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予期せぬ異常事態に親友は静かに怒る


 要求があると言った俺の言葉を、息を呑んで待つ東雲 風花。


 こちらに証拠がある以上どんな内容であっても彼女はそれに従うしかない。


「そうだな、俺からの要求は大きく分けて二つだ」


「は!?、せめて一つにしろよな」


「お前、自分の置かれている状況が分かっていないのか?」


「わ、分かったわよ。で、何?」


 俺が少し冷えた声でそう言うと渋々引き下がる彼女。

 しかし、いちいち上から目線で少しイラつく。


「一つ目は、小藤との縁を切ることだ。連絡先を全て消去し今後、あのような事は二度とするな」

 

「……」


 その要求は予想の範囲内だったのか、彼女はそのまま黙り込む。


 その様子を見て俺は了承したと判断して二つ目の要求に移る。


「二つ目に斗真との縁も切って貰う」


「それはいやっ!!」


 すると、東雲は激しく首を横に振った。


「いやよ、それだけは絶対に無理。他の要求なら何でも聞くから」


 泣きそうな顔をしながら必死に俺にそう言い寄ってくる。

 どうやら斗真を想う気持ちは本当のようだった。

 だったらどうして?


「それなら、どうして斗真を裏切るようなことをしたんだ?」


「裏切ってるつもりなんかないし、私はただ小藤とは遊びなだけだし」


 なんて自分勝手な女だ。やはり、こんなやつを斗真の元に置いておきたくない。


「お前がそう思っていても斗真からすると、十分な裏切りだ。残念だがアイツの為にも俺はそれを見過ごすことだけはしたくないし出来ない」


「なんでよっ!アンタ斗真とそんなに仲良くないじゃん。それに、私が急に斗真から離れたら皆んなに怪しまれるし、そんなのバラしてるのと代わりないって」


 コイツ俺らがいつも一緒に登校してること知らないのか?

 どんだけ視界狭いんだよ、いや、もしかして俺の影が薄すぎるのが原因なのか……


「別に今すぐに縁を切れって言ってる訳じゃない。お前には徐々に斗真の記憶から消えていってもらうつもりだ。

 そうだな、例としては最初にいつも斗真にしているボディータッチから辞めてもらうことにする」


 俺がそう言うと彼女は更にヒートアップしていく。


「アンタ何様のつもり!?そもそも何の権限があってそんなこと命令してんだよ」


「何様?権限?そんなのどうでもいいだろ、俺はただ東雲にとって知られたくない真実を知ってるだけだ。それ以上でも以下でもない。 

 それに文句を言いたいならいくら言ってもらっても構わないけどさ、最終的にはどう転んでも俺の言うことに従うしかないだろ」


「くっ……」


 彼女は言い返すことが出来ずに、強く唇を噛み締めた。


「まぁ、急に言われても心の整理が出来ないと思うからまた明日、答えを伺うよ。昼休みに今日と同じこの場所でね」


「ちょっ、ちょっと待てよ」


 彼女のそんな言葉を最後に、俺は東雲に背を向けて校内へと戻るのだった。


 さて、どうでることやら……


 内容が内容なだけに、脅されたと言いふらすことはしないだろう。どう考えても困るのは向こう側だ。


 だから彼女はこの提案を受けざるを得ないということ。


 全て上手くいく筈……

 この時の俺は、まだかなり楽観的だった。

 しかし次の日、俺が彼女に時間を与えたことで、この問題は想像を絶する方へと進み出してしまうのだった。




 翌日の朝も、決まり事のように斗真と鉢合わせてからそのまま二人で登校した。

 しかし、教室にたどり着いても今日は誰も斗真の元へとは集まって来なかった。


 これは明らかに異常事態だ。


 重たい空気が教室の中を満たし、笑っている人など小藤とその取り巻きを除くと誰一人居なかった。


 そして、その原因は一目で分かってしまう。


 初めに見た時俺は言葉を失った。


「嘘だろ……」


 一人の女性が教室の中心でへたり込んでいる。

 そんな彼女は、生気のない虚な目でボンヤリと正面をジッと見つめている。

 まるで魂だけを取り除かれた、そんな様子だ。


 その女子生徒の側で倒れている机には、『死ね』という心ない言葉が書かれており。誰がどう見てもイジメがあったと言い切れる状態だった。

 そして驚いたことにその人物は昨日、俺と二人で屋上で話し合った女子生徒、東雲 風花だった。

 

 俺の他に誰かが知っていたのか?

 そんな疑問を抱いていると、ふとした拍子に小藤と目が合った。

 

 あの野郎が俺のことを認識しただと……ありえん。


 ただ、そのことから一つの仮説が浮かび上がった。


「斗真……」


 すると、教室に入ってきた俺たちに気がついた、一人の長い黒髪を持つ女性が小さく斗真の名前を呼んだ。


 彼女の名前は米谷(まいや) 綾乃(あやの)中学の時から斗真と仲良くしており、斗真自身も彼女に対しては、かなり心を開いているような存在だ。


 そして今や、斗真を取り巻く中心人物の一人だった。


 そんな彼女が斗真の存在を告げると、クラスに緊張が走る。


「ねぇ、みんなコレはどういう事かな?」


 斗真は自分の友達である東雲さんの目も当てられない姿を見て憤慨した。


 いや、正確には少し違うな。

 喋り方や表情は普通を装っているが、俺も聞いたことのないぐらいの冷たい声で問いかけている。


 優しい人がキレると怖いという噂は間違いじゃなかったな……


 斗真のただならぬ雰囲気に、クラスの殆どの人が萎縮してしまっていた。

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