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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-

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181/202

第2話『球技大会-後編-』

 うちのクラスの女子ドッジボールの初戦が終わり、参加した生徒達がコートから出てきた。勝利できたのもあり、みんな嬉しそうな表情だ。

 俺と杏奈と羽柴と流川先生は、こちら向かってきたサクラと一紗と小泉さんにハイタッチした。


「おめでとう! 3人とも良かったぞ! 特にサクラは」

「女子も勝てて嬉しいぜ! おめでとう!」

「おめでとうございます! 文香先輩と青葉先輩は相手を何人もアウトにしてかっこよかったですし、一紗先輩は見事な逃げっぷりでしたね!」

「男女ともにいいスタートになったね! 先生嬉しいよ!」


 と、サクラ達に向かって勝利を祝う言葉を改めて送った。


「ありがとうございます! ダイちゃん達が応援してくれたおかげですっ。あとは、青葉ちゃんが考えたジャンプボールの作戦が上手くいったのが良かったのかなって」

「あれで幸先のいいスタートを切れたもんね。男子がジャンプボールのことで作戦を立てたって聞いたから、あたしがジャンプボールをして、文香にボールを渡すって決めたんです」


 やっぱり、試合前にジャンプボールについて作戦を決めていたのか。それもあって、ジャンプボールから素早く攻撃に移ることができたのだろう。


「あとは文香の言う通り、みんなの応援が力になりました。ありがとうございます」

「私は逃げることに徹しましたけど、応援の声は励みになりました。ありがとうございます」


 俺達の応援がサクラ達の力になったようで嬉しい。時間さえ大丈夫であれば、この後の試合もしっかりと応援していきたい。

 サクラは俺の目の前に立ち、


「ダイちゃん。ありがとね。おまじないのお礼だよ」


 と言い、俺にキスしてきた。

 ドッジボールで体を動かした後だから、俺がおまじないをかけたときよりもサクラの唇から伝わる熱が強くて。

 数秒ほどしてサクラの方から唇を離す。すると、目の前には俺を見つめながらニッコリと笑うサクラがいた。


「この後の試合でもおまじないかけてね」


 上目遣いで俺を見つめ、サクラは甘い声でそう言ってきた。そのことにキュンときて。本当に可愛いな、俺の彼女。


「分かった。サクラも、この後の試合で俺におまじないをかけてくれよ」

「うんっ」


 サクラはニコッと笑って快諾してくれた。

 俺はサクラと一紗に、羽柴は小泉さんに預かっていた荷物を渡す。すると、3人ともすぐに持参した水筒で水分補給をしていた。ちなみに、サクラは俺と同じスポーツドリンクだ。試合で体を動かしたからか、3人とも美味しそうに飲んでいた。

 流川先生は他の競技の様子を見に行くといい、校舎の方へ向かっていった。その際、優しい笑顔で杏奈に「女子バスケ頑張ってね」とエールを送って。

 次の女子ドッジボールの第5試合に杏奈のクラスの1年5組が出場するので、俺達は6人で1年5組の応援をした。自分のクラスだし、チームメイトに友達が何人もいるのもあって、杏奈は今までよりも一生懸命に応援していた。

 シーソーゲームだったけど、1年5組は最終的に2人差で勝利した。そのことに杏奈はとても喜んでいた。


「では、体育館に移動しましょうか。女子バスケは第7試合で、試合開始まであと少しですから」

「そうだな。男子ドッジボールの次の試合まで時間があるから、応援しに行くよ」

「私達もね、杏奈ちゃん。次の試合までまだまだ時間あるし」

「ありがとうございますっ」


 俺達が応援しに行くので、杏奈はいつもの可愛い笑顔でお礼を言った。

 2年3組と杏奈のいる1年5組の昇降口のある校舎が違うので、一旦別れて、バスケットボールの試合会場である体育館の入口前で待ち合わせをすることに。

 俺達5人は第1教室棟の中に入り、昇降口で外用のシューズから上履きに履き替える。

 第1教室棟を出て体育館へ向かうと、待ち合わせ場所である入口前にはシューズ入れと思われる袋を持った杏奈の姿が。

 杏奈ちゃん、とサクラが呼ぶと、杏奈はこちらに向かって軽く頭を下げて、笑顔で手を振ってきた。


「杏奈ちゃん、お待たせ」

「いえいえ。先輩方が応援しに来てくれて嬉しいです!」

「試合頑張ってね、杏奈ちゃん!」

「チームのみんなと一緒に頑張れよ、杏奈。サクラ達と一緒に応援してる」

「頑張ってね、杏奈さん。私達を応援してくれたし、そのお礼も込めていっぱい応援するわ」

「杏奈ちゃん、頑張ってね!」

「頑張れ、小鳥遊」

「はいっ!」


 俺達のエールに対して、杏奈は笑顔で元気良く返事した。俺達5人が杏奈とグータッチして、サクラと一紗と小泉さんが杏奈の頭を撫でると、杏奈は「えへへっ」と声に出して笑っていて。この様子なら、試合で活躍できそうだ。

 体育館の中に入ると、既に男女共にバスケの第6試合が始まっている。なので、杏奈とはコートの近くで別れ、俺達はコートがよく見える2階のギャラリーへ向かう。ちなみに、杏奈はクラスメイトの友達に荷物を預けたとのこと。

 男女ともに試合が行なわれているからだろうか。それとも、体育館はエアコンがかかっていて涼しいからなのか。ギャラリーには結構な数の生徒がいる。

 俺達は女子の試合のコートがよく見える場所まで移動する。


「バスケも盛り上がってるね、ダイちゃん」

「ああ。男女ともに試合やってるもんな」

「バスケも人気だもんな。それにしても、体育館は涼しくて快適だぜ」

「そうね、羽柴君。外は暑かったし、試合もしたから、その疲れが取れていくわ」

「快適だよね。杏奈ちゃんの応援はもちろんするけど、今後の試合のためにも、涼しいこの場所で休憩しよう」


 小泉さんのその言葉に俺達4人は頷いた。次の試合が始まる直前まで、体育館など涼しい場所にいた方がいいかもしれないな。あと、この後のことを考えて休憩しようと言うところが運動をやっている小泉さんらしいと思う。

 それから程なくしてバスケの第6試合が終了。杏奈達がコートに出てきた。

 杏奈を含め5人の生徒が緑のゼッケンを身につけており、杏奈はゼッケン7番だ。緑のゼッケンを身につけた子の中には、背がとても高い子もいれば、俺がこれまでにバイト先で何度も接客したことのある子もいる。接客したことのある子は杏奈の友達だな。友達もいれば杏奈もやりやすそうだ。

 ちなみに、相手チームと思われる女子生徒達は黄色いゼッケンを身につけている。

 杏奈がコートに出てきたので、俺達は「頑張れ」と応援する。その声が聞こえたのか、杏奈はこちらに振り向き、笑顔で大きく手を振っていた。可愛いな。

 両チームの生徒はセンターライン付近で向かい合う形で立ち、


「これより、1年1組対1年5組の試合を始めます」


 と、審判を務める女性教師が言った。相手は同じく1年生チームか。

 こうして見ると、杏奈は両チームの中で背が低い方だ。一般的にバスケは背の高い方が有利な点の多い競技。杏奈がどういった形で活躍するだろうか。杏奈は運動が苦手だとは聞いてないけど。

 両チームの選手がそれぞれのポジションに散らばっていく。

 また、ドッジボールと同じように、両チーム1人ずつがコートの真ん中に残り、向かい合って立っている。おそらくジャンプボールの形で試合が始めるのだろう。両チームともチームの中で一番背の高い生徒が残っている。杏奈のいる1年5組チームはゼッケン4番の生徒だ。

 ――ピーッ!

 ホイッスルが鳴り、審判の女性教師がボールを高く上げる。

 センターラインにいる2人の生徒はその場でジャンプし、


「明子!」


 ゼッケン4番の生徒がボールに触れ、明子と呼ばれるゼッケン5番の生徒に向かってボールを弾き飛ばす。その声に反応し、ゼッケン5番の生徒はボールをキャッチする。5番の生徒は杏奈が中学生のときから一緒にマスバーガー来たり、バイト中の杏奈が接客したことのある友達だ。


「杏奈!」


 ゼッケン5番の生徒から、杏奈に向かってボールがパスされる。

 杏奈にパスが通り、相手チームのゴールに向かって一気にドリブルする。なかなかのスピードだ。運動が結構得意なのかもしれない。5番の生徒は杏奈の友達だし、杏奈の動きの良さを知っているからパスを送ったのかもしれないな。


「奏ちゃん!」


 杏奈はそう言うと、ジャンプボールを担当したゼッケン4番の生徒に向かってパス。

 フリースローラインのあたりにいる4番の生徒は杏奈からのパスを受け取り、体をゴールの方に向けてシュートを放った。

 ボールはゴールに向かって飛んでいき、吸い込まれるようにしてネットをくぐっていった!

 ――ピーッ!

 2対0。

 1年5組が先制点を挙げた!


「先制点を取ったね!」

「そうだね、文香! 先制点を取れたのは大きいよ!」

「杏奈さんも素晴らしいプレーだわ!」

「見事なアシストだったよな!」

「そうだな! 杏奈もみんなもいいぞ!」


 仲良くしている後輩が出場しているのもあり、自分のクラスのことのように嬉しい気持ちになる。同じ気持ちなのか、サクラ達も嬉しそうな様子に。

 コートを見ると、1年5組の生徒がシュートを決めた奏という生徒を中心にハイタッチしている。杏奈も嬉しそうにやっていて。

 その後も杏奈のいる1年5組を応援していく。

 どうやら、4組の攻撃の要は、奏と呼ばれているゼッケン4番の生徒のようだ。彼女がシュートできるようにパスを回したり、ドリブルしたりしていき、4番の生徒がシュートを量産し、得点していく。

 ただ、4番の生徒は背が高く、得点力もあることから相手からのマークも厳しくなる。その際は杏奈など他の生徒達がゴールまで迫り、杏奈がシュートして得点することも。そのときは、


「杏奈ちゃん凄いよ!」

「決めたね! 杏奈ちゃん!」

「ナイスよ! 杏奈さん!」


 と、女子3人がかなり興奮した様子になっていた。そんな3人がとても可愛くて。

 ディフェンスのときは基本的にマンツーマン。相手のパスやシュートをブロックできたり、リバウンドしたボールを拾えたりしたら攻撃に転じるスタイルだ。

 1年5組は背の高いゼッケン4番の生徒が得点を重ね、ディフェンスでも相手の攻撃をブロックするのもあり、安定した試合運びとなり、


 ――ピーッ!

「そこまで! 16対6で1年5組の勝利です!」


 相手にリードを許すことなく試合終了。1年5組は勝利することができた!

 1年生だからもちろん球技大会で初めての試合。その試合に勝てたのもあり、1年5組のみんなはとても喜んだ様子だ。杏奈はチームメイトとハイタッチしたり、明子と呼ばれる友達の女子と抱きしめ合ったりしていた。みんなの様子を見ると嬉しくなる。


「杏奈ちゃん! みんな! おめでとう!」

「初勝利おめでとう! いい試合だったよ!」

「素晴らしかったわ!」

「杏奈! みんな! おめでとう!」

「初戦突破おめでとう!」


 俺達5人は勝利した1年5組のメンバーに向かってそんな言葉を送った。

 俺達の声が聞こえたのか、杏奈をはじめとした4組のメンバーは笑顔でこちらに向き、


『ありがとうございます!』


 と元気良くお礼を言ってくれた。後輩達からお礼を言われるのっていいもんだな。

 試合が終わったので両チームの選手はコートから出て行った。

 それから程なくして、ゼッケンを脱いで体操着姿になった杏奈がギャラリーに現れた。体育館は涼しいけど、試合中はよく動いていたからか、杏奈の嬉しそうな笑顔が頬を中心にほんのりと赤らんでいる。


「勝ちました!」

「勝ったね! おめでとう、杏奈ちゃん!」

「杏奈さんもドリブルやパスをしたり、シュートを決めたり大活躍だったわね!」

「いい動きをしていたよ、杏奈ちゃん」

「小鳥遊があんなに動けるとはな。凄かったぜ」

「ゴールを決められたし、ゴールに繋がるプレーも何回かあったな。よく頑張ったな、杏奈。初戦勝利、おめでとう!」

「ありがとうございますっ! 先輩方の応援が力になりました!」


 杏奈はとっても嬉しそうな笑顔でお礼を言ってくれた。その笑顔は今まででも指折りに可愛い笑顔だ。サクラと一紗と小泉さんが頭を撫でたり、ポンポンと優しく叩いたりすると「えへへっ」と笑って。

 これで、6人全員初戦を突破できたか。いい調子だな。この調子で、この後の試合を頑張って、サクラ達のことを応援していこう。




 その後も、俺達はそれぞれの種目で戦い、時間が大丈夫なら応援していった。

 その結果、サクラと一紗と小泉さんが出場する女子ドッジボールはベスト8。杏奈が出場する1年5組の女子バスケットボールもベスト8。そして、俺と羽柴が出場する男子バスケットボールは、準決勝では3年生のチームに惜敗してしまったけど、


「そこまで! 2年3組は……残り4人。2年1組は……残り1人。よって、3位決定戦は2年3組の勝利です!」


 3位決定戦で勝利。そのため、2年3組は3位になった! また、これがうちのクラスでは最高成績となった。


「やったな、速水! 3位だぜ3位!」

「ああ! 勝って締めくくれたな!」


 俺はとても喜んでいる羽柴とハイタッチして、抱擁を熱く交わした。


「やったね、ダイちゃん、羽柴君、みんな!」

「3位凄いよ! おめでとう!」

「3位おめでとう! 最後まで大輝君かっこよかったわ!」

「先輩方、おめでとうございますっ!」

「おめでとう! 先生、とっても嬉しいよ!」


 サクラ達が男子ドッジボールを称賛する言葉を送ってくれる。3位決定戦なのもあって、多くのクラスメイトが応援しに来てくれ「おめでとう!」と言ってくれた。

 去年は初戦敗退だったけど、今年は3位になれるとは。嬉しいな。羽柴をはじめとした一緒に戦ったチームメイトはもちろん、みんなの応援のおかげだな。あとは、個人的にはサクラという恋人ができて、毎試合おまじないをかけてくれたおかげもあるかな。

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