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意識の矛先 〜side音葉


 1回転するジェットコースターを乗った後、私は気づいてしまった。


 碧、絶叫系あまり好きじゃなかったんだ。


 最初に乗ったアトラクションは私の思い違いでない限り、彼も楽しんでいた。だから、いけるものばかりだと思っていたのだが……

 隣を歩く彼の表情からはそんな雰囲気は感じられない。


 多分、軽い絶叫系ならいけるけど、ハードなものになってくると厳しいタイプなのだろう。

 私一人だけが楽しんでしまった状況に少し反省だ。

 でも、新しい碧の一面を知れたことは素直に嬉しい。


 きっとあの二人は知らないであろう内容だ。

 そんな小さな事に優越感を抱いてしまう私は、なんて器の小さな人間なのだろうか、と少し前までなら思っていた。

 でも、今はちょっとだけ違う。もちろん罪悪感が完全になくなった訳じゃない。それでも歌織さんが教えてくれたように、自分の中にあるこの気持ちの全てを否定しちゃいけないのだ。


 だって、そう感じるほどに私は碧のことが好きなのだから。


 うぅっ、恥ずかしい。

 別にこの想いを伝えた訳でもないのに、自覚してるだけで、こんなにもドキドキするなんて……

 プリンジュースの時なんてホントに心臓が止まるかと思ったんだから。か、関節キスしちゃったわけだし、焦る碧も可愛かったし……


「音葉、次は何処に行きたい?」

「えっ、あっ、そうね……」


 彼は私を優先して優しい声色で聞いてくれた。多分もう一度このジェットコースターに乗りたいって言った際には、苦手なのを隠してもう一度乗ってくれることだろう。

 まぁ、終わった後とか顔が引き攣っていたから私にはまる分かりだったんだけどね。


 そんな彼の不器用な優しさを感じてみたいと思いながらも、可哀想なので浮遊感を感じることで有名でかなりハードなジェットコースター類は候補から外しておく。

 改めて場内マップを見た私は、とある施設を指差した。


「今度はコレに行ってみたいな」

「……お化け屋敷か、いいな楽しそうじゃん」


 言葉に気持ちがこもってなかったし、かなり不安そうな表情になったから多分、得意ではないのだと思う。

 でも、申し訳ないがこれだけは絶対に外せない。ある意味今日の目的とも呼べる場所なのだから。


「だったら決まりね!」


 私は碧の気持ちが変わる前にお化け屋敷に向けて歩き出した。

 碧も数歩遅れて私の隣に来てくれる。

 フフッ、柚月、計画は順調だよ!!


「随分と嬉しそうだな。好きなのかお化け屋敷?」

「うーん、どうだろ? あんまり行ったこととかないから分からないけど、怖い系はそこまで得意じゃないかも」


 と言いつつも本心は、お化け屋敷なんて身長制限とかもないし、基本的に遊園地とかにあって小さな子供でも楽しめるし余裕なんじゃないかなって思ってる。

 けど、今回はそんなのは関係ない。碧が怖がってるなら私がカッコいいところを見せるつもりだし、平気そうなら私が苦手なフリをする。


 我ながらかなりあざとい作戦だと感じる。多分、私の他に女性が居たら間違いなく嫌われると思う。

 でも私はそれをやり遂げるつもりだ。柚月曰く、お化けを怖がらないカッコいい女性は男性から頼られるらしい。歌織さん曰く、可愛らしくビビってる女性を見ると、男性は護りたい衝動に駆られるらしい。


 つまり、どっちにしろ私と碧の距離は縮まるはずなのだ。


 ちょっと強引だけど仕方がない。だって私は隣を歩いてるだけでこんなにも緊張させられてるのに、碧に至っては平然と歩いている。

 まるで、私のことなんて女性として見てないですよって感じだ。これはちょっと、いや、かなり腹立たしい。


 流石にプリンジュースの時みたいな、あからさまな状況になると意識をしてくれてるみたいだったけど……

 あんなチャンスは何度も来るわけがないし、次は恥ずかしさのあまり私が耐えられない。よくもまぁ、あんな事ができたよね。

 あの時の私の行動力には我ながらあっぱれだ。


 碧、もっと私のこと意識してよね!!

 

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