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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
特別編6-星空に願う夏の夜編-

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172/202

第1話『キスマーク』

 定期試験前の部活動禁止期間なのもあり、夜になるとサクラと一緒に彼女の部屋で試験勉強をする。ちなみに、勉強する場所は、俺の部屋と毎日交互に変えることが多い。

 サクラが苦手意識を持っている数学Ⅱの問題集の試験範囲を一緒に取り組み、たまにサクラからの質問に解説していった。サクラは苦手意識があるけど、基礎的な内容はできているから、この調子で勉強すれば赤点にはならないだろう。

 一段落し、夕方には一紗や杏奈達とも勉強会をしたから、サクラは漫画、俺はラノベを読んで長めの休憩を取ることに。

 サクラはベッドで横に、俺はベッドを背もたれにしてクッションに座りながら読む。

 普段からも、こうして同じ部屋にいるけど、別々のことをすることはある。サクラと一緒に同じことをするのも好きだけど、個人的には今のような時間も結構好きだ。


「ふぅ……」


 キリのいいところまで読み終わったので、俺はアイスコーヒーを一口飲む。好きなことをしているときに飲むコーヒーは凄く美味しい。


「あぁ、良かったぁ」


 背後から、サクラの感嘆の声が聞こえてきた。読んでいる少女漫画が凄く良かったのだろうか。

 ベッドの方を振り返ると、サクラはうっとりとした様子になっている。いつもならドキッとするけど、今は漫画を持っているし、ピンクの寝間着姿なので可愛い印象が強い。


「その漫画……とても良かったのか?」

「うんっ! 恋愛系の少女漫画なんだけどね。主人公の女の子が意中の男の子と結ばれて、イチャイチャするシーンにキュンとして」

「そうなのか。だから、うっとりとした様子になっているんだ」

「うんっ」


 うっとりとしたまま返事をするサクラ。相当キュンとしたようだ。


「ねえ、ダイちゃん」

「うん?」

「この漫画を見て、ダイちゃんとやりたいことができたの」

「へえ、どんなことだ?」

「……キ、キスマークを付けてほしいなって」


 頬を中心に顔を赤くしながらそう言うと、サクラは俺をチラチラと見てそう言ってくる。エアコンがかかっているし、アイスコーヒーも飲んだから、体はそれなりに冷やされていたけど、今のサクラの言葉で一瞬にして熱くなった。顔も熱いから、サクラのように赤くなっているんだろうな。


「キ、キスマークか」

「うんっ。この漫画で、2人が付き合うことになった直後に、主人公の子が恋人の男の子からキスマークを付けられるシーンがあってね」


 そう言うと、サクラはベッドから下りてきて、漫画をペラペラとめくっている。きっと、今言ったシーンを俺に見せてくれるのだろう。

 ここ、と言うと、サクラは漫画を開いたまま俺に渡してくる。

 サクラが開いたページを見てみると、制服姿の男子が制服姿の女子の胸元に『ちゅーっ』と効果音が付くほどにキスしている。そして、男子が唇を離すと、キスした箇所が赤くなっており、


『俺の女っていう証を刻みたかったんだよ』


 と、男子がちょっと照れくさそうにそう言う。その一言に女子が『きゅーんっ!』とときめく……というシーンが描かれていた。


「……なるほど。この2ページを見て、サクラは俺にキスマークを付けてほしいと思ったんだな」

「うん。ダイちゃんはお風呂に入っているときとか、ベッドでえっちするときとかに私の体にキスするけど、優しくしてくれるからキスマークが付かないじゃない。だから、一度、この漫画みたいに強くキスして、私の体にキスマークを付けてほしいなって」

「なるほどな」


 サクラの体は白くて綺麗だし、高校では水泳の授業がある。だから、体にキスするときはキスマークが付かないよう優しくするように心がけている。それもあって、サクラにキスマークを付けたことが一度もなかった。

 あとは、男子キャラの『俺の女っていう証を刻みたかったんだよ』っていうセリフもあって、俺にキスマークを付けてほしいと思ったのかもしれない。


「分かった。じゃあ……サクラの体にキスマークを付けてみるか」

「うんっ!」


 サクラ、凄く嬉しそうだな。恋愛漫画だし、登場人物に自分と俺を重ねて読んでいたのかもしれないな。


「サクラはどこか付けてほしいところってある?」

「この漫画を読んだのもあるけど……やっぱり胸元かな。ここなら、制服でも水泳の授業で着るスクール水着でも隠れると思うから。私服でも隠せるだろうし」

「分かった。じゃあ、胸元にキスするか」

「うんっ」


 そう言うと、サクラは寝間着のボタンを外して、上半身のみ下着姿になる。淡い水色の下着なので爽やかでありつつも、同時に艶やかな印象を抱かせる。Dカップの胸による谷間もしっかりできて素晴らしい光景だ。ボディーソープの甘い匂いが香ってくるのがまたいい。


「そんなに胸をじっと見られるとドキドキしちゃうな」

「ご、ごめん。胸元にキスマークを付けるからじっと見ちゃって」

「ふふっ」


 頬が赤くなっているけど、サクラの顔には笑みが浮かんでいる。嫌がっているようではなくて良かった。


「どこら辺に付けようか。リクエストはある?」

「そうだね……じゃあ、左の胸元にしてもらおうかな。心臓により近いから、こっちの方がよりダイちゃんのものになった感覚になれそう」


 ここら辺かな、とサクラは右手の人差し指で左胸を指し示す。指し示している場所はしっかりと膨らんでいるので、そこは胸元ではなく胸なのでは。そう思いつつも、


「分かったよ」


 と一言言った。

 俺はサクラの胸元にゆっくりと顔を近づけ、サクラが指定した左の胸元に唇をそっと触れさせる。その瞬間、サクラの体がピクッと小刻みに震えた。胸元なので唇に触れた感覚も柔らかくていい。

 いつも体にキスするときはこういった感じだ。ただ、今回はキスマークを付けるのでここから、

 ――ちゅーっ。

 と、サクラの胸元を吸っていく。


「んんっ。吸われてるっ……」


 サクラは甘い声色でそう呟く。事実しか呟いていないのに凄くドキッとして。痛みがないといいなと思いつつ、吸う力を強くした。

 時折「あっ」という甘い声を漏らしたり、体をピクッと震わせたりする反応が可愛いと思いつつ、何度か同じ場所を強めに吸った。


「……付いた」


 数回ほど吸い、サクラの胸元には赤いキスマークが付いた。さっきまではなかった白い柔肌に赤い痕が付くと、何だかキュンとなるな。

 俺が顔を離すと、サクラは自分の胸元を確認する。俺によってキスマークが付けられたからか、サクラは嬉しそうな様子に。


「えへへっ、ダイちゃんに赤いキスマーク付けてもらっちゃった。いい感じだね。ありがとう、ダイちゃん」

「いえいえ。気に入ってもらえて良かった」

「……あと、ちゅーって吸われる感覚……悪くなかったよ」

「そ、そうか」


 強めに吸った自覚があるので、悪くなかったと言ってもらえてほっとした。

 俺にキスマークを付けてもらえたのが嬉しかったのだろうか。サクラは自分のスマホで自撮り写真を撮っていた。可愛いな。


「よし、初キスマーク記念写真撮れた」

「……そうか」

「ねえ、ダイちゃん。キスマークを付けられて、自分の体に付いているキスマークを見たら……ダイちゃんにキスマーク付けたくなっちゃった。……いい?」


 顔の赤みを強くしながらそう問いかけると、サクラは上目遣いで俺のことを見てくる。それが凄く可愛いし、今も上半身は下着姿だからドキドキさせられて。

 俺がやったことを自分もしてみたい。俺の体に自分の痕を刻みたい。そんな思いがあって、サクラは俺にキスマークを付けたいと言っているのだろう。


「ああ。いいよ、サクラ」

「ありがとう、ダイちゃん!」


 えへへっ、とサクラは嬉しそうに笑う。


「どこにキスマークを付けようか。水泳の授業があるから、そのときでも隠しやすい場所がいいよね?」

「そういう場所の方がいいな。授業で着る水着のことを考えると……太ももがいいかな。サクラには左の胸元に付けたから、俺も左で」

「左の太ももだね。分かった。じゃあ、寝間着のスラックスを脱いで」

「分かった」


 サクラの指示通り、俺は寝間着のスラックスを脱ぐ。サクラとは一緒にお風呂に入るし、たまにベッドの中で裸を見せ合うけど、これからキスマークを付けられたり、サクラが未だに上半身が下着姿なのもあったりして、ちょっと恥ずかしい気分に。

 俺が寝間着のズボンを脱ぐと、サクラは俺のすぐ左側にうつぶせの状態になる。そのことで、サクラのすぐ目の前には俺の左の太ももがある……という状態に。


「こうして間近で見ると、ダイちゃんの脚って程良く筋肉が付いていていいなって思う」

「嬉しいな。部活はやっていないけど、バイト中は立って仕事をするからかな。それで脚の筋肉が鍛えられるのかも」

「それはありそうだね。……じゃあ、付けるよ」

「ああ」


 サクラは俺の左脚に両手を添えて、左の太ももに唇を触れさせる。肌を重ねるときに、脚にキスされることはあるけど、これからキスマークを付けるから、今までよりもサクラの唇から熱を強く感じた。

 ――ちゅーっ。

 ちょっと音を立てながら、サクラは俺の太ももを吸い始める。吸われるのは初めてなのもあり、独特の感覚が。痛みはないから、これならキスマークを付けられるまで吸われ続けても大丈夫そうだ。場所は違うけど、さっきもサクラはこういう感覚だったのかな。

 あと、場所は太ももだけど、俺の体を吸い付けているサクラの姿は艶めかしい。たまに唇を離して、また吸い始める瞬間は特に。そんなサクラを見ているとドキドキして、脚を含めて体が熱くなってくる。この熱がサクラにも伝わっているかもしれないと思うと、ちょっと恥ずかしい気持ちになる。


「……付いた」


 数回ほど吸って、サクラは嬉しそうに言った。

 サクラが何度も吸い付けた箇所を見てみると……そこには赤くくっきりとキスマークが付いていた。それを見ると、心臓の鼓動が跳ねて、そこから温もりが全身へ広がっていくのが分かった。

 自分の体に、恋人のサクラから刻まれた痕がある。その事実が幸せな気持ちにさせてくれる。


「いいな。サクラ、ありがとう」

「いえいえ」


 サクラはニッコリと笑ってそう言った。


「初キスマークを付けた記念に、太ももの写真撮ってもいい?」

「ああ、いいぞ」

「さっきの私と写真と一緒にLIMEで送るよ」

「ありがとう」


 その後、サクラは自分のスマホで、キスマークを付けた左の太ももの写真を撮った。俺の顔にスマホが向けられているわけではないけど、ちょっと恥ずかしさを感じた。

 ――プルルッ。

 ローテーブルに置いてある俺のスマホが鳴る。

 さっそく確認してみると、サクラからLIMEを通じて写真が送られたと通知が。その通知をタップすると、サクラとのトーク画面が開かれ、胸元にキスマークが付いた自撮り写真と、俺の太ももの写真が表示された。写真で見るキスマークもいいなと思いつつ、2枚の写真をスマホに保存した。


「ありがとう、サクラ」


 お礼を言って、サクラの唇にキスする。互いにキスマークを付けた後だから、いつもよりもサクラの唇が熱く感じられた。数秒ほどして唇を離すと、サクラは至近距離から可愛い笑顔を見せてくれた。

 予想外の休憩になったけど、サクラとの距離がより縮まった時間になったな。

 それから程なくして、俺達は試験勉強を再開するのであった。

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