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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編8-お泊まり女子会編-

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198/202

第3話『文香と一紗と杏奈でお風呂-後編-』

「よし、これで顔もOK」


 体と顔を洗い終えたので、私はバスチェアから立ち上がった。

 最後に洗う一紗ちゃんは、私と入れ替わる形でバスチェアに座った。


「一紗ちゃん。髪と背中、どっちから先に洗う?」

「髪からお願いするわ」

「髪からですね。あたしの担当ですね」


 そう言い、杏奈ちゃんは一紗ちゃんのすぐ後ろで膝立ちをする。


「一紗先輩。髪を濡らすので目を瞑ってください」

「はーい」


 一紗ちゃんは楽しそうな様子で目を瞑る。これから、杏奈ちゃんに髪を洗ってもらえるからかな。

 杏奈ちゃんはシャワーを使って一紗ちゃんの髪を濡らしていく。


「一紗先輩の髪は長いですけど、毛先までサラサラで綺麗ですよね」

「綺麗だよね」

「ふふっ、ありがとう」

「こんなに長いとケアとか大変じゃないですか?」

「時間はかかるけど、慣れているから特に大変だとは思わないわ」

「そうなんですね。この長い髪を綺麗に保てるのは尊敬します」

「ありがとう。凄く嬉しいわぁ」


 その言葉が本心であると示すかのように、一紗ちゃんはとっても嬉しそうな笑顔に。

 それからも、杏奈ちゃんはシャワーで一紗ちゃんの髪を濡らしていった。


「これで大丈夫ですね」

「ありがとう。バスラックにある水色のボトルがシャンプーよ。あと、その横にあるクリーム色のボトルがコンディショナー。髪を洗ったら、コンディショナーもお願いします」

「分かりました。では、まずはシャンプーで洗っていきますね」

「お願いします」


 杏奈ちゃんは水色のボトルからシャンプーを出し、一紗ちゃんの髪を洗い始める。

 シャンプーの匂い……甘くていいな。ただ、普段、一紗ちゃんの髪から香ってくる匂いとはちょっと違う。きっと、普段香ってくる匂いはコンディショナーの匂いなのだろう。


「あぁ……」


 洗い始めてから少しして、一紗ちゃんは艶っぽい雰囲気の声を漏らす。


「ど、どうしました? 一紗先輩」

「髪を洗ってもらうのが気持ち良くて、つい声が出てしまったわ」

「それなら良かったです」

「あと……髪を洗うことでも、杏奈さんに気持ち良くしてもらってドキドキしてきた」

「そうですか。一紗先輩らしいですね」

「そうだね、杏奈ちゃん」


 ふふっ、と杏奈ちゃんと私は声に出して笑う。


「気持ちいいと言っていましたし、今のような手つきで洗っていけばいいですか?」

「ええ、今のような感じでお願いするわ」

「はいっ」


 しっかりと返事をして、杏奈ちゃんは一紗ちゃんの髪を洗っていく。

 一紗ちゃん……ドキドキしてくると言うだけあって、恍惚とした笑顔になっている。髪を洗ってもらってこういう雰囲気になる人は見たことないな。


「あぁ……気持ちいいわぁ。杏奈さん上手ねぇ……」

「ありがとうございます。さっき、文香先輩の背中を流したときと同じで、小さい頃に家族に髪を洗ったからでしょうね」


 髪の洗い方を褒めてもらえたからか、杏奈ちゃんは嬉しそうに答えた。髪の方も気持ち良く洗えるコツを覚えていたんだね。

 杏奈ちゃんはご機嫌な様子で一紗ちゃんの髪を洗っていった。


「……これで洗えましたね。一紗先輩の髪はとても長いので凄く洗い甲斐があります。あたしの髪は短めですし」

「杏奈さんと比べると髪の量がかなり多いものね」

「お疲れ様、杏奈ちゃん」

「ありがとうございます。では、シャワーで泡を落としていきますね」

「ええ。コンディショナーを付けるから、洗ったらタオル掛けに掛かっている水色のタオルで軽く拭いてもらえるかしら」

「分かりました。では、目を瞑ってください」

「はーい」


 一紗ちゃんが目を瞑ってすぐ、杏奈ちゃんは一紗ちゃんの髪に付いているシャンプーの泡をシャワーで落としていった。髪がとても長いので、落ちてゆく泡の量はかなり多い。

 泡を洗い流し終わったとき、私はタオル掛けに掛かっている水色のタオルを杏奈ちゃんに渡した。

 さっき一紗ちゃんが言っていたように、杏奈ちゃんは一紗ちゃんの髪を軽く拭いた。


「このくらい拭けばいいですかね」

「OKよ。じゃあ、コンディショナーを付けてもらおうかしら」

「はい。クリーム色のボトルですよね」

「そうよ。お願いするわ」

「分かりました」


 杏奈ちゃんはバスラックにあるクリーム色のボトルからコンディショナーを出して、一紗ちゃんの髪に付け始める。

 シャンプーとはまた違った甘い匂いが香ってくる。ただ、この匂いは普段、一紗ちゃんの髪から香ってくる馴染みのある匂いだ。


「あぁ……一紗ちゃんの髪から香ってくる匂いだ」

「ですね。あたしも思いました」

「ふふっ。キューティクルを保てるのはもちろん、この甘い匂いも好きでこのコンディショナーを使っているの」

「そうなんだね」

「なるほどです。一紗先輩の髪が素敵な理由の一つはこのコンディショナーなんですね」

「そうね」


 その後も、杏奈ちゃんは一紗ちゃんの髪にコンディショナーを付けていった。


「これでコンディショナーを付け終わりました」

「ありがとう。じゃあ、シャワーで洗い流してくれるかしら」

「分かりました。ただ、どのくらい流せばいいのでしょう?」

「シャンプーの泡を洗い流すのとは違って分かりにくいわよね。その都度触っていくから、OKかもっと流してほしいか言うわ」

「了解です。では、洗い流していきますね。目を瞑ってください」

「はーい」


 杏奈ちゃんは一紗ちゃんの髪に付いているコンディショナーを洗い流していく。

 何度か、杏奈ちゃんが「どうでしょう?」と訊き、その度に一紗ちゃんが髪を触って「まだ洗い流していいわ」と言う。そして、


「どうでしょう?」

「……うん。これでOKよ」


 数回訊いたときに一紗ちゃんがOKを出したことで、コンディショナーを洗い流すのが終わった。

 杏奈ちゃんはタオルで一紗ちゃんの髪を拭いていった。そのことで、一紗ちゃんの黒いロングヘアがとても艶やかな髪になった。


「はい、これで終わりですね」

「とっても気持ち良かったわ、杏奈さん。ありがとう」

「いえいえ。とてもやり甲斐がありました」

「ふふっ、ありがとう」


 一紗ちゃんはお礼を言うと、洗った髪をまとめてヘアクリップで留めた。慣れた手つきで長い髪をまとめていく姿がとても美しくて。思わず「おおっ」と声が漏れた。杏奈ちゃんも同じ気持ちなのか「凄い……」と呟いていた。

 普段は見たことのない髪型の一紗ちゃんは綺麗で、可愛らしさも感じられた。


「これでOK」

「髪をまとめた一紗ちゃん可愛い」

「可愛いですね。この髪型を見るのはゴールデンウィークのお泊まり以来なので、あのときのことを思い出します」

「ありがとう。杏奈さん、もう湯船に入っていいわよ」

「分かりました。では、お先にいただきますね」


 杏奈ちゃんは手に付いたコンディショナーを落として、湯船に浸かった。


「あぁ、気持ちいいですっ」


 そう言い、杏奈ちゃんは柔らかい笑顔になる。気持ち良さそうだなぁ。


「あと、湯船がとても広いですね。あたしが小柄なのもありますけど、脚を伸ばしても余裕がありますし」


 確かに、杏奈ちゃんが脚を伸ばしてもまだまだ余裕がある。杏奈ちゃんが入ったことで、改めて湯船が広く見える。


「ふふっ、気に入ってもらえて良かったわ」

「私も入るのが楽しみだよ。……じゃあ、次は私が背中を洗う番だね」

「そうね。タオル掛けに掛かっている水色のボディータオルを取ってくれる?」

「分かった」


 タオル掛けから水色のボディータオルを取る。このボディータオル……柔らかい手触りだ。私の使うボディータオルやダイちゃんの使うボディータオルよりも柔らかい。一紗ちゃんの肌が綺麗な理由の一つはこのボディータオルを使っているからかも。

 ボディータオルを一紗ちゃんに手渡し、その流れで私は一紗ちゃんのすぐ後ろに膝立ちをする。

 杏奈ちゃんの後ろ姿……凄く綺麗だ。髪をまとめたことで露わになった白い背中はもちろん、普段は見えないうなじも魅力的で。あと、胸がかなり大きいからなのか、背中からなのにちょっと見えていて。巨乳って凄い。

 一紗ちゃんはボディータオルを濡らして、ピーチの香りがするボディーソープを泡立てていった。


「はい、文香さん。背中をお願いします」

「うん、分かった」


 一紗ちゃんからボディータオルを受け取り、私は一紗ちゃんの背中を洗い始める。ダイちゃんの使うボディータオルよりも柔らかいけど、とりあえずはダイちゃんの背中を洗うときよりも弱い力で洗ってみようかな。


「一紗ちゃん、気持ちいい?」

「ええ、気持ちいいわ。ただ、もうちょっと強くてもいいわ」

「もうちょっと強くだね、分かった」


 ダイちゃんの背中を洗っているときと同じ力加減にする。


「このくらいでどうかな?」

「もっと気持ち良くなったわ! この力加減でお願いします」

「うん、分かった」


 ベストな力加減にできて何よりだ。


「あぁ……凄く気持ちいいわぁ」


 一紗ちゃんは甘い声でそう言う。鏡には一紗ちゃんのまったりとした笑顔が映っている。その姿を見ると胸が温かくなる。


「文香さん上手ね。これも大輝君の背中を洗うことが多いからかしら」

「そうだと思う。ちなみに、ボディータオルは違うけど、洗う力加減はダイちゃんの背中を洗うときと同じくらいだよ」

「あらぁ、そうなのねぇ。それを聞いたらもっと気持ち良くなったわぁ」

「一紗ちゃんらしい」

「ですねぇ」


 ふふっ、と3人で声に出して笑い合う。

 それからも一紗ちゃんの背中を洗っていく。

 気持ちいいからか、一紗ちゃんはずっと笑顔で。何度も「気持ちいい」と言ってくれるのもあって、気分良く一紗ちゃんの背中を洗うことができた。


「一紗ちゃん。背中を洗い終わったよ」

「ありがとう、文香さん。凄く気持ち良かったわ」

「いえいえ。じゃあ、私もお先に湯船に入らせてもらうね」

「ええ」


 一紗ちゃんにボディータオルを渡し、手に付いたボディーソープの泡を洗い流した後、杏奈ちゃんが入っている湯船に入る。その際、杏奈ちゃんは体育座りの体勢に。

 浴槽の壁に背中を付けて、杏奈ちゃんと向かい合い、体育座りの体勢で湯船に浸かる。肩のあたりまでお湯に浸かっているので温かくて気持ちいい。また、お互いに体育座りだから、杏奈ちゃんには触れていない。


「あぁ、温かくて気持ちいい」

「気持ちいいですよねぇ」

「真夏の時期でもお風呂は気持ちいいよね」

「ですねぇ」

「あと、お互いに体育座りだからかもしれないけど、これで体が触れてないって凄いね」

「ええ。凄く広い湯船ですよね」

「広いよね。……試しにお互いに脚を伸ばしてみる?」

「やってみましょうか」


 私と杏奈ちゃんは脚を伸ばしてみる。

 すると、足元に何かが当たった感覚が。きっと杏奈ちゃんの足だろう。


「さすがに脚を伸ばすと当たっちゃうね」

「ですね。でも、窮屈さは全く感じないです」

「そうだね。それに脚を伸ばすと楽だし」

「ええ。……本当にとても広くて気持ちのいい湯船ですね~」

「そうだね~」

「ふふっ、2人に湯船を気に入ってもらえて嬉しいわ。2人を見ていたら早く入りたくなったわっ」


 弾んだ声で言うと、一紗ちゃんの体を洗う速度が速くなった。

 それからは杏奈ちゃんと一紗ちゃんと雑談しながら、一紗ちゃんが体や顔を洗い終わるのを待つ。

 それにしても、湯船が広いからとてもゆったりできる。気持ちがいい。


「さあ、顔も洗い終わったわ! 私も入るわ!」


 一紗ちゃんは意気揚々とした様子でバスチェアから立ち上がる。


「じゃあ、私達は体育座りにしようか」

「そうですね」


 私と杏奈ちゃんは体育座りの体勢になる。そのことで私と杏奈ちゃんの間にスペースができた。

 一紗ちゃんは湯船に入り、洗い場の方を向いて私と杏奈ちゃんの間でゆっくりと浸かる。そのことで足元に一紗ちゃんの体が触れるけど、特に狭さは感じない。


「あぁ、温かくて気持ちいいわぁ。文香さんと杏奈さんが一緒だからいつも以上に気持ちいいわぁ」


 一紗ちゃんはとても柔らかい笑顔でそう言ってくれた。


「そう言ってくれて嬉しいよ」

「そうですね」

「ふふっ。あと、3人で入浴しても特に狭くは感じないわね」

「そうだね、一紗ちゃん。杏奈ちゃんはどう?」

「あたしも特に狭くは感じないですね。3人でもゆったりできます」

「ふふっ、良かったわ。うちのお風呂で文香さんと杏奈さんと一緒に入ることができて嬉しいわ」


 一紗ちゃんは私と杏奈ちゃんのことを交互に見ながらそう言ってくれた。一紗ちゃんの嬉しそうな笑顔はとても可愛くて、美しくも感じられた。

 それからは今日の夕ご飯のことや先日行った海水浴のこと、ダイちゃんのことなどを話しながら3人での入浴を楽しむのであった。

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