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見た目じゃなくて中身 〜 side 音葉


 今、私は猛烈にウキウキしていた。


 何故なら、もうすぐ碧の新たな一面が見られるからだ。


 最初はかなり無茶な頼みをしてしまったものだと思った。でも、少し前に話した通り、今回のこの曲に関しては碧がいたからこそ出来た楽曲で彼をなしには考えられない。


 私が新しい一歩を踏み出す為の始まりの曲、私はが一から考えた構成で造り上げた曲、碧のことを考えながら少しずつ刻んでいった曲……


 えっ、あれ!?、これじゃあまるで私、碧に —— 恋してるみたい。


 違う、そんなことない。彼は友達として大切なだけだ。そもそも今まで誰かを好きになったことなんてなかったじゃない。だから好きという感情すら分からないはず。


 だから、少し混乱してるだけ。碧が私を救ってくれたから、感謝してるだけなのだ。


 今、彼のことを見たい、会いたいとも思ってるのも、彼が友達だから。


 要するに、私が抱いているのは普段から友達に対して持って当然の感情だ。


 お母さんも言ってたけど、仮にもし、もし私が誰かのことを好きなったとしても、今は状況が悪いはずだ。

 だから実際に恋愛をするのはもう少し先のつもり……



 今回、碧を担当するのは町丘さんだったはず。

 お母さんとのあの一件以来、結構話す機会が増えた気がする。そういえば、碧に関しての話も何度かしてしまったことがある。


 それにしても町丘さんか……


 ホントに悪い人じゃないんだけど、かなりクセ強いからなぁ。

 碧を困らせてる姿が容易に想像出来た。


 二人でなんの話してるんだろ?


 そう考えた途端、チクリと僅かに胸が痛んだ。えっ、なに!?

 その痛みは気のせいだったのか、すぐに消えていった。ただ、少しモヤモヤとした何かが頭の中に残った。


「音ちゃん、何か悩み事ですか?」


 隣にいた、マネージャーの歌織(かおり)さんから声がかかった。

 ちなみに、音ちゃんとは私のことで、私は彼女のことを歌織さんと呼んでいる。まだ、私のマネージャーになったばかりなのにも関わらず、私と歌織さんは歳も割と近かったこともあり、既に互いに下の名前で呼びあっている。


「んー、少しだけ悩んでますかね……」


 内容が内容だけにハッキリと答えるのは、何処か恥ずかしかった。


「どうせ碧くんのことですよね」


「なっ、なんで分かったんですか!?」


 ドンピシャで当てられてしまった私は、少し動揺してしまう。


「だって、音ちゃんが私に話してくる内容って、鈴菜さんのことか、碧くんっていう人のことの殆ど二択でしたから。名前も嫌でも覚えちゃいましたし」


 言われてみれば……そんな気もするかも。

 

「それにこれは完全に私の予想なんですけど、音ちゃん、既に答えが出てるのに悩んでそう……」


「既に答えが出てる?」


「まっ、あまり深く考え過ぎない方が良いですよ。そういうのは意外にフィーリングが大切ですから。

 私が言ったことは、別に今は分からなくても焦らなくていいですよ。その内……近いうちには音ちゃんも分かることだと思いますし……

 ただ、少し前に気になったことがありまして、足踏みし続けることが得策とは余り思わないですね」


 私は歌織さんの言ってることの意味を考えた。しかし、それぞれの言ってる意味は分かるのだが、どうにも自分と繋がらない。


 それにしても、歌織さん、かなり幼い姿をして大人っぽいこと言うから、ギャップ差が凄いわね。

 ……実際に、私よりも年上の大人なんだけどね。


「音ちゃん、今かなり失礼なこと考えたでしょ?」


「いえいえ、そんなことありませんよ」


 私は笑って誤魔化した。


 それから暫く待っていると、ようやく碧の準備が終わったようだった。

 私は少しだけ、小走りになりながら彼がいるはずの部屋へと向かう。


 すると、碧のいる部屋の扉の近くに一人の男性が立って待っていた。


 うっわ、凄くイケメン……

 こんな美形な人、初めて見たかも。今までに何度か有名人と顔を合わせたことはあったが、それでもずば抜けた存在感だと思った。


 でも、碧だって負けてない。人間、見た目じゃなくて中身なんだから……


 この時、何故か碧と比較してしまっていた自分がいたのだが、余りにも自然にそう思ってしまった為、なにも違和感は感じなかった。


 そう思ってもやっぱり、美形は美形……自然とそちらに目が吸い寄せられてしまうのは、避けられなかった。


 もちろん顔だけが全てじゃないけど、イケメンを見て喜ぶ女子達の気持ちがほんの少しだけわかった。


 でも、碧の方が……ってさっきから私、何で碧と比較してんのよ。


 碧は碧で、彼は彼!

 そんなの気にしなければいい。


 しかし、心の何処かでは碧が負けたままでいるような気がして嫌だった。

 あの人がイケメンな分だけ、私が知ってる碧のいいところをぶつけて掻き消したい。そんな衝動に駆られる。


 そんな時、美形な彼と目が合ってしまった。


 心臓がドキリと跳ね上がる。


「よっ、音葉。随分待たせちゃったみたいだな」


「ふぇっ!?」


 えっ、どういうこと!?

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