば、学校にも自分の居場所のようなものが出来た気がしていた。

 だからこそ、今後の東雲との関係性に少しだけ不安を抱いている。


 東雲は少しずつだが、間違いなく周囲との関係が元に戻ってきていた。前にも感じたが彼女はこれからあるべき姿を取り返していくことだろう。


 最近そのことを強く意識し始めてしまったせいか、寂しく思ってしまうことがよくあった。

 引き止めたいという想いもなくはない、もしかすると気を遣って止まってくれる可能性もゼロじゃないと思ってる。

 東雲はああ見えても義理堅いところがあるからな。俺は別に恩を売ったつもりはないが、東雲はそう感じてくれてるふしがあった。だから、多分悩んでくれると思う。


 でも、きっと彼女が居たいと思っているのは斗真の側だ。それを俺が邪魔する訳にはいかない。


 俺は自分にそう言い聞かせた。


 ブーブー、ブーブー。

 そんな時、突然俺の携帯が着信音と共に震え出した。


 電話か、もしかして音葉からか?


 最近ちょくちょく連絡を取っていたので、俺はそう断定して電話に出た。

 それ以外に電話する相手とか居ないようなもんだしな。


「もしもし、碧、貴方今日暇よね?」


「おっ、えっ……」


 違った、この声は姉さんだ。

 

「それは良かった。だったら今から位置情報送るから直ぐにそこまで来てちょうだい。分かったわね?」


 いや、全然分からん。

 そもそも暇だとか一言も言ってないからね。まぁ、暇なんだけど……


「ちょっと待ってくれよ。なんで行くこと前提に話が進んでるんだ?」


「いいから来なさい!……いえ、お礼はまた今度ちゃんとするから、お願いだから直ぐに来て欲しいの」


 姉さんは少し強めの口調から、懇願するようなものに変わった。

 珍しいな……姉さんは基本的に人を頼らず全て自分で解決しちゃうような人だからこんなこと初めてかもしれない。


 その分、今回は本当に困ってるのだと感じた。


「分かった、今すぐその場所に向かう。それで何か持っていった方がいいものとかあるか?」


「特にないわ。強いて言うなら精神力を多めに持ってきて」


 なんだよ精神力を多めって?

 初めて聞いたワードだな。良く分からんが、その言葉のせいで一気に不安になった。


 俺は一体何をやらされるんだろうか?

 

 そんなことを考えながらも、困ってる姉さんをほっとくことなんて出来る訳がなかった。

 普段からどんだけ感謝しても返しきれない恩があるから……


 それも、言葉では表せないほどにだ。


 俺は部屋のクーラーの電源を切ると、外出用の服に着替えてから外に出た。

 節電は大事だ、電気代が安くなるからな。


 うう、それにしてもホントに暑い……

 眩しい日差しが容赦なく俺に襲いかかってくる。

 今日何度くらいあるんだろうか?


 天気予報は見てないが間違いなく猛暑日の部類に入ってくるはずだ。


 そこでふと、あることを思い出した。


 あれ?、ってか姉さん今、バイトじゃなかったか?

 そうとなると、恐らく今回はそのことで何かトラブルがあったのだろう。

 忙しくて人数が足りてないとかそんな感じかな?


 それにしても、バイト先の定食屋ってこんなとこにあったのか。初めて知ったわ……

 姉さん何かと教えてくれなかったからな。


 それよりもし、バイトの手伝いをやらされるなら、精神力も必要だと思うけど体力の方も必要だと思うんだけど。

 ああ、とにかく怖い、なんだか嫌な予感がする。

時系列に少し無理があるので、そのうち調整する予定です

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