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ジャン負け


「おっ、碧、元気になったんだって?」


「碧君、大丈夫だった?」


 姉さんから俺の状態を聞いたのか、東雲と天音さんの二人が俺たちの居るビーチ傘の下へと帰ってきてくれた。


「あ、うん、二人とも心配かけてごめん」


 俺が二人に頭を下げると、東雲は俺から視線を逸らして「別に心配なんかしてねぇーし……」と、さりげなくツン要素を見せてくれる。

 まぁ、こうやって駆けつけてくれている時点で照れ隠しだということぐらいは一目瞭然だった。


 なるほどな、これがツンデレというやつか……

 いや、まだデレてないから少し違うのか?


 しかし、そんな東雲の言葉をそのままの意味で捉えた人物がいた。


「えっ、そうなの?、私は東雲さんと違ってちゃんと碧くんのこと心配してたからね」


 その一言で東雲の表情が一瞬で険しくなった。


「ああ、天音さんありがとう……」


 そんなことに気づかないふりをしているのか、あるいは本当に気づいていないのか、分からなかったが天音さんは涼しい顔をしている。


 俺の願望では前者であって欲しいところだ。

 天音さんがそういった揶揄いをかけるようになったのであれば、それは二人の仲がそれなりに縮まったということだと思う。


「そ、そんなことより皆んなでなんかしよーぜ」


 東雲が唐突にそんなことを言い始めた。


「何かってなにをだ?」


 俺がそう聞き返すと彼女は顎に手を当てて悩み出す。


「んー、それはあんまり考えてなかった。何かいい案とかある?」


「あっ、それなら私が!」


 そんな時に唐突に口を出したのは先程まではここに居なかった筈の姉さんだった。


「玲奈さん、何処行ってたんですか?

 急に居なくなっちゃったから結構心配してたんですからね」


「ごめんごめん。ちょっと急にトイレに行きたくなっちゃって……」


「それで玲奈さん、何かいい案でもあるんですか?」


「それはもちろん!雪ちゃん、ここは海よ。そして広いビーチがあるわ。さらに砂が柔らかくて石の数も少ない、と言うことは?」


「ビーチバレー?」


 音葉がボソリと呟いた。


「音葉ちゃん、大正解!!」


 俺はビーチフラッグの方だと思っていたのだが、どうやら姉さんが考えていたのはバレーの方だったらしい。

 

「それで、3人ともビーチバレーでもいいかしら?

 ちなみにボールもちゃんと持っていきてるから準備万端よ!」


 ボール持ってきたんだな……

 って、そんなの家にあったっけ?


「はい、良いと思います!」


「私も大丈夫です、なんだか凄く楽しそう……」


「よし!、テンション上がってキタ!!」


 姉さんの質問に対して、天音さん、音葉、東雲の順に返事をする。

 最後に姉さんから視線で貴方は?、と聞かれてしまったので大丈夫だ、と頷いておいた。


「それじゃ、早速チーム分けね。

 人数的に3対2になっちゃうけど、碧のいるグループが2人ってことでいいかしら?」


「えっ、なんでだ?」


 俺が率直に疑問を告げると「碧、貴方、男でしょう?」と、かなりまともな意見を返されてしまった。

 個人的には超人的な身体能力を持つ天音さんのいるグループの方が良いとは思うけど……ここは仕方ない。


「碧と、2人……」


 音葉が小さな声でそんな独り言を言っていた。

 それがかなり深刻そうな表情だった為、少しばかり心に傷がつく。


 俺との2人がそんなに嫌なんだろうか……

 まぁ、確かに運動出来そうなイメージとか全くないだろうし、寧ろやらかしたことの方が多いけどさ。


「それじゃあ、手っ取り早くじゃんけんで決めましょう。負けた人が碧とペアになるってことで」


 姉さんは右手を前に差し出した。


 負けって……

 人数が少なくなるからだよな?


 他の3人はそんな姉さんに合わせるように移動して円を形成すると、それぞれに握り拳を前に出した。


「最初はグー、ジャンケン ——」


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