何やってんのよ私 〜side 風花
私の名前は東雲 風花。現在高校2年のJKだ。
好きな言葉は、【ギャルも歩けばイケメンにぶつかる】
えーと……確か意味は、人はどのような見た目であっても、中身がしっかりとしていれば幸運が舞い降りるのだと、中学の時の先輩ギャルから聞いた気がする。
要するに、見た目じゃない、中身だ!って話だ。
そんな私は現在何をしているかというと、ズバリ人間観察!
きっかけは最近放課後になると、体育祭の練習をしていたのだけれど、今日はペアの彼に用事があるとのことで中止になった。
「ごめん東雲。
俺、今日友達……じゃなくて少し用事があるから練習の方休ませて貰うよ」
彼はそう言って校門へと向かって行った。
えっ、冗談じゃない。
彼に用事がある? いやいや、そんなわけないだろう!
普段から教室で、人との絡みが全くと言っても過言ではないほど少ない彼に、斗真以外の友達がいるとは思えない。
かなり失礼なことを言ってる自覚はあるが、これは事実なのだ。
小藤とのあの件が露呈してしまったあの日から、絶望感に満ちたあの最悪な日から、何故だか私の視界に彼が入ってくることが多くなっていた。それも今までは眼中にもなかったくせにだ。
そのことは少し不思議だったのだが、まぁ私も多くの友達を失って暇になっている身だから、それが原因なのだと思う。
だからこそ、彼に友達がいないことは私が知っている。
なら、中学の時の友達でも?
んー、なんだかそれもなさそうな気がする。
何処か楽しげな表情の彼を見ていると、この後何かしらの嬉しいことがあるのだろう。
それならそれで良いのだろうけど、私はどうしてもそれが気になってしまった。
今の競技の完成度で、やる気のあった彼が練習を後回しにする……
やっぱり気になる。
そんな訳で尾行を開始して20分、彼は駅のホームの中へと入っていった。
ここまでにするか?
流石にこれ以上隠れてついていくのは、ヤバいやつな気がする。
でも、アタシ暇だし!
ちょっと気分転換に電車乗るだけだし……そうだ、今日はそんな気分なんだよ!
これは別に尾行じゃない。パパラッチが公共の場にいる有名人達を撮影しても盗撮にならないように、私もただ単に電車に乗っているだけのJKに過ぎない。
そこに偶然、彼がいるだけのこと。
そんな言い訳を盾に私は彼と同じ電車に乗り込んだ。
流石に同じ車両ではバレてしまう可能性がある為、一つ隣の車両を選ぶ。
それから彼は、僅か2駅で降りて5分ほど歩いたところで人気のなさそうな路地裏へと入っていった。
—— 匂う、これは絶対何かある ——
私の期待は一気に膨らんだ。
そして、更に追跡を続けた結果。彼はいろんなカフェを巡ってきた私でも見たことがない、お洒落なカフェの中へと姿を消したのだった。
いや、もう私は空いた口が塞がらなかったね。
なんでアイツがこんなお洒落な店知ってるのよ。
名前を見る限りチェーン店でもないし、goldmapにも載ってないわ。
そんなとこを知ってるなんて有り得ない、絶対に何かおかしい。
ていうか、私もちょ〜入ってみたいんだけど。
「あの、ここで何をされてるんですか?」
「へっ!?、全然何も!」
完全にやってしまった……
興奮し過ぎたあまりに背後まで気が回っていなかったのだ。
私は恐る恐る後ろを振り返った。
するとそこにいたのは可愛らしい顔立ちの女の子、身長からしても中学生ぐらいだろうか。
「何もしてないっていう反応じゃなさそうですけど……それと、私今年で22歳になる社会人ですからね」
幼く見積もっていたことが、顔に出てしまっていたのかピシャリと修正されてしまった。
「ゴメン、なさい」
私は尾行していた罪悪感と彼女が歳上だったこともあって、ほぼ反射的に頭を下げていた。
「ふぅ、何に対して謝ってるのか、分かりませんが。
気になるのなら中に入ってみてはいかがでしょうか?」
「い、いえ、ホントに大丈夫なんです!」
私は彼女に対して背中を晒すと、一目散に全速力でその場から逃げるのだった。




