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まさかの遭遇 〜side 雪


 今日は面倒な体育祭、暑いし煩いし、色々と好きじゃない。


 私が今回出場する個人競技は、学年代表リレーと女子200メートル走、それに女子1500メートル走の3つだ。

 それ以外には女子は団体競技のダンス、男子は組体操への強制出場が決まっていた。


 午前中の私が参加するのは昼休憩前のダンスのみ。


 他の人の競技とか特に興味なかったし、私は暇つぶし程度ぶらぶらと会場を歩きまわっていた。


 ああ、また面倒ごとに巻き込まれそうね……


「辞めとけって、天音先輩ってそういうの凄く嫌う人だって噂になってるじゃん」


 そんな声が聞こえたかと思うと、2人の男子生徒が私の前に現れた。

 体操服の色からして2人とも一年生であることはすぐに分かる。


「あの、俺1年の宮部(みやべ)っていいます。天音先輩、連絡先とか交換してもらえませんか?」


 こうやって誰かから声を掛けられるのも随分と慣れたものだった。

 そして、答えは最初からもう決まっている。


「ごめんなさい、無理です。私、歳下とか興味ないんで……」


 こういうのはハッキリと可能性がないことを伝えておかないと後々、苦労するのは自分なのだ。だから私はキッパリ断るようにしている。

 

「くそぅ!」


 男子生徒達は逃げるように私の前から姿を消した。


 ふぅ、早く終わらないかな体育祭……

 そんな時またしても声を掛けられる。


「あれっ、もしかしてユキちゃん!?」


 えっ……私はこの声をよく知っていた。 

 だって、私の憧れの人の声だったから。


「れ、レイナさん!?ど、どうしてこんな場所に?」


 嘘でしょ……まさか、このタイミングでレイナさんに会うなんて……


 私は空いた口が塞がらなかった。

 振り返った先に居たレイナさんは有名人なだけあって麦わら帽子にマスクと完全装備状態だった。


 それなのに、美しさが滲み出ているのは本当に不思議だった。


 やっぱり格が違う。


 レイナさんは私の質問に対して、少し気まずそうに答えてくれた。


「実は、前に話してた弟がこの学校の生徒なのよ」


「えっ、弟さんが!?」


 レイナさんは大きく頷いた。

「同い年だとは思ってたけどまさか、ユキちゃんもこの学校の生徒だとはね……」


 しかも、同級生発言……いろいろと衝撃的過ぎて頭の中がパンクしそうになる。


 それから少し落ち着いてくると、それは何処の誰なのか無性に気になってきた。

 だってレイナさんの弟さんだよ、会ってみたいとは思ってたけど、ホントまさかの状態なんだけど。


「ちなみに、何組だとか聞いてます?」


「えーと、確か2組だったはず……」


 いやいや、それ私と同じクラスやないかい!


「……」


「ん、ユキちゃんどうかした?」


「えっ、あっ、実は私も2組なんです」


 ヤバイ、一瞬思考が停止してた。

 私がそう答えるとレイナさんは心底驚いた表情で「凄い偶然ね……」と言っていた。


 本当にそうだと思う。


 でも、そうなると、誰がレイナさんの弟なの?


 うちのクラスで美形と言えば……

 やはり最初に浮かび上がってきたのは阿契 斗真と小藤 明宏の二人だった。

 それから二人ほどでないにしろ、荒巻 亮平もそれなりだとは思ってる。


 でも、やっぱりレイナさんクラスになると荒巻君じゃ少し足りない気がする。


 だったら、阿契か小藤の2択にしぼられる。


 流石に小藤はないよね……中身までしっかりとしてるレイナさんに育ててもらって、ああはならないだろう。


 ってことは……


「あの、斗真君にはいつもお世話になってます!」


 殆ど喋ったこともないのに、口からそんな言葉が飛び出た。


「えっ、はい?……そう、斗真君は凄くいい子だもんね。

 私も彼が小さな時しか、あったことないんだけど優しい子だなって思った覚えがあるわ。それに弟もよくお世話になってるみたいだし」


 あれ……違った?


 そうなると小藤……いやいや、流石にないって! 

 でも、もし小藤が弟さんだった場合かなり気まずい。なんていうか敵対関係にある状態なんだけど。


 ダメだ、もういくら考えても分かりそうになかった。


「あの、レイナさんの名字をお伺いしても良いですか?

 ちなみに私は天に音ってかいて天音(あまね)って言います。下の名前は実名も雪なので、呼び方は今まで通りで大丈夫です」


「別にいいけど……そっか、ユキちゃんは天音 雪ちゃんって言うのね。

 私もレイナの方は変わらないわ。

 それじゃあ、改めて自己紹介させて貰うね。私は律真 玲奈です。宜しくね雪ちゃん」


 リツマ、リツマ……律真?


 ええぇぇぇ、律真ってクラスのあの陰の薄い!?


「その感じだと碧とはあまり関わりがないみたいね」


 玲奈さんのその言葉で私は確信した。律真 碧、彼が私の憧れである玲奈さんの弟なのだと。

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