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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-

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192/202

第13話『お昼ご飯とビデオ通話』

 磯散策から帰ってくると、フローマットの上で一紗と二乃ちゃんが一緒に寝そべりながら談笑していた。二乃ちゃんと寄り添っているからか、一紗はとても幸せそうにしていた。

 7人全員ではまだ一緒に遊んでいなかったので、浅いところでみんなで水をかけ合ったり、レジャーシートの近くでビーチボールを使って遊んだりした。

 また、ビーチボールでは、俺&サクラ&一紗&二乃ちゃんvs.羽柴&小泉さん&杏奈の試合形式でも遊んだ。人数は違うけど意外といい試合になって結構盛り上がった。ちなみに、俺のいるチームは負けた。


「あぁ、お腹空いたなぁ」


 ビーチボールで試合をした直後、小泉さんがお腹に両手を当てながらそう言った。


「私もお腹が空いてきたわ」


 一紗も落ち着いた笑顔でそう言った。大食いの小泉さんの一言に、同じく大食いな一紗が最初に反応したか。

 スポーツドリンクを飲んで休憩する時間はあったとはいえ、海に来てから水をかけ合ったり、ビーチボールを使って遊んだりするなどして体を結構動かした。それに、海まで2時間近くかけて来たし。お腹が空くのも納得かな。


「俺もお腹空いてきたな」

「あたしもお腹空きました。ビーチボールでたくさん遊びましたし」

「俺もだ。腹減ったぜ」

「あたしもです。さっき、防災チャイムみたいなメロディーが鳴っていたので、もう正午は過ぎているかと」

「さっき鳴っていたね、杏奈ちゃん。じゃあ、お昼ご飯にしようか」


 サクラの提案に俺達6人は全員賛成する。よって、お昼ご飯にすることに。

 事前の話し合いで、お昼ご飯は海水浴場の近くにあるコンビニで買うことになっている。去年、サクラと小泉さんが友達と一緒に遊びに来たときもこの形にしたのだそうだ。海の家よりも混んでおらず、コンビニなので食べ物や飲み物が幅広く売っていて良かったと2人が提案してくれたのだ。また、海水浴場の近くのコンビニなので、水着姿のままや、水着にTシャツやラッシュガードなどを着た服装で行ってもいいそうだ。

 荷物もあるので、全員一緒には行かず、ビーチバレーで戦ったチームごとに行くことにした。

 最初に勝利チームの羽柴と小泉さんと杏奈がコンビニに買いに行った。3人曰く、冷たいものを含め食べ物や飲み物、お菓子が充実しているとのこと。

 羽柴達が買ってきたので、今度は敗北チームの俺とサクラと一紗と二乃ちゃんがお昼を買いに行くことに。その際、俺は上にTシャツを着た。

 ちなみに、サクラはラッシュガード、一紗と二乃ちゃんはファスナー付きのパーカーを着ている。二乃ちゃんは胸元までファスナーを閉めているが、一紗は全開だった。


「3人とも似合ってるな」

「ありがとう、ダイちゃん。嬉しいな」

「ありがとう、大輝君」

「ありがとうございますっ」


 3人とも嬉しそうな笑顔でお礼を言った。笑顔なのもあり、より似合っている印象に。


「ダイちゃんも似合ってるよ」

「似合っているわよね、文香さん!」

「似合ってますよね!」

「ありがとう」


 Tシャツを着ただけだけど、恋人や友達、友達の妹から似合っていると言われると嬉しいものだな。さっき、3人もこういう気持ちだったのだろう。

 サクラがコンビニの場所は知っているので、俺と一紗と二乃ちゃんがサクラについていく形で海水浴場近くのコンビニへ向かう。

 俺達のレジャーシートを出発してから数分ほどで、四鷹にもある大手チェーンのコンビニに到着した。

 海水浴場の最寄り駅に着いてからはずっと暑い場所にいたからだろうか。コンビニの中に入るとかなり涼しく感じる。サクラ達も「涼しい……」とまったりとした笑顔で言っている。

 おにぎりやパン、麺類、飲み物コーナーを中心に見ていく。

 品揃えはもちろんいいし、日曜日のお昼時だけど在庫もしっかりある。海水浴シーズンに合わせてたくさん仕入れているのかもしれない。

 また、俺達のようにお昼ご飯を買いに来ているのか、水着姿や水着にシャツやパーカーなどを着た人がちらほらといる。


「うわあっ! いっぱいありますね! 何にしようかなぁ」

「いっぱいあるから迷っちゃうわね、二乃」

「一紗ちゃんの気持ち分かるな。お腹空いてきているし、どれも美味しそうに見えるもん」

「そうだな」


 まだ購入していないけど、コンビニでお昼を買うことにして良かったとさっそく思っている。

 店内を見ていき、俺は酢醤油味の冷やし中華と鮭おにぎり、麦茶を買うことに。

 サクラはごまだれ冷やし中華と麦茶、一紗は冷やしたぬきうどんとおかかおにぎりと赤飯にぎりとサラダと緑茶、二乃ちゃんはミックスサンドといちごジャムパンとストレートティーを購入していた。


「美味しそうなお昼を買えて良かったです!」

「ええ。コンビニで買うのっていいわね。いっぱい買えたわ」

「一紗ちゃんらしいね」

「そうだな。……コンビニっていいな。色々な種類があるし、店内は涼しいし。去年、羽柴達と海水浴に来たときは、海の家でやきそばとかフランクフルトとかラムネを買ったんだけど、お昼時だったから炎天下の中で並んだからさ。まあ、海の風情を感じられたのは良かったけどな」

「そうだったんだ。海の家は雰囲気があっていいけど、今日みたいに日曜日だと人がいっぱいのときもあるもんね」

「ああ。今後はコンビニで買うのも一つの選択肢になるよ。提案してくれてありがとう、サクラ」

「いえいえ」


 サクラは結構レしそうな様子でそう言った。そんなサクラがとても可愛くて。

 レジャーシートに戻り、俺達は円形に座ってお昼を食べることに。ちなみに、座り方は俺から時計回りにサクラ、小泉さん、羽柴、杏奈、二乃ちゃん、一紗だ。


「それじゃ、いただきます!」

『いただきます!』


 小泉さんの元気な号令で、俺達はお昼ご飯を食べ始める。

 俺はメインの冷やし中華を食べることに。

 中華麺の上に具材を乗せ、酢醤油味のたれをかける。割り箸を使って混ぜていく。こういったちょっとした手間が何だか楽しい。

 ある程度混ざったところで、箸で具材を絡ませながら冷やし中華を一口食べる。


「うまっ」


 酢醤油だれのさっぱりとした味わいがとてもいい。中華麺や具材ともよく合っているし。コンビニで買ったばかりなのでよく冷えているのもいい。これなら午後に遊ぶスタミナもつきそうだ。


「ごまだれ味の冷やし中華も美味しいよ」


 サクラはいい笑顔でそう言ってくる。


「ごまだれも美味しいよな」

「うん。酢醤油もいいよね。一口交換する?」

「いいぞ」

「ありがとう。じゃあ、私から」


 サクラは箸でごまだれ味の冷やし中華を一口分掬い上げる。


「はい、ダイちゃん。あ~ん」

「あーん」


 サクラにごまだれ味の冷やし中華を食べさせてもらう。

 ごまだれの方も酸味があるけど、ごまのまろやかな味わいがとてもいい。酢醤油味の冷やし中華も好きだけど、ごまだれも同じくらいに好きだなぁ。


「ごまだれ味も美味しいな。ありがとう、サクラ」

「いえいえ」

「じゃあ、俺もサクラに」


 俺は具材を絡ませて、麺を掬い上げ、サクラの口元まで運んでいく。


「はい、サクラ。あーん」

「あ~ん」


 サクラに酢醤油味の冷やし中華を食べさせる。

 この冷やし中華は美味しいし、サクラは酢醤油味の冷やし中華も食べるから気に入ると思うけど……どうだろう?


「うんっ! さっぱりしていて美味しいね!」


 サクラはニコッとした笑顔でそう言ってくれた。俺が作ったわけじゃないけど、サクラが美味しく食べてくれて嬉しい気持ちになる。


「ダイちゃん、ありがとう!」

「いえいえ」

「ふふっ。大輝さんと文香さんって本当にラブラブですね!」

「そうよ、二乃。学校でお昼を食べるときも、お弁当のおかずを食べさせることもあるわ」

「一緒に住んでいるから、お弁当の内容も同じなんだけどね」


 一紗と小泉さんがそう言うのもあり、俺達7人は笑いに包まれる。

 恋人として付き合い始めてからは特に、学校の昼休みでお弁当を食べるとき、サクラと俺のお弁当の中身は一緒だけど、おかずを食べさせ合うことがあるな。サクラに食べさせてもらうとお弁当がより美味しく感じられるし。

 それからもお昼ご飯を食べていく。美味しいのか、みんないい笑顔になっている。

 ――プルルッ。

 うん? 俺のスマホが鳴っている。

 さっそく確認すると……和奏姉さんからメッセージが届いたと通知が。その通知をタップすると、LIMEでの和奏姉さんとの個別トークが開かれ、


『みんなと海水浴楽しめてる?』


 というメッセージが表示される。今日、俺達が海水浴に行くことを知っているし、水着姿の写真も送ったから、俺達が海水浴を楽しめているかどうか気になったのだろう。


『楽しめてるよ。今はみんなでお昼を食べてる』


 と返信を送った。

 和奏姉さんもトーク画面を見ているのだろうか。俺の返信にはすぐに『既読』マークが付き、


『そうなんだ! 良かったね!』


 と、和奏姉さんは返信をくれた。姉さんの楽しそうな笑顔が頭に浮かぶ。


『みんながいるなら、ビデオ通話したいな。写真もいいけど、動いているみんなの水着姿を見たいの』


 ビデオ通話か。試験期間中でなければ、きっと和奏姉さんも一緒に来ていたと思うし、動いているみんなの水着姿を見たいのだろう。


「なあ、みんな。和奏姉さんがみんなとビデオ通話したいんだってさ。いいか?」


 俺はみんなにそう問いかける。


「いいよ、ダイちゃん」


 最初にそう言ってくれたのはサクラだった。その後すぐに、サクラ以外もみんないいよと言ってくれた。


『こっちは全員OKだぞ』


 と、和奏姉さんにメッセージを送った。


『ありがとう! ……せっかくだから、百花ちゃんもビデオ通話に誘おうかな。百花ちゃんも大輝達に海水浴に誘われたし』


 なるほどな。それはいい考えだと思う。

 いいぞ、と返信すると、和奏姉さんは百花さんにビデオ通話の件について訊いてみるという。

 程なくして、和奏姉さんから百花さんもビデオ通話に参加することになった。姉さんが俺、百花さん、姉さんの3人のグループトークを作り、そのグループトークでビデオ通話をする形で。この形だと、一人一人が映る画面が大きくなるので、2人が俺達の水着姿が見やすくなっていいのだろう。

 和奏姉さんによって3人のグループトークが作られ、姉さんからビデオ通話がかかってきた。通話ボタンをタップすると、画面には私服姿の和奏姉さんと百花さんがそれぞれ表示された。画面で半分ずつ表示されているので見やすいな。きっと、和奏姉さんと百花さんもスマホの画面半分に俺の姿が映っているのだろう。


『こんにちは、大輝、百花ちゃん』

『こんにちは、和奏ちゃん、大輝君』

「こんにちは、和奏姉さん、百花さん」


 3人で挨拶すると、和奏姉さんと百花さんは笑顔で手を振ってくる。なので、俺も画面に向かって手を振る。


『いいね~! 動く大輝の水着姿』

『ふふっ、いいよね。あと、ちょっとドキッとしちゃうな』

「ははっ、そうですか。ありがとうございます」


 百花さんに水着姿を観られるのは初めてだし、和奏姉さんはこれまでに日帰りや家族旅行での海水浴やプールで水着姿をいっぱい見られたけど、ビデオ通話で画面越しで見られるのは初めてだから新鮮だ。


『大輝。フミちゃん達も見たいな』

『私も見たい!』

「いいですよ。俺がサクラ達にスマホを渡していきますね。……みんな、スマホを時計回りに渡すから和奏姉さんと百花さんに挨拶してくれ」


 隣に座っているサクラを先頭に時計回りで俺のスマホを渡していき、和奏姉さんと百花さんに挨拶していく。

 誘ったけど、試験期間なので来られなかった和奏姉さんと百花さんと話せるのもあり、みんな楽しそうに挨拶している。いい光景だ。

 また、俺のスマホから聞こえる和奏姉さんと百花さんの声も楽しそうで。2人はみんなの水着姿を「いいね!」「似合ってるね!」「可愛いね!」などと絶賛している。

 あと、二乃ちゃんは和奏姉さんと初対面なので、


『あなたが一紗ちゃんの妹の二乃ちゃんなんだね。初めまして』

「初めまして。麻生二乃です! 中学1年生です」

『えっ、中1なの! 午前中に一紗ちゃんから送られた写真と一緒に、中学生の妹だってメッセージはもらっていたけど。大人っぽい見た目だし、おっぱいも大きいから中3かと思ったよ』

『中1とは思えないよね。私は初めて会ったときは高校生かと思ったよ』

『一紗ちゃんのメッセージがなければ、私も高校生だと思っていたかも』

「えへへっ。中1なんです」


 というやり取りがあって面白かった。まあ、知らない人が見たら、二乃ちゃんは高校生に思えるよな。大人っぽく見られて嬉しいのか、二乃ちゃんはニコニコとした笑顔になっていて。だから、微笑ましくも思えた。

 最後の順番である一紗の挨拶も終わり、一紗からスマホを渡される。


『大輝に戻ったね。みんなの水着姿良かったよ! でも、一番良かったのは大輝かな』


 和奏姉さんは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくる。こういうことを平気で言えるところがブラコンだなぁと思う。ただ、本人にブラコンの自覚がないのが恐ろしい。


『あははっ、和奏ちゃんらしい感想だね』


 百花さんもいつもと変わらぬ可愛い笑顔でそう言った。百花さんと同感なのか、サクラ達はみんな笑顔で頷き、笑いに包まれる。


「そ、そうか。ありがとう、姉さん」

『うんっ! ……大輝からは海水浴を楽しめているって聞いたけど、みんなはどう?』


 と、和奏姉さんは問いかけてくる。

 みんなに訊いているし、再び俺のスマホを時計回りで回すか。そう考えて、サクラに俺のスマホを渡した。


「とても楽しめています! ダイちゃんとはひさしぶりで恋人になってからは初めてですし、一紗ちゃんや杏奈ちゃん達とは初めて来ていますから。あと、海がとても気持ちいいです!」

「気持ちいいよね、文香。あたしも楽しめています。ビーチボールでたくさん遊びましたし!」

「速水以外とは初めてですけど楽しめています」

「楽しいです。みなさんとは初めてですし、学年も違いますが、とても楽しめています」

「あたしもです! みなさん年上ですが優しくしてくれますし」

「私も楽しいです。海も気持ちいいですし、みんなの水着姿も見られて最高です。あと、私もお姉様と一緒で、大輝君の水着姿が一番いいと思ってます!」


 みんなが時計回りで順番に和奏姉さんと百花さんに楽しそうに話す。みんなも今日の海水浴を楽しめていて何よりだ。約1名、俺の水着が最高だと言っているけど。

 一紗が話し終わったので、再び俺の手元にスマホが戻ってくる。


『みんな、海水浴が楽しめていて何よりだよ』

『そうだね、和奏ちゃん』

『みんなの水着姿を見たり、楽しいって話を聞いたりしたら疲れ取れた。この後も試験勉強や締め切りが近い最終課題を頑張れそうだよ』

『私も。いい休憩になったよ』

『そうだね』


 いい休憩になったか。もしかしたら、和奏姉さんがビデオ通話したい理由の一つは、試験勉強や最終課題をすることの疲れを取りたかったからなのかもしれない。


「それなら良かったです。姉さんも百花さんも頑張ってください」

『うんっ! ありがとう! みんな、この後も海水浴楽しんでね!』

『ありがとう、大輝君。海水浴楽しんでね』

「はい。ありがとうございます」


 俺がそう言うと、和奏姉さんと百花さんが笑顔で手を振ってくる。なので、俺も2人に向かって手を振ってくる。

 すると、サクラが俺の左肩をトントンと叩く。


「ダイちゃん。私も2人に手を振りたい」

「分かった。じゃあ、みんなも2人に手を振るか」


 俺はサクラから時計回りにスマホの画面を動かしていく。それに合わせてサクラ達は笑顔で画面に向かって手を振った。

 一周し終わったところで、和奏姉さんと百花さんから通話を切り、ビデオ通話が終わった。みんなも楽しそうに話していたし、ビデオ通話をして良かったな。

 その後、お昼を食べるのを再開し、みんなで昼食の時間を楽しむのであった。

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