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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-

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188/202

第9話『海だ! 水着だ!』

 7月26日、日曜日。

 みんなで海水浴に行く日になった。

 グループトークで相談し、行き先は神奈川県の湘南地域にある海水浴場だ。その海水浴場は俺達の住んでいる地域から電車で日帰りできるのもあり、去年、俺と羽柴も、サクラと小泉さんも遊びに行った場所だ。

 四鷹駅から海水浴場の最寄り駅までは電車を乗り継いで1時間半ほど。

 一紗と二乃ちゃんと小泉さんとは自宅の最寄り駅が違うので、乗っている電車で3人と合流し、海水浴場の最寄り駅まで向かっていく。普段は電車に乗らないし、1時間半も乗るので個人的には小旅行な感じだ。サクラ達と話したり、景色を見たりするのが楽しかったのもあり、到着するまではあっという間に感じられた。


「1時間半かかったけど、そこまでかかった感じはしなかったね、ダイちゃん」

「そうだな。サクラ達と話していたし。景色も楽しめたからな」

「そうだねっ。去年青葉ちゃんと一緒に行ったことはあるけど、ダイちゃん達とは初めてだからちょっとした旅行気分だったよ」

「ははっ、なるほどな。普段は電車に乗ることがないから、俺も小旅行って感じがした」

「分かる。徒歩通学だもんね」


 サクラは可愛らしい笑顔でそう言ってくれる。共感してくれて嬉しいな。

 俺、サクラ、羽柴、小泉さんは去年も遊びに行ったことがあるので、俺達が先導して海水浴場へ向かう。

 これから行く海水浴場は、神奈川県はもちろん関東地方でも有数の人気がある場所なので、俺達以外にも海水浴場へ行く人はちらほらといて。今はまだ午前10時近くだけど、日曜日だし夏休み中だから、海水浴場はきっと賑わっているんだろうな。

 最寄り駅から歩いて数分ほど。


「わぁっ! 海だよ、お姉ちゃん!」

「そうね! 青くてとっても綺麗な海ね!」

「とても綺麗ですよね! あっちの方には富士山も見えますし、最高の景色です!」


 海水浴場に到着し、初めてここに来た二乃ちゃんと一紗、杏奈がそんな感想を言う。3人とも目を輝かせていて可愛らしい。

 俺は去年、羽柴と遊びに来たから、海水浴場を見るとちょっと懐かしい気分だ。ただ、羽柴以外とは初めて来たから新鮮な気持ちもあって。不思議な感覚だ。

 俺の予想通り、海水浴場は多くの人で賑わっている。


「あははっ、みんな可愛いな。1年ぶりの海だー!」

「そうだね、青葉ちゃん。1年ぶりだけど、ダイちゃん達とも一緒だから新鮮な気持ちだよ」

「俺もだ。去年、羽柴達と来たから懐かしい気持ちもある」

「そうだな。去年はいっぱい遊んだな。今年も遊ぶぞ」

「みんなで楽しく遊ぼうね! 文香は覚えていると思うけど、ここで『海だー!』って叫ぼうか」


 小泉さんは持ち前の快活な笑顔でそんな提案をしてくる。海だって叫ぶシーンは漫画やアニメで見たことはあるけど、実際にやっている人を見たことはあまりない。俺も叫んだことはない。

 あと、今の小泉さんの言葉からして、サクラはやったことがあるんだ。そんなことを考えていると、サクラは笑顔で「やったねぇ」と言った。

 周りにたくさん人はいるけど、海に来ることはそうそうないから叫ぶのはいいかもしれない。


「俺はいいぞ」


 と、最初に賛成する。その後、サクラ達も賛同の意を示した。なので、叫ぶことに。


「じゃあ、叫ぶよ。せーの!」

『海だー!』


 周りに人がいっぱいいるけど、そんなことはお構いなしに思いっきり叫んだ。

 中高生7人が一緒に叫んだからか、こちらを見てくる人が何人もいる。そのことにちょっと恥ずかしさもあったけど、サクラ達と一緒に叫んだことの気持ち良さの方が圧倒的に上回った。


「気持ちいいー!」

「気持ちいいですね、青葉さん! 青春って感じですっ!」

「漫画やアニメの水着回くらいでしか見たことがねえけど、叫んでみると結構気持ちいいもんだな!」

「周りに見られて恥ずかしさもありますけど、スカッとはしますね」

「爽快感があるわよね。恋愛小説も書いているし、海エピソードを書くときの参考になったわ」

「一紗ちゃんらしい感想だね。ダイちゃん達と叫べて気持ちいいよ。あと、去年のことを思い出した」

「そうか。こうやって海だって叫ぶのは初めてだけど、サクラ達と一緒だから気持ちいいよ」


 杏奈など恥ずかしさを感じる人もいるけど、みんな叫んで気持ち良かったようだ。

 初めての絶叫がサクラ達と一緒で良かった。個人的には高2の夏休みのいい思い出が一つ増えたな。

 俺達は海水浴場に設けられている更衣室に向かい、水着に着替えることに。更衣室の前で待ち合わせをすることになった。

 羽柴と一緒に男性用の更衣室に入る。

 男性用の更衣室の中には人がそれなりにいる。俺達のような若そうな人達のグループ、親子連れ、ボディービルでもやっているんじゃないかと思える黒光りしたマッチョなおっさん達など様々だ。

 俺と羽柴は少し広めのスペースとなっているところに行き、水着へと着替え始める。

 俺の水着はサクラ達が新しい水着を買った日に、バイト帰りに買った青い海パンだ。みんなに似合っていると思ってもらえるといいなと思いつつ、水着を穿く。


「おっ、その水着……新しいやつか?」

「ああ。今日のために新調した」

「そっか。似合ってるな」

「ありがとう」


 お礼を言うと、羽柴は爽やかな笑顔を向けてくれる。同性の親友に似合っているって言われるのは嬉しいな。彼のおかげで、サクラ達も似合っていると言ってくれそうな気がしてきた。

 また、羽柴の水着は……黒い海パンか、見覚えがある。


「羽柴は……去年と同じか? 見覚えのある感じだけど」

「ああ、去年と同じ奴だ。穿けて良かったぜ。……実は読みたい本とか欲しいグッズがいっぱいあってさ。それに、今日の行き帰りの交通費とかもあるから、そこまで金に余裕なくて」

「ははっ、羽柴らしいな。……似合ってるぞ」

「ありがとな」


 羽柴は白い歯を見せながら笑った。

 2人とも着替え終わったので、俺達は荷物を持って更衣室の外に出る。

 更衣室を出たところが待ち合わせ場所だけど……サクラ達はまだ誰もいない。


「さすがに俺達の方が早かったか」

「そうだな。まあ、気長に待とうぜ」

「ああ」


 サクラ達がどんな水着を買ったのか楽しみだ。特にサクラ。だから、いつまでも待っていられそうだ。


「いい顔してるな、速水。おおかた、桜井達の水着姿が楽しみとか思っているんだろ。特に桜井の」

「……見事に言い当てたな」

「当たったか。恋人と一緒に海へ来たんだから、そのくらいの推理はできるさ」


 ははっ、と羽柴は爽やかな笑顔で笑う。心の中を見事に読まれてしまったけど、羽柴の笑顔を見ると嫌な感じはしない。

 今は海パンだけだけど、日差しを直接浴びているから結構暑いな。ただ、たまに吹く穏やかな潮風が気持ちいい。


「更衣室の近くにいるあの2人、どっちも凄くイケメンだねっ」

「声かけたーい。でも、更衣室の前にいるし、彼女か女子と一緒に来てる可能性高そう」

「ありそうだよね。玉砕するだけかもしれないからやめとこ……」

「そうだね……」


 といった女性達の話し声が聞こえてきた。

 周りを見てみると……何人もの女性達がこちらに視線を向けている。羽柴は男の俺から見てもかなりのイケメンだからな。俺は……サクラ達はかっこいいと言ってくれているけど。

 羽柴は女性達の視線を特に気にする様子もなく海水浴場を眺めている。バイト先のタピオカドリンク店で女性達にたくさん接客しているし、女性に見られることに慣れているのかもしれない。


「ダイちゃん、羽柴君、お待たせ」


 サクラの声が聞こえてきたので、俺達は女子更衣室の方に視線を向ける。すると、目の前には水着に着替えたサクラ達が立っていた。

 サクラはピンクの三角ビキニだ。シンプルで王道なデザイン。ただ、そんなビキニを着ているのもあり、サクラのスタイルの良さが分かる。サクラはピンクが大好きなので、ピンクの水着を着るところがサクラらしくて可愛いなって思う。あと、お風呂やベッドの中でサクラの裸をたくさん見てきたのもあって、いつにない水着姿が艶っぽくも感じられる。

 一紗は黒のクロスホルタービキニ。黒い水着なので、一紗の肌の白さが際立ち、落ち着いた大人な雰囲気を醸し出している。女性陣の中で胸が一番大きくてスタイルが抜群なのもあり、かなりの艶っぽさが感じられる。

 杏奈は水色のフリル付きのビキニか。フリルが付いていて可愛らしさも感じられるし、水色だから爽やかさも感じられる。

 小泉さんは白いハイネックビキニだ。爽やかな雰囲気だ。あと、女子テニス部で日頃から運動しているのもあって、全身に程良く筋肉がついていて均整の取れたいいスタイルだ。

 二乃ちゃんは赤い三角ビキニで、ボトムスがスカートの形になっている。ボトムスがスカートなのもあり可愛らしい雰囲気だ。ただ、さすがは一紗の妹というべきか、中1としてはかなりの発育の良さであり、大人っぽさも感じられる。高校生でも通じそうだ。そんな二乃ちゃんの胸のあたりを杏奈が見ているような。


「おー、みんな似合ってるな」


 羽柴はいつもの爽やかな笑みを浮かべながらそう言った。


「そうだな。羽柴の言う通り、みんな水着がよく似合っているよ。特にサクラは……本当によく似合っていて素敵だよ。ピンク色の水着なのもあって本当に可愛い」


 羽柴に続いて俺もサクラ達の水着姿の感想を言った。サクラについては特に。恋人だからいいよね。

 みんな本当によく似合っているなぁ。特にサクラは。とてもいい光景だ。みんなと一緒に海水浴に来られて良かったとさっそく実感している。


「2人にそう言ってもらえて嬉しいよ。特にダイちゃんにいっぱい褒められて嬉しいです。この水着にして良かった」


 サクラは嬉しそうな笑顔でそう言うと、頬をほんのりと赤らめながら俺のことを見つめている。今の反応もあって、サクラの水着姿がより似合っている印象に。


「良かったわね、文香さん」

「水着を買うとき、大輝先輩に可愛いって思われたいって言っていましたもんね」

「文香、あたし達の中で一番一生懸命に水着を見ていたもんね。良かったね、文香」

「良かったですね、文香さん!」

「うんっ!」


 サクラはとても可愛い声で返事をして、一紗達に向かって首肯した。サクラ……俺のことを考えて水着を選んでくれたんだな。恋人として嬉しい気持ちになるな。


「速水君と羽柴君に似合っているって言ってもらえて良かったよ」

「そうですね、青葉さん。あたしもお二人に似合っていると言ってもらえて嬉しいです」

「私も2人に似合っていると言ってもらえて嬉しいわ。大好きな大輝君から似合っているって言ってもらえるのは特に嬉しいわよ」

「あたしも……先輩方に似合っていると言われて嬉しいですが、大輝先輩に言われると特に嬉しいですね」


 俺と羽柴が似合っていると言ったから、一紗達4人も嬉しそうな笑顔だ。

 ただ、俺に似合っていると言われたのが特に嬉しい一紗と杏奈は俺に視線を向けている。2人とも俺のことが好きだし、2人もサクラと同じように俺のことを考えて水着を選んだのかもしれないな。そんな2人のことをサクラは優しい笑顔で見ていた。


「ダイちゃんと羽柴君も水着似合ってるよ。特にダイちゃんは。その水着、青いから爽やかでかっこいいよ」

「2人ともよく似合っているわ。特に大輝君は。素敵よ!」

「先輩方、よく似合っていますよ」

「2人とも似合ってるね」

「お二人とも素敵ですよ!」


 サクラ達は俺と羽柴の水着姿を褒めてくれる。それはもちろん嬉しいけど、恋人のサクラが俺の水着を特に褒めてくれたのがとても嬉しくて。さっきのサクラはきっとこういう気持ちだったんだろうな。


「ありがとう、みんな。この水着を買って良かった」

「ありがとな」


 俺と羽柴はサクラ達にお礼を言う。そのことに、サクラ達は明るい笑顔を向けてくれて。みんなの笑顔を見ていると、この7人で今日は海水浴を思いっきり楽しめそうだと思った。


「おおっ、あのグループの女子達、みんなレベル高いぜ……」

「そうだな。可愛い子もいれば、スタイル抜群な子もいるしな……」


「タイプは違えど良さそうな女子ばっかりだな」

「ああ。一緒にいる男2人が羨ましいぜ……」


 などと、男性中心にそういった声が聞こえ、こちらに視線が集まる。可愛かったり、美人だったり、スタイルがいい女性が5人いるからそうなるのは自然なことかも。ただ、当の本人達は、みんなで一緒にいるのもあってか特に気にした様子は見られない。

 水着に着替え終わったので、俺達はビーチパラソルを立てたり、レジャーシートを敷いたりするのに良さそうな場所を探し始めることに。その際、俺はサクラと手を繋いで。これまでサクラとはたくさん手を繋いできたけど、今はお互いに水着姿だから結構ドキドキするのであった。

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