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カオスな展開


 全学年女子によるダンスの競技が終わり午前の部が全て終了した。

 

 そして俺たち学生は束の間の昼休みを迎えていた。


「律真、昼ご飯はどうするんだ?」


 いつも屋上で一緒に食べていた東雲が、ちょっと可愛らしい袋包に入れた弁当を手に声を掛けてくる。


「実はだな。今日は姉さんが弁当を持ってきてくれてるから、そのまま一緒に食べることになると思う……」


 恐らく昼食の誘いをしてくれるつもりだったのかもしれないが、先約が入っていた。

 流石に弁当を作ってきてくれた姉さんを一人で食事させる気にもならないし、こればかりは仕方ない。


「そ、そう……」


 東雲は見るからに落ち込んだ表情をした。

 

 今の彼女には俺以外の他の人を誘えるような状況にはないから、正直、一人にさせるのは心苦しかった。


 待ってろよ、もうすぐ斗真と仲直りさせてやるからな……


「だったら、私も一緒に行っちゃダメかな?」


「ふぇっ!?」


 まさかの提案に俺は驚かされた。

 それって俺と姉さんと東雲の3人で食べるって訳だよな。

 俺はまぁ良いんだけど、東雲は気まずくないのか?


 そこで俺は思い出した。


 ああ、コイツは太陽だったわ……

 最早陽キャラならでは提案と言えるだろう。俺なんかでは到底出てこない考えだ。


「分かった、少し姉さんに聞いてみる」


 俺は友達を連れて行ってもいいかと、直ぐに姉さんにメッセージを送った。

 すると、もともと合流するために連絡を取り合う予定だったからか、すぐに既読がついた。


———

 えっ、友達? その言い方だと斗真君じゃなさそうね。

 もしかして、二人三脚の子とか?

 それなら別に構わないわよ。楽しみにしてるから♪

———


 あれ、シブられるどころか寧ろ少し乗り気だったんだけど……定食屋で鍛えてきたトークスキルには自信ありって感じだな。


 それにしても……なんで相手が東雲だって分かるわけ?盗聴器でも付けられているのか?

 俺にはもう、姉さんに隠し事は無理だ……


 それから俺は東雲を連れて姉さんとの待ち合わせ場所まで向かった。


「碧、こっちこっち」


「姉さん少しテンション高くないか?」


「まぁまぁ、それは置いといて、そっちがお友達さん?

 随分と可愛らしい子ね」


「東雲 風花です。今回は急に変なこと頼んでしまい、すみません」


 東雲はぺこりと頭を下げた。

 あれ、なんかいつもと違うくね? なんていうか喋り方が凄く丁寧というか……


 そして、俺はそれとは別にもう一つ気になることがあった。

 先程から姉さんの近くをウロウロとしている一人の女性がいるのだ。

 どこか困った様子の彼女は俺と東雲もよく見かける……「ちょっと、雪ちゃんこっちこっち!」


「うう、でも玲奈さん流石にそれは……」


「あ、天音さん!?」


 東雲も彼女の存在に気づいたようで素っ頓狂な声を上げる。


 そう、その彼女は天音 雪だった。


 分かるぞ東雲、俺も今目ん玉が飛び出そうなくらいには驚いている。寧ろ驚き過ぎて声が出てこないんだ。


「ごめん碧、せっかくだから私の方でも知り合い呼んじゃった」


 なにが「呼んじゃった」だ。そんな可愛らしく言われても、他の男ならともかく俺には誤魔化しは通用しないからな。絶対に計画的犯行だろ。

 ……ってそれよりも、なんで姉さんが天音のこと知ってんだよ!!


「姉さん、どういうことか説明してくれるよな」


「分かってるって、ほら、とりあえず良さそうな場所取ってるから座ってから話すわ。

 ほら、雪ちゃんもさっさと歩く」


「あ、あの、ちょっと待って下さい!」


 しかし、移動し始める俺たちに対して待ったがかかる。

 へっ!?嘘だろこの声は……


「ちょっ、音ちゃん話が違うって」

 五十嵐さんが慌てて止めようとするも、音葉はそれでも止まらなかった。


「私たちも一緒にお食事させて下さい」


「えっ!?」何言ってんだよ音葉……

 俺は全くこの状況を理解出来ていなかった。


 やばい、マジでヤバくないか?

 

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