女の嫉妬 〜side 音葉
サブタイトル変更しました
「ちょっと、音ちゃん貴方一体どう言うつもりなのよ!」
昼食を食べ終えて碧たちと別れた後、私は歌織さんにキッチリ叱られていた。
まぁ、当然と言えば当然の結果だ。
あの時は私から歌織さんに頼んで碧の様子を少しだけ見に行っていたのだ。
声を掛けないと、そんな約束事を決めてのことだった。
もちろん私としては碧と会話をしたかったのだが、そこは碧自身から頼まれたことでもあって我慢することにしていた——はずだったのだが・・・
他の女の人達と食事をしようとしていた碧の姿を見た瞬間、胸の中で大きな疼きを感じ、気づいた時には考えるよりも先に身体が動いてしまっていたのだ。
「ホントにごめんなさい、自分でもなんであんなことしたのか分からなくて……」
私は心から謝罪の気持ちを込めて頭を下げた。
「もう、それ本気で言ってます?」
「はい……」
私が頷くと、歌織さんは左手で自分の額を押さえた。
「ふぅ、分かってたことなんだけど、これはかなり重傷ね……」
歌織さんはやれやれとため息を吐く。
「ごめんなさい」
私は再び頭を下げた。
「まぁ、してしまったことは仕方ないよね……
そこは音ちゃんの正体がバレなかったことを素直に喜びましょう。
ちなみにですけど、もしバレてた場合は私が鈴菜さんに怒られてたからね!」
「はい、ほんとにすみません」
「……そこまで反省してるなら、今回は特別に許してあげます。でも、私のことを妹扱いしたことに関しては絶対に許すつもりないからね」
で、ですよね……
あわよくば許してもらえたかなって思ってたんだけど、流石に無理よね。
歌織さんには妹ネタは禁句だなぁ。
私はもう二度と言わないと心に誓った。
「それと、今回のことで良く分かりました。待ってても音ちゃんは全然気づかなさそうだし、手遅れになっても可愛そうだから少し考え方を変えます。
これは、私からのアドバイスだと思って聞いて下さい」
「あの、何のアドバイスですか?」と聞いてみても歌織さんからの返事はなかった。
その代わりに歌織さんは改めて私の目をじっと見てきた。
私はその真面目な雰囲気に少し緊張してしまう。
「音ちゃんが、このままでいるつもりなら、碧君のことは覚悟していた方が良いと思います」
随分と曖昧な言葉だなと思った。
その為、イマイチ歌織さんの意図も伝わってこない。
「……それって、どう言うことですか?」
私がこのままでいるなら碧のことを覚悟する?
私にはホントに意味が理解出来なかった。
「じゃあ、少し質問をさせて貰います。
例えばだけど、碧君が今日私たちも一緒に食事をした東雲さんと付き合うとしたら音ちゃんはどう思いますか?」
碧があの女と付き合ったら?
それって異性としての関係を育むってことだよね……
「もう少し詳しく噛み砕くと、恋人として手を繋いだり、食事をしたり、当然キスだって——「嫌っ!」」
そのことを想像した瞬間、私の背筋がゾワリとした。
「それの何が嫌でした?」
「何がって、碧があの女となんて絶対にダメよ!
だって東雲さん、髪色明るくて凄くヤンチャそうだし、碧とは絶対に合わないもん!」
うん、絶対に合わない。
何故か私に対して挑戦的だったし、碧との距離感が近すぎるし……とにかくダメだ。
「本当にそんな理由ですか?……では東雲さんじゃなくて天音さんだったとしたらどうですか?
彼女は真面目そうな性格ですし、音ちゃんと違って料理も出来ますよ」
「それは……」
天音さんは滅茶苦茶美人だし、非の打ち所がなさそうな性格だと私も感じていた。私はそんな天音さんが碧と二人きりでいる姿を想像する。
すると今度は胸の奥がキュッと締め付けられる感覚に陥ってしまう。
そして、やっぱりそれは受け入れられなかった。
そもそも天音さんは碧とも仲良くないし……そんな軽い気持ちで付き合うなんかダメに決まってる。
そんな言い訳を並べてみたが何処かしっくりとこない。
……違う、そんなんじゃない。私はもっと根本的なとこで拒絶してるんだ。
だったら東雲さんのことも?
そんな疑念が湧き上がってくる。あれ?、なんなのよこれ……私が嫌だったのは東雲さんの性格のせいじゃなかったってこと?
「音ちゃんもう、答えはでてますよね?」
「……はい」
「これで分かって貰えたと思うんですけど、音ちゃんが本当に嫌だったのは碧君が他の女性と仲良くすることなんです」
歌織さんに突きつけられた事実を私は否定することができなかった。
なんなら歌織さんに対しても似たような感情を抱いたことがあったからだ。
確かその時も碧のことが絡んでいたはずだ。
「……私、こんなに性格悪かったんですね」
碧が誰かと仲良くしてることに耐えられないなんて、なによそれ……ありえない。
そんな無茶苦茶な考えを持ってしまう自分に嫌気がさした。
少し初すぎたかもしれませんが許して下さい、次に続きます




