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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-

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186/202

第7話『真夏のお昼に2人きり』

 7月21日、火曜日。

 今日は朝からよく晴れており、最高気温は35度と猛暑日になる予報だ。昨日、関東地方は梅雨が明けたので、今年もいよいよ夏本番になったな。

 今日は俺もバイトなどの予定はなく、サクラも特に予定はない。なので、今はサクラの部屋で一緒に夏休みの課題をしている。

 今やっている課題の科目は化学基礎。サクラの希望だ。サクラ曰く、初日に終わらせた数Bほどではないけど、難しく思うことがあったからだという。

 化学基礎も数学Bと同じように1学期の総復習のプリントだ。たまにサクラの分からないところを教えながら、課題を進めていく。


「あっ、ダイちゃん。もう正午過ぎてる」

「本当だ」


 部屋の時計を見ると、時計の針が正午過ぎを指していた。集中していたから、もうお昼時になっていたか。


「じゃあ、お昼ご飯を作って食べるか」

「そうだね」


 今日は父さんは仕事、母さんは午前10時から午後4時まで近所にあるスーパーのパートで不在なため、自分達でお昼を作ることに。もちろん、両親がいるときも俺達が食事を担当したり、一緒に作ったりすることもある。


「サクラはお昼に何が食べたい?」

「そうだね……そうめんがいいな。冷たくてツルッと食べられるし」

「そうめんいいな。好きだし。夏らしいし」

「今日みたいな暑い日にはもってこいだよね。まあ、これまで涼しい部屋の中で課題していたけど」

「ははっ」


 サクラの言ったことが面白くて、つい声に出して笑ってしまった。ただ、そんな俺の反応が面白かったのか、サクラも「ふふっ」と声に出して笑っていて。去年の夏休みはサクラとの距離があったので、こういう何気ない会話の中でサクラと笑い合えることがとても嬉しい。


「お昼ご飯はそうめんにしよう」

「うんっ!」


 サクラの部屋を出て、1階に下りる。お昼になったから家の中は結構暑いなぁ。キッチンももちろん暑いので、さっそくエアコンを点ける。

 サクラと相談して、俺が麺担当、サクラが麺汁に入れる具材や薬味の担当になった。

 これから料理をするので、俺は青いエプロンを、サクラは桃色のエプロンを身につける。サクラのエプロン姿……本当に可愛いな。スラックスにノースリーブの縦ニットの服にもよく合っていて。


「どうしたの? 私のことをじっと見て」

「……今日もサクラのエプロン姿がとても可愛いと思ってさ」

「ふふっ、ありがとう、ダイちゃん。ダイちゃんもエプロン似合ってるよ」

「ありがとう」

「うんっ」


 ちゅっ、とサクラは俺の唇に軽くキスをして、冷蔵庫の中を確認し始める。キスしてくれたし、エプロン姿なのもあって普段よりも大人っぽくて、艶っぽさも感じられる。今は2人きりなのもあってドキドキする。

 俺は麺担当なので、IHコンロの下にある引き出しから鍋を取り出す。その鍋に水を入れ、IHで温め始める。

 温めている間に棚からそうめんを取り出す。今年もお中元にそうめんをたくさんもらったから、夏休み中には何度も食べることになりそうだ。

 サクラの方を見てみると……サクラはカニカマを裂いている。その他には……きゅうり、わかめ、ハム、長ネギが調理台に置かれている。そうめんの具材や薬味の定番だな。

 鍋の水が沸騰してきたので、サクラの横でそうめんを茹で始める。そうめんの箱に書いてある通りの時間でタイマーをセット。

 こうしてサクラと並んでキッチンに立っているの……何だかいいな。サクラは料理好きなので、楽しそうに具材や薬味を準備していて。そんなサクラの横顔も好きだ。あと、俺と目が合うと、サクラが微笑んでくれて。その微笑みも好きだ。

 ――ピピッ。

 タイマーが鳴ったので、茹でたそうめんを鍋からざるへと流し、水道水で締めていく。

 十分に冷えた後、棚から大きめのガラス皿を取り出し、そうめんを一口分の量を巻く形でよそっていく。

 そうめんを全てお皿に盛り付け、麺の冷たさが保たれるように氷をいくつか散らした。


「よし、麺完成」

「お疲れ様。具材と薬味も用意できたよ」

「サクラもお疲れ様」


 食卓にはきゅうり、わかめ、ハム、カニカマがそれぞれ入ったお皿と、ネギが乗った小皿が置かれていた。どれもそうめんと一緒に食べやすそうな形に切られている。

 俺はそうめんを盛り付けたガラス皿を置く。また、麺汁用のお椀と飲み物の麦茶を用意して、サクラと向かい合う形で食卓の椅子に座った。

 俺達はそれぞれ麺汁を作り、薬味のネギを入れる。


「じゃあ、食べるか」

「うんっ。いただきます!」

「いただきます」


 ガラス皿からそうめんを一口分掴み、麺汁につけて、

 ――ズズッ。

 と音を立てながら食べる。時間通りに茹でたから、そうめんにちゃんとコシがあって美味しいな。そうめんと麺汁の冷たさもたまらない。


「冷たくて美味しいな」

「美味しいね! そうめん食べると夏って感じがするね」

「そうだな。そうめんは冷たくして食べるし。あとはお中元によく届くっていうのもあるかな」

「ふふっ。うちもよく届いて、夏によく食べてた」


 そう言い、サクラは具材を麺汁に入れ、そうめんをもう一口。美味しいのか、ニコッと笑いながらモグモグ食べていて。可愛いな。

 サクラが用意してくれた具材をそれぞれ少しずつ入れ、俺はそうめんを食べる。……どの具材もそうめんや麺汁に合って美味しいな。


「サクラの用意してくれた具材もよく合っていて美味しいな」

「良かった。……こうして2人きりでお昼ご飯を食べていると、春休みに私がここに引っ越してきた頃を思い出すね」

「そうだな。俺がきつねうどんを作ったり、サクラがナポリタンを作ってくれたりしたな」

「そうだったね。……あの頃は一緒に住み始めていたけど、まだ距離があって。でも、この家でダイちゃんと一緒に住めることが嬉しくて。一緒に住んでいく中でダイちゃんの仲良くなっていけたらいいなって思ってた。もちろん、ダイちゃんが好きだから、いつかは恋人になれたなって」

「そうか。俺もあの頃は大好きなサクラとこの家で住めることが嬉しかったな。まずは、サクラと幼馴染として仲良くなろうって考えてた。サクラと一緒に暮らしているし、仲直りできて、恋人にもなれたからあの頃が遠い昔のことのように感じるよ。それまで距離が開いていた頃も」

「私もそう思う。……ダイちゃんと恋人になって、こうして2人きりでご飯を食べられて幸せだよ」


 サクラは俺を見つめながら持ち前の可愛い笑顔でそう言ってくれる。そのことにキュンとなって。


「俺も幸せだよ、サクラ」


 こうして2人で楽しくお昼を食べられることも。それを幸せだってサクラが言ってくれることも。


「ダイちゃんも同じ気持ちで嬉しいよ」


 と、サクラは言葉通りの嬉しそうな笑顔でそう言ってくれた。そのことで幸せな気持ちがさらに膨らんでいった。

 これからもサクラと一緒に楽しくご飯を食べられるように、サクラを大切にして毎日を楽しく過ごしていきたいな。

 それからもサクラと一緒にそうめんを楽しく食べた。幸せな気持ちの中で、そうめんも具材も完食した。

 食事の後片付けもサクラと一緒にやった。夏だし、水道水の冷たさが気持ち良く感じられるので、片付けは特に苦とは感じない。むしろ、サクラと2人で片付けをしたから楽しく思えるほどだった。


「後片付けもこれでOKだね」

「そうだな」

「この後は……何をしようか?」


 と、サクラが問いかけてくる。

 化学基礎の課題が途中だし、昼食を作って食べたのがいい気分転換になったから、課題の続きをするのもいいと思う。

 ただ、今は家にはサクラと俺しかいない。今は午後1時過ぎなので、母さんがパートから帰ってくるまではあと3時間近くある。それに、夏休み初日にサクラと夏休み中はイチャイチャもしようねと言ったのもあるから、サクラと恋人らしいことをしたい。


「2人きりだし……したいな。サクラと……え、えっち」


 サクラを見つめながらそう言った。

 サクラとは何度も肌を重ねているけど、したいって言葉にすると凄くドキドキするな。冷たいそうめんを食べて冷やされた体が一気に熱くなった。

 サクラは……頬を赤くして、


「うん。いいよ。私もね……えっちしたいなって思っていたんだ。優子さんが日中パートで、ダイちゃんと2人きりでいられるって分かってから。まあ、優子さんと徹さんもいる夜遅くにすることが多いけどね。……午前中からダイちゃんと2人きりの時間を過ごしていて、えっちしたい気持ちが膨らんできてたところだよ」


 可愛らしい笑顔でそう言ってくれた。サクラが快諾してくれて嬉しい気持ちになる。


「だから、ダイちゃんからしたいって誘ってくれて嬉しいよ」

「そっか。……今度の日曜日は海水浴だから、サクラの体に痕が付かないように気をつけないと」

「そうだね。私も気をつけなきゃ。そういったことを気遣ってくれるところも……大好き」


 笑顔でそう言うと、サクラは俺のことをぎゅっと抱きしめ、その流れでキスをした。




 それからはサクラの部屋に行き、主にベッドの中で肌を重ねた。

 これまで、肌を重ねるときは夜遅くが多く、日中にするのは学校から帰ってきて両親がいないときくらい。だから、数えるほどで。

 夜遅くにするときよりも、サクラが持っている甘い匂いが濃く感じられて。そのことに興奮する。

 また、サクラがリードし、積極的に動くときがあって。そんなサクラも可愛くて、ドキッとさせられる。

 肌を重ねる中でたくさん好きだと伝え合って、唇を中心にたくさんキスし合った。




「……気持ち良かったね、ダイちゃん」

「そうだな、サクラ」


 何度も肌を重ねた後、俺とサクラは全裸のまま寄り添っている。右腕をサクラの背中に回して、そっと抱いている体勢だ。

 たくさん体を動かしたのもあり、エアコンの涼しい風がとても気持ちいい。ただ、触れている箇所からサクラの柔らかさと共に伝わってくる温もりはもっと気持ち良くて。


「これまでに明るいうちにしたのは数えられるくらいだけど、結構いいね」

「そうだな」

「ただ、夜にするのとは違って、お風呂から入ってすぐじゃないし、涼しい部屋の中だけど汗もちょっと掻いたから……汗臭くなかった? 大丈夫? 抱きしめ合ったりして体が密着するときもあったし」

「汗臭くなかったぞ。夜にするときよりも、サクラの甘い匂いが濃く感じられていいなって思ったくらいだ。サクラの汗の匂いもいいなって思っているし」

「そっか。良かった」


 ほっと胸を撫で下ろし、笑顔を見せてくれるサクラ。

 以前、梅雨の時期に蒸し暑い中で登校したとき、汗ばむからサクラに匂いはどうか訊かれたことがあったな。そのときはいい匂いだと答えた。ただ、今回は裸だし、サクラの言う通り体が密着したり、汗を掻いたりした。だから、以前訊いたときよりも匂いをはっきりと感じやすくて、自分の匂いが俺にどう思われているのか再び気になったのだろう。そして、俺に自分の匂いが好きだと言われて嬉しくなったのだと思う。

 サクラが匂いのことを訊いてきたから、俺も自分の匂いがどう思われているか気になってきたな。


「サクラ。俺の匂いは……大丈夫だったか? いつもよりはっきりと感じやすかっただろうから」

「大丈夫だよ。私も汗を含めてダイちゃんの匂いが好きだから」

「それなら良かった」


 ほっとした。あと、恋人に匂いが好きだと言ってもらえて嬉しい。サクラはきっとこういう感情だったのだろう。

 俺の匂いが好きだと言ったのもあり、サクラは俺の胸に顔を埋めて、頭をスリスリしてくる。可愛いな。あと、肌に直接触れているから、スリスリされて気持ちがいい。そう思いつつ、サクラの頭を優しく撫でる。

 少しの間撫でると、サクラはスリスリを止めて俺の胸から顔を離す。俺の匂いを堪能できたからか、サクラは満足そうな笑顔だ。


「ダイちゃんも私の胸に顔を埋めたり、スリスリしたりして匂いを堪能する?」

「……じゃあ、顔を埋めようかな」

「うんっ。……どうぞ」


 俺はサクラの胸にそっと顔を埋める。

 俺と一緒に体をたくさん動かした後だから、汗混じりのサクラの甘い匂いを感じる。やっぱり好きだなぁ。強めの温もりと胸の柔らかさを顔に受けているので、とても心地良く感じる。


「ダイちゃん、どうかな?」

「いい匂いだよ。好きだな。あと、サクラの胸の柔らかさもいい」

「良かった。あと、胸の感想も言ってくれて嬉しい」

「……サクラの胸が好きだからな」

「そう言ってくれて嬉しいよ」


 ふふっ、とサクラの笑い声が聞こえる中、頭に優しい感触が。きっと、サクラが頭を撫でてくれているのだろう。それもまた気持ち良くて。幸せだ。さっき、サクラもこういう気持ちだったのだろうか。

 それから少しして、俺はサクラの胸から顔を離した。すると、目の前には優しい笑顔で俺を見つめているサクラがいる。


「ダイちゃんと一緒にお昼を食べて、えっちして。去年の夏休みよりも楽しく過ごせているなって思うよ」

「俺もだよ。去年はまだ距離があったから、サクラと一緒にいられるのが本当に嬉しくて、楽しいなって思っているし。サクラとえっちできて幸せだ」

「私も幸せだよ。こういう時間を過ごして、ダイちゃんのことがもっと好きになったよ」


 サクラは恍惚とした笑顔でそう言ってくれる。幸せとか好きという言葉もあってキュンとさせられる。


「俺もサクラのことがもっと好きになったぞ」

「嬉しいな。……これからも、今日みたいに日中に家で2人きりのときは……たまにでもいいからえっちしようか」

「ああ、そうだな」

「うんっ」


 サクラはニコッと笑うと、俺にキスしてきた。約束のキスだろうか。肌を重ねる中でサクラとたくさんキスしたけど、キスは何回してもいいものだなって思う。

 夏休みはまだ始まったばかりだ。夏休みの間に、日中にサクラと家で2人きりでいられる日は何日もあると思う。そういう日は今日のように過ごしていきたいな。

 ちなみに、午前中に途中までやっていた化学基礎の課題は、この後ちゃんと終わらせた。

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