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女の勘


 今回、音葉が来ると言うことで、俺はいくつかお願いごとをしていた。

 一つ目に素顔を晒さないこと。こんな思春期の真っ只中の男子達にとって音葉の様な美少女を出すのは危険すぎる。中には何をしでかすか分からない奴らだっているからな。

 男はみんなオオカミである。それを覚えていて欲しい。


 二つ目に目立つ行動は避けること。これもまた一つ目の理由が関わってくる。それに彼女はネット上での有名人、正体がバレた暁には学校中がパニックに陥ることだろう。


 そして最後に出来る限り俺との接触は避けること。

 今日は姉さんも観に来るし、音葉といるところを誰かに見られたりしたら、いろいろと面倒なことになりかねない。

 俺としてはいろいろと喋りたいと思う気持ちもあるのだが、兎に角目立つことは避けるべきなのだ。


 最後の内容だけは音葉が不服そうにしていたのだが、五十嵐さんになんとか説得して貰って話はそこで落ち着いた。


 俺はこの内容を音葉と五十嵐さんに伝えた後、二人と分かれて自分の席へと戻って椅子に腰掛ける。


 すると、このタイミングでまたしても携帯が震えた。


 今度は何だ?

 画面を開くと、姉さんからのメッセージが来ていた。


———

 前を見なさい。

———


 内容はそれだけだった。

 なんかこれはこれで怖いな。ホラー映画とかでよくありそうな展開だ。


 俺がゆっくりと顔を上げると、グラウンドの反対側でこちらを向いて軽く手を挙げる誰かの姿が見えた。

 マスクと麦わら帽子を被っていて、判断は付きにくいが恐らくあれは姉さんだろう。


 どんだけ日焼けしたくないんだよ。

 音葉なら分かるけど、姉さんはただの飲食店のアルバイトじゃねぇか。

 

 とは思いつつも姉、玲奈も音葉と同じくして美人なのである。

 下手すると人だかりが出来る可能性も捨てきれない。


 あれ!?、ちょっと待て、俺はまだ姉さんにクラスとか教えてないぞ。

 よく、こんな何人も生徒達がいるなかで見つけ出せたな。


 すると、またしても携帯が震える。


———

 スマホのカメラでアップして探したからよ

———


 いや、だから怖いって。

 この表情も見えない距離で考え読めるのは最早超能力以外の何者でもないからな。

 

「律真どうしたの、すごい汗かいてるけど」


「お、おう。東雲か。……なんていうか超能力は偉大だなと思って」


「はぁっ!?」


 理解出来ないという表情をされてしまったが、残念なことに俺も理解できていない。

 まさしくこれは迷宮入りというやつだ。


「いや、やっぱり何でもない。それより今日は頑張ろうな」


「当たり前じゃん、なんとしても一位だかんね。アンタが途中でこけても、私が力づくでゴールまで持っていくから」


 絶対に辞めて下さい。多分終わった頃には死人が出てるし、そのままゴールするよりも先に体制を立て直して走ったほうが間違いなく早いから。


「まぁ、一位を取るには他のメンバー達にも頑張ってもらわなきゃだけど、俺たちは俺たちで最善を尽くそう」


 俺たちの参加する二人三脚はあくまでもクラス対抗のリレー競技である。そしてそのアンカーを俺たちは任されている。

 そして、その理由としてはバトンを受け渡す練習に参加させなくても済むからだとか……


 そんな訳でその部分は一切練習してない。


 まっ、何とかなるだろう。


「それにしても、トイレ随分と長かったよね」


「……まぁ、お腹痛めてたからな」


 本当の理由を話すと絶対にややこしくなると俺の直感が囁いていた。


「ホントしっかりしてよね。もうすぐ本番なんだから」


 東雲に言われてプログラムを確認すると、次の次が俺たちの出番だったようだ。

 要するに今やってる競技が終わり次第、待機場所に移動しなければならないということ。


 すると、今度は東雲のいるタイミングで携帯が震えた。

 スマホをポケットから出してメッセージを確認するぐらい別に普通のことだとは思ったのだが、一応、東雲もいることだし後で確認することにする。

 

 万が一音葉からのメッセージを見られた場合、いろいろと説明が大変なのだ。


「携帯確認しないの?

 メッセージ来たみたいだけど……」

 

 しかし、俺がそう考えていると東雲も俺の携帯がバイブしたことに気づいたようで、ピシャリと指摘されてしまう。


「あ、今ちょうど確認しようと思ってたとこなんだ。アハハハ……」


「なんか、今日のアンタ怪しくない?」


「えっ、そうかな。普通だと思うけど」


 俺は冷や汗を流しながら、ポケットから携帯を取り出した。


 そしてメッセージを確認する。

 どうやら今度は五十嵐さんからのようでプログラムを写真で送って欲しいとのこと。


 そういや、俺の出る種目は聞かれたから事前に教えてたけど、プログラムの方は完全に忘れてたな。

 姉さんにはコピーを取られた記憶があるけど……


「誰からなの?、もしかして女?」


 コイツもまた、勘が鋭かった。

 女性という生き物は皆こうなのだろうか……

 なんか、二股をしていてバレそうになった男みたいな感じになってる気がする。まぁ、悲しいことに彼女なんて出来たことないし、二股なんて夢のまた夢……例え出来たとしても決して、したいとは思わないけどね。


 それにしても東雲のやつ、やけに食いついてくるよな。

 そんなに気になるものなのか?斗真のことならまだしても、たかが俺のことだぞ。


「違うって、普通に姉さんからだよ。プログラム送って欲しいって言われてさ」


「律真、お姉さんいたの!?

 えっ、ちなみにどの人?、めっちゃ気になるんだけど」


「えーと、あれ?

 確かさっきまではあの辺にいたんだけどな。悪い、普通に見失っちゃったからまた後で教えるわ」


 先ほど姉さんの居た正面を探してみたのだが、既にそこに姿はなかった。また、唐突に現れたりしないだろうか……


 いろいろと大丈夫かなぁ、この体育祭。

 なんか、もう疲れてきたんだけど。

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