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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編8-お泊まり女子会編-

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196/202

第1話『文香と一紗と杏奈でお風呂-前編-』

 夕ご飯を食べ終わった後、私達はお風呂に入ることに。お湯張りは既に済んでおり、すぐに入れる状態だという。夕ご飯もお風呂も準備してくれていて有り難い限りだ。

 どういう順番で入ろうか7人で話し合った結果、青葉ちゃん&二乃ちゃん、和奏ちゃん&百花さん、一紗ちゃん&杏奈ちゃん&私という順番で入ることになった。私は3人で一緒に入るけど、


「この3人なら難なく一緒に湯船に入れると思うわ」

「そうだね、お姉ちゃん。お姉ちゃんと私で入ると広いくらいだし」


 と、一紗ちゃんと二乃ちゃんが言っていた。2人の話からして、麻生家の浴室の湯船はかなり大きそうだ。今の話を聞いてお風呂に入るのがもっと楽しみになった。

 4人が入り終わるまでの間、私は一紗ちゃんの部屋で食後のアイスティーをいただきながら、一紗ちゃんや杏奈ちゃんを中心に談笑したり、みんなが好きなアニメを観たりした。


「ふぅ、気持ち良かったぁ」

「気持ち良かったね、和奏ちゃん。お風呂も広かったし」


 2番目に入った和奏ちゃんと百花さんがお風呂から戻ってきた。気持ち良かったと言うだけあって、2人ともまったりとした様子だ。


「それは良かったです。では、文香さん、杏奈さん、私達も入りましょうか」

「そうだね、一紗ちゃん」

「行きましょう」


 私は着替えやタオルなど必要なものを持って、一紗ちゃんと杏奈ちゃんと一緒に部屋を後にする。

 一紗ちゃんについていく形で、1階にある浴室に繋がる洗面所に向かう。

 洗面所に入ると、シャンプーやボディーソープなどの匂いと思われる甘い匂いが香ってくる。いい匂いだなぁ。あと、現在住んでいるダイちゃんの家や3月まで住んでいた自宅の洗面所や浴室では感じたことのない匂いだから新鮮な感じもする。

 一紗ちゃんが洗面所の扉を閉めて鍵を施錠した後、私達は服や下着を脱ぎ始める。

 一紗ちゃんの裸は水泳の授業で着替えるときや、先日の海水浴で何度か見たことがあるけど……本当にスタイルがいいなって毎回思うよ。胸もとても大きくて。ダイちゃんのおかげもあって私の胸は2ヶ月くらい前にDカップになったけど、一紗ちゃんのような大きな胸になりたい。

 杏奈ちゃんは胸が小さめだけどスタイルがいいなって思うし、可愛い雰囲気もある。そんな杏奈ちゃんのことを、一紗ちゃんは「えへへっ」と声に出して笑いながら凝視している。


「今日も杏奈さんの体はとても素敵ね……」

「あ、ありがとうございます。そう言う一紗先輩は……本当にスタイルがいいですよね。1歳しか違わないのが信じられないくらいに大人っぽいです」

「分かるよ、杏奈ちゃん。同級生とは思えない大人っぽさを感じるよ」

「ふふっ、ありがとう。文香さんの体も素敵よ」

「素敵ですよねっ。スタイルが良くて、肌もとても綺麗で。色気もあって」

「ありがとう、一紗ちゃん、杏奈ちゃん」


 友達や後輩に体を褒めてもらえるのは嬉しいものだ。


「杏奈ちゃんの体は可愛らしくて素敵だよ」

「ありがとうございますっ」


 ニコッと笑いながらお礼を言う杏奈ちゃん。本当に可愛いな。


「……あの、文香さん、杏奈さん。髪や背中を洗いっこするのはどうかしら? ゴールデンウィークのお泊まりで杏奈さんとお姉様と一緒にお風呂に入ったときも洗いっこしたし」


 一紗ちゃんがワクワクとした様子でそんな提案をしてくる。


「洗いっこしましたね。なので、一紗先輩が提案すると思っていました。あたしは賛成です」

「私も賛成。こういうお泊まりで一緒にお風呂に入るときは洗いっこすることが多いし」

「そうなのね! 2人ともありがとう! じゃあ、洗いっこしましょう!」


 とっても嬉しそうにお礼を言う一紗ちゃん。普段は美人で大人っぽい雰囲気だけど、今は幼子のような可愛さがあって。そんな一紗ちゃんも魅力的だ。

 それぞれ誰の髪や背中を洗うのか話し合った結果、


 私の髪:一紗ちゃん

 私の背中:杏奈ちゃん

 一紗ちゃんの髪:杏奈ちゃん

 一紗ちゃんの背中:私

 杏奈ちゃんの髪:私

 杏奈ちゃんの背中:一紗ちゃん


 という担当になった。

 担当も決まったし、3人とも衣服を全て脱ぎ終わったので私達は浴室に入る。浴室に入ると、洗面所で香った甘い匂いが濃くなる。

 ダイちゃんの家や3月まで住んでいた家の浴室に比べるとかなり広い。湯船も広くて、これなら私達3人で難なく一緒に入れそうだ。


「広いね……」

「広いですよね……」


 私と杏奈ちゃんは同じ感想を口にした。


「あと、湯船も大きいから、3人一緒に入れそうだね」

「そうですね。楽しみです」

「そうねっ。じゃあ、さっそく洗いましょうか。文香さんと杏奈さんはお客さんだから、私が最後でいいわ」

「分かった。……杏奈ちゃん、どっちが最初に洗おうか?」

「あたしはどちらでもかまいませんよ」

「そっか。じゃあ……杏奈ちゃんが最初に洗おうか。杏奈ちゃんは今日バイトがあって、お仕事を頑張ったし」

「分かりました。では、最初にあたしが洗いますね」

「うんっ。髪と背中、どっちから洗う?」

「髪からお願いします。いつも髪から洗うので」

「分かった」


 その後、杏奈ちゃんはバスチェアに腰を下ろした。

 また、一紗ちゃんに水道やシャワーの使い方、浴室にあるものを説明してもらった。その中で、ボディーソープはダイちゃんの家で使っているものと同じシリーズで、香りが違うものだと分かった。ここにあるのはピーチの香りで、ダイちゃんの家にあるのはシトラスの香り。なので、私が体を洗うときは、ここにあるボディーソープを使わせてもらおう。

 一紗ちゃんから一通り説明を受けた後、私は杏奈ちゃんの髪を洗うために、杏奈ちゃんの後ろに膝立ちする。小さめの背中やショートボブの金髪がとても可愛らしい。


「じゃあ、杏奈ちゃん。髪を洗っていくね」

「よろしくお願いします」


 鏡越しで笑いかけてくれる杏奈ちゃん。凄く可愛い。先輩として、可愛い後輩の杏奈ちゃんの髪をしっかり洗うからね。


「うんっ。シャワーで髪を濡らすから目を瞑ってね」

「はーい」


 鏡で杏奈ちゃんが目を瞑ったのを確認して、シャワーで杏奈ちゃんの髪を濡らしていく。

 杏奈ちゃんの髪……生来のものだからなのか、とても綺麗な金色で。洗う前だけどツヤもあって。杏奈ちゃん以上に綺麗な金色の髪の人はなかなか見かけない。


「……よし、濡らすのはこのくらいでいいかな」

「では、このピンクのミニボトルに入っているシャンプーで洗ってもらえますか?」

「分かった」


 杏奈ちゃんからオレンジ色のミニボトルを受け取る。あぁ、このシャンプーの商品名……キューティクルを凄く保てるって評判のリンスインシャンプーだ。このシャンプーを使っているのが、杏奈ちゃんの髪が綺麗な理由の一つなのだろう。

 杏奈ちゃんから受け取ったシャンプーを使って、杏奈ちゃんの髪を洗い始める。普段、ダイちゃんの髪を洗うときよりも優しい力で。

 シャンプーがすぐに泡立ち、シャンプーの甘い匂いが広がっていく。その匂いは杏奈ちゃんから香ってくる匂いで。いい匂いだ。


「杏奈ちゃん、洗い加減はどうですか?」

「ちょうどいいです。とても気持ちいいですっ。この強さでお願いします」

「うん、分かった」


 ダイちゃんのときよりも優しい力で洗って正解だったようだ。今後もお泊まりとかで杏奈ちゃんの髪を洗うことはあると思うし、この力加減を覚えておこう。

 とても気持ちいいと言うだけあって、鏡に映っている杏奈ちゃんの笑顔は柔らかいもので。可愛いし、こういう笑顔にできたと思うと嬉しい気持ちになる。


「ふふっ、杏奈さん気持ち良さそうな笑顔になってる。可愛いわぁ」


 一紗ちゃんのニッコリとした笑顔が鏡に映る。


「可愛いよね」

「ふふっ。凄く気持ちいいですからね。……文香先輩、髪を洗うのがとても上手です。もしかして、普段から大輝先輩の髪を洗っているんですか?」

「洗っているのかしら?」


 そう問いかけられ、鏡越しで杏奈ちゃんと一紗ちゃんから見つめられる。ダイちゃんとのことだし、しかもお風呂のことを訊かれたからドキッとするよ。頬がちょっと赤くなっていくのが鏡に映った。


「う、うん。そうだよ。一緒にお風呂に入ると、ダイちゃんと髪や背中を洗いっこすることが多いよ」


 正直に答えた。だからこそ、もっとドキッとして。頬の赤みが濃くなっていく。


「やっぱりそうなんですね」

「そんな感じがしたわ」


 杏奈ちゃんと一紗ちゃんは納得した様子だ。


「髪を洗うのが上手なのも納得です。あと、普段から、恋人の文香先輩から、気持ち良く髪を洗ってもらえる大輝先輩は幸せ者だなって思います」


 杏奈ちゃんは持ち前の可愛らしい笑顔でそう言ってくれる。そのことがとても嬉しくて、胸がポカポカと温かくなる。


「ありがとう、杏奈ちゃん」

「いえいえ」

「あとで文香さんに背中を洗ってもらうのがより楽しみになったわ」

「楽しみにしていてね」


 一紗ちゃんの背中を洗うときも、今の杏奈ちゃんのように気持ち良くできたらと思う。


「あと、大輝君に髪や背中を洗ってもらえるのは羨ましいわっ」

「そうですね、一紗先輩」


 一紗ちゃんも杏奈ちゃんもダイちゃんのことが好きだから、羨ましく思うのは自然なことだろう。ダイちゃんと洗いっこできる関係であることに幸せに思うと同時に、大切にしていこうとも思った。

 それからも、杏奈ちゃんの髪を洗っていく。

 杏奈ちゃんの髪はショートボブだから、毛量的な意味で洗いやすい。セミロングの私よりも少ないし、ダイちゃんよりも少し多いくらいだから。あと、髪を洗っている間、杏奈ちゃんはずっとまったりとした笑顔を見せてくれているから、洗っていて気分がいい。


「……よし。このくらいでいいかな。杏奈ちゃん、シャワーで泡を落とすから目を瞑ってね」

「はーい」


 杏奈ちゃんの可愛くていいお返事が浴室に響いた。

 杏奈ちゃんが目を瞑ったのを確認し、シャワーを使って杏奈ちゃんの髪に付いたシャンプーの泡を洗い流していった。

 泡を洗い流した後、杏奈ちゃんが持ってきたタオルを使って杏奈ちゃんの髪を拭いた。そのことで、洗う前以上に杏奈ちゃんの金髪が艶やかなものになった。


「はい、これで終わり」

「ありがとうございます! 凄く気持ち良かったです」 


 杏奈ちゃんは私の方に振り返って、いつもの可愛い笑顔でお礼を言ってくれた。本当に可愛いなぁ。


「いえいえ。杏奈ちゃんの綺麗な金髪を洗えて楽しかったよ」

「そうでしたかっ。あと、髪を褒めてもらえて嬉しいです。ありがとうございます」

「いえいえ」

「……では、次は一紗先輩に背中を流してもらいましょう。お願いします」

「ええ!」


 一紗ちゃんはやる気いっぱいの様子で返事する。一紗ちゃんは杏奈ちゃんのことをとても気に入っているから、このときを楽しみにしていたのかもしれない。

 一紗ちゃんは杏奈ちゃんの後ろに膝立ちする。

 私は一紗ちゃんの後ろに立って、一紗ちゃんが杏奈ちゃんの背中を洗い流すのを見守ることに。


「杏奈さん、背中はどうやって洗う? ボディータオル? それとも私の手? 私はどっちでもいいわよぉ」


 うふふっ、と一紗ちゃんは声に出して笑う。鏡に映る一紗ちゃんの笑顔は不適なもので。あと、一紗ちゃんは両手の指をワキワキと動かしていて。手で洗いたそうだなぁ。


「ボ、ボディータオルでお願いします。持ってきましたし。それに、ゴールデンウィークのお泊まりでもボディータオルで洗ったじゃないですか」

「……そういえばそうだったわね。……では、ボディータオルで洗いましょうか」


 一紗ちゃんは笑みこそ絶やさないものの、ちょっぴり残念そうにも見えた。


「はい、ボディータオルでお願いしますね。ボディーソーブはここにあるものを使わせてもらいますね。うちも同じシリーズを使っていて。ベーシックなフローラルの香りのものですが」

「あら、そうなのね」

「私も同じボディーソープシリーズを使ってるよ。シトラスの香りで」

「このシリーズはいいものね。ここにあるのはピーチだけど、フローラルの香りもシトラスの香りも好きよ」


 一紗ちゃんは落ち着いた笑顔でそう言った。

 その後、杏奈ちゃんはボディータオルを濡らして、ここの浴室にあるボディーソープを泡立てていく。そのことでピーチの甘い匂いが香ってきて。


「あぁ、ピーチいいですね」

「甘い匂いでいいよね」

「いい香りよね。うちはみんなピーチの香りが一番好きだから、この香りのボディーソープを使うことが一番多いわ」

「そうなんですね。……泡立ちましたので、一紗先輩お願いします」

「分かったわっ!」


 元気良く返事をした後、一紗ちゃんは杏奈ちゃんからボディータオルを受け取り、杏奈ちゃんの背中を洗い始める。


「どうかしら、杏奈さん」

「気持ちいいです。今の感じでお願いします」

「分かったわ」


 鏡で見ると……杏奈ちゃん、とても気持ち良さそうだ。

 また、杏奈ちゃんの後ろで、一紗ちゃんは優しい笑顔で洗っていて。その笑顔は妹の二乃ちゃんに向けることの多い笑顔で。なので、一紗ちゃんが杏奈ちゃんのお姉さんのように見えて。


「一紗ちゃんは二乃ちゃんとお風呂に入ったり、髪や背中を洗いっこしたりするの?」

「小さい頃はよく一緒に入って、洗いっこしていたわ。今でもたまにするわ。小さい頃は両親とも洗いっこをしていたわ」

「そうなんだね」

「今の杏奈さんのように、髪や背中を洗っていると二乃は気持ち良さそうな笑顔になるわ。それがとても可愛いの……」


 そういったときのことを思い出しているのか、一紗ちゃんの笑顔は幸せそうなものに。二乃ちゃんのことが大好きなのがよく伝わってくるよ。


「ふふっ、そうなんだね」

「ゴールデンウィークのお泊まりでお風呂に入ったときに同じことを言っていましたね」

「そうだったわね。二乃の髪や背中をたくさん洗ってきたこの浴室で、杏奈さんの背中を洗えるなんて。幸せだわ」

「一紗ちゃんらしいね」

「同じことを思いました」

「うふふっ。今年の夏休みの思い出がまた一つ増えたわ」


 一紗ちゃんはニコニコとした笑顔でそう言った。

 その後も一紗ちゃんは杏奈ちゃんの背中を洗っていく。杏奈ちゃんの背中を洗えることの感激からか、一紗ちゃんは笑みを絶やすことはなかった。


「はい、背中を洗い終わったわ」

「ありがとうございます、一紗先輩。気持ち良かったです」

「良かったわ。……杏奈さんさえ良ければ、脚とか体の前面も洗うけど?」

「一紗先輩らしい打診ですが……背中だけで十分です。お気持ちだけ受け取っておきますね。ありがとうございます。あとは自分で洗います」

「分かったわ」


 一紗ちゃんはそう言い、杏奈ちゃんにボディータオルを渡した。

 それからは、杏奈ちゃんは自分で体を洗っていく。その姿を一紗ちゃんと一緒に後ろから眺めて。気持ち良さそうにしながら洗う杏奈ちゃんの姿はとても可愛かった。

昨日、制作が終わりました。全8話でお送りします。

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