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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編8-お泊まり女子会編-

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197/202

第2話『文香と一紗と杏奈でお風呂-中編-』

「顔も洗い終わりました。次は文香先輩ですね」

「うん」


 杏奈ちゃんが体と顔も洗い終えたので、2番目に洗う私がバスチェアに腰をかける。


「文香さん。髪と背中、どっちから洗うかしら?」

「髪からお願いします」

「分かったわ」


 私の髪を担当するのは一紗ちゃんなので、一紗ちゃんは私のすぐ後ろで膝立ちする。


「じゃあ、髪を濡らしていくわね。目を瞑って」

「はーい」


 杏奈ちゃんに倣ってしっかりと返事する。

 目を瞑ってすぐ、シャワーのお湯が頭にかかり始める。真夏の時期になったけど、お湯の温度がちょうど良くて気持ちがいい。


「普段から思っているけど、文香さんの茶髪はとても綺麗よね」

「綺麗ですよね。素敵です」

「ふふっ、ありがとう」


 この茶髪は生まれ持ったものだから、褒めてもらえるのはとても嬉しいな。


「このくらいでいいかしらね」

「うん。一紗ちゃん、持ってきたこのリンスインシャンプーを使って洗ってください」

「分かったわ」


 持参したリンスインシャンプーが入っているピンクのミニボトルを一紗ちゃんに渡した。

 それから程なくして、一紗ちゃんに髪を洗ってもらい始める。そのことで、シャンプーの甘い匂いが香ってきて。住んでいる家以外でいつも使っているシャンプーの匂いを感じるとお泊まりに来たんだなって実感する。

 一紗ちゃんの洗い方……とても優しくて気持ちがいいな。ダイちゃんと同じくらいに上手だと思う。


「どうかしら、文香さん」

「とても気持ちいいよ、一紗ちゃん。今の感じでお願いします」

「ええ、分かったわ」


 鏡に映っている一紗ちゃんのことを見ると、一紗ちゃんは鏡越しで私に向かって穏やかな笑顔を向けてくれた。髪を洗ってもらっているのもあるけど、今の一紗ちゃんは同い年なのが信じられないくらいに大人っぽく感じた。


「普段、大輝君と一緒にお風呂に入ると、こうして髪を洗ってもらうことが多いのよね」

「そうだね」

「文香さんを気持ち良くさせられているのはもちろんだけど、大輝君が普段していることとを私もしていることにも嬉しい気持ちになるわ」

「ふふっ。一紗ちゃんらしいね。ただ、その気持ちは分かるかも」

「ですね」


 杏奈ちゃんと私の返答に、一紗ちゃんは「ふふっ」と楽しそうに笑った。

 それからも一紗ちゃんに髪を洗ってもらう。


「本当に気持ちいいよ。上手だね。これも、二乃ちゃんや御両親の髪をたくさん洗ったからかな」

「きっとそれが大きな理由でしょうね」


 一紗ちゃんは落ち着いていて、優しさの感じられる笑顔でそう言う。お姉さんって感じがして素敵だ。


「……さあ、文香さん。泡を洗い流すから目を瞑ってくれるかしら」

「はーい」


 一紗ちゃんの指示に従って、私は目を瞑る。

 目を瞑った直後、シャワーの温かいお湯が頭にかかる。髪を触る一紗ちゃんの優しい手つきも相まって本当に気持ちがいい。

 泡を洗い流してもらった後、持参したタオルを一紗ちゃんに渡して髪を拭いてもらった。


「はい、これでOKね」

「ありがとう、一紗ちゃん」

「いえいえ。楽しかったわ。あと、髪の量的に洗いやすかったわ」

「私の髪はセミロングだから、ロングヘアの一紗ちゃんに比べると少ないもんね。ありがとね」

「ええ」


 髪を洗い終わったので、私は髪をまとめてヘアクリップで留めた。


「これでOK」

「普段と違う髪型で可愛いわね」

「可愛いですね。似合ってます」

「ありがとう。髪を洗った後はこうしてまとめるんだ」

「そうなのね。私も髪を洗った後はヘアクリップでまとめるわ」

「そうなんだね」


 一紗ちゃんの髪はかなり長いから、まとめるのにも苦労しそうな感じがする。


「ゴールデンウィークのお泊まりのとき、一紗先輩まとめてましたね。文香先輩もまとめるんですね。あたしは……ご覧の通りまとめませんね。ショートボブなので、体を洗ったり、湯船に浸かったりするときもあまり影響がないので」

「そうなんだ。私も髪を伸ばす前は杏奈ちゃんくらいの髪の長さだったから、ヘアクリップとかヘアゴムを使って髪をまとめることはしなかったよ」

「そうだったんですねっ」


 共感してもらえたからか、杏奈ちゃんはちょっと嬉しそうにしていた。


「じゃあ、次は杏奈ちゃんに背中を流してもらおうかな」

「はいっ」


 やる気のある様子で返事をする杏奈ちゃん。後輩の子に元気良く返事してもらえると嬉しいものだ。杏奈ちゃんは一紗ちゃんと入れ替わる形で私の後ろに膝立ちする。

 私は持参したボディータオルを濡らして、この浴室にあるピーチの香りのボディーソープを泡立てていく。あぁ、ビーチらしい優しくて甘いいい匂いだ。


「はい、杏奈ちゃん。お願いします」

「分かりました!」


 杏奈ちゃんにボディータオルを渡して、私は前を向いた。

 右肩の近くにボディータオルの柔らかい感触が。そして、杏奈ちゃんに背中を流してもらい始める。

 ボディータオル越しに杏奈ちゃんの優しい手つきが伝わってくる。気持ちいいなぁ。杏奈ちゃんもダイちゃんと同じくらいに上手だ。


「文香先輩。気持ちいいですか?」

「うん、気持ちいいよ。今の感じでお願いします」

「良かったです。では、このまま洗っていきますね」


 杏奈ちゃんはニコッとした笑顔で返事した。杏奈ちゃんは本当に可愛いな。


「……さっきの一紗先輩の気持ちがよく分かります。文香先輩を気持ち良くさせられて、大輝先輩と同じことをしていると思うと嬉しい気持ちになります」

「共感してくれて嬉しいわ」


 うふふっ、と嬉しそうに笑う一紗ちゃん。杏奈ちゃんの笑顔も嬉しそうなものに変わっていて。2人ともダイちゃんが好きだからこそ共感し合えるのだろう。

 それからも、杏奈ちゃんに背中を流してもらう。


「杏奈ちゃん、背中を洗うのが上手だね」

「ありがとうございます。あたしが幼稚園に通っているときの話ですが、お母さんと一緒によく入っていて、髪や背中を洗うことがあったからだと思います。何回かですが、お父さんやお兄ちゃんとも入って、髪や背中を洗ったことがあります」

「そうなんだね。小さい頃のことでも、気持ち良く洗えるコツを覚えていたんだね。凄いね」

「ありがとうございます」


 ニコニコとした笑顔でお礼を言う杏奈ちゃん。本当に可愛いなぁ。


「可愛いわぁ……」


 と、一紗ちゃんが恍惚とした笑顔になっていた。杏奈ちゃん可愛いよね。

 それからも気持ち良さを感じながら、杏奈ちゃんに背中を流してもらった。


「これで背中を全部流し終わりました」

「ありがとう、杏奈ちゃん。あとは自分で洗うよ」

「分かりました」


 杏奈ちゃんからボディータオルを受け取り、背中以外の部分を洗い始める。

 ボディータオルはいつもと同じだけど、いつもと匂いが違うボディーソーブを使っているので新鮮だな。それを楽しみながら体を洗っていった。

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