三者三様の理由
俺たち6人は今、一つのレジャーシートの上で綺麗な円を作っていた。
側から見てもかなり異様な空間だと思う。
「で、改めまして……貴方たちは誰なんですか?」
姉さんは大きく深呼吸して息を整えると、音葉たちにそう聞いた。
まっ、そうなるよな。
俺が姉さんの立場でも同じこと聞いてたよ。
にしてもマジでビビった。音葉のやつどういうつもりなんだ?
とりあえず、俺はいったん落ち着くためにも冷たいお茶を飲むことにする。
なんか、変な汗とか出てきて、さっきから喉カラカラなんだわ……
「えーと、あのぉ、なんていうか、私は碧君の友達の鈴凪 音葉って言います。それでこっちが……ん〜、い、妹の歌織です」
「へっ、音ちゃん!?」
ブッーー!!
俺は思わず、口に含んでいたお茶を全て吐き出してしまった。
あ、危ねぇ……咄嗟に顔を背けたから良かったけど、あのままだったら皆んなにかけるところだった。
せめて両方とも友達設定にしてくれよ……
五十嵐さんも驚いていることから、完全に音葉の独断だったようだ。
ごめんなさい五十嵐さん。そんな表情で音葉は五十嵐さんを見つめている。
五十嵐さんは少し音葉を睨んだ後、大きく肩を落とした。
どうやら今回は折れてくれたようだった。
「あ〜、もう……すみません。妹の鈴凪 歌織です……」
そんな時、東雲が五十嵐さんを見て首を傾げていた。
ん、なんか嫌な予感がする……
おい、お願いだからこれ以上、場を掻き乱すような発言を言うなよ。こっちはただでさえボロが出ないかで不安で仕方ないんだ。
しかし、世の中はとは残酷なもののようで、哀しいことに俺のそんな願いは聞き届けられてしまった。
「んー、どっかで見たことある顔なんだよなぁ……あっ、もしかして、あの時のお姉さんでしょ!」
はい? あの時のってどの時のですか?
俺が五十嵐さんの方を見ると、五十嵐さんも東雲の顔を見てハッとした表情になる。
「あっ、あの店前に居た怪しい人」
どうやら二人は顔見知りだったようだ。
まって、本当にいろいろとありすぎて頭がついてこないや。
アハハハハ……マジで笑えない。
「やっぱり!、でもあの時は22歳だとか言ってなかった?」
「そ、それは……」
まさかのいきなりボロが出た。
五十嵐さんが言葉に詰まったそんな時に、音葉がすかさずフォローに入る。
「強がりなんです。妹は少し負けん気な性格で、よく背伸びしちゃうタイプなんです」
「おと、オネェちゃん……」
五十嵐さんはついには泣き崩れそうになってしまっていた。
幼く見えすぎる見た目のこと、結構気にしてたもんな……
「なるほどな、道理で歳下に見えたわけか。
可愛いなぁ……見栄張るタイプだったのな」
東雲、それ以上は辞めろ。さっきから五十嵐さんがプルプル震えている。
もう我慢の限界は近い。
「そっ、それで姉さん、そっちの天音さんとはどういう関係なんだ?」
俺は咄嗟に話題を切り替えた。流石にこれ以上は不味い、そう判断してのことだ。
「ああ、それならバイト先の後輩よ」
「えっ、天音さんバイトしてたんだ。因みに何のバイトしてるんですか?」
またしても東雲が喰いついた。
だが、今回はそっちの方が都合が良い。
「定食屋のバイトをしているわ」
「うっ、ごほっ、ごほっ」
天音さんが急に咳き込み始める。水が気管に入ってしまったのかもしれない。大丈夫なのだろうか……
「随分と華のある定食屋なんだなぁ」
東雲はそんな感想を漏らした。
確かに……姉さんに天音さん、自分の姉に対してこういう感情を持つのもどうかとは思うが、二人とも紛れもない美人だ。
そんな二人がバイトしてる定食屋ってどうなのだろう。お客さんとかで溢れ返ってたりしてな。
「あっ、私たちも自己紹介しとくわね。私は碧の姉の律真 玲奈といいます。音葉ちゃんに歌織ちゃん、それと風花ちゃんは初めましてになるかな。宜しくね」
いや、殆どが初めましてじゃねーか。
なのに、この堂々たる自己紹介。同じ兄妹だとは思えないな。
そして、姉さんは続いて天音さんにバトンパスをした。
「天音 雪です。先ほど玲奈さんがいった通り、バイト先で後輩してます。
ちなみに律真くんと、東雲さんとは(一応)同じクラスです」
天音さんはあまり乗り気じゃない様子で淡々とそう答えた。
俺はそんな天音さんに少し同情してしまう。
その流れで続いて東雲の順番が回ってくる。
「名前は東雲 風花です。趣味はカラオケに行くことで、最近はRoeleとかよく歌います」
東雲は話す内容が短くなり過ぎることを拒んでか、最後に自分の趣味をぶっ込んでくる。
「ありがとうございます……」
「えっ?、えーと音葉さん、何か言いました?」
「あっ、いえ、なんでもないです」
そして最後に俺の順番が回ってきた。
よく、考えると俺は一応全員のこと知ってるわけだし、必要なくないか?
と、そう思っていたら姉さんに目線で促された。
「あっ、えーと、律真 碧です。一応そこにいる姉、玲奈の弟やらせて貰ってます。と、とにかく皆さん仲良くしましょう」
最早俺から言えることはそれだけだった。
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