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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
続編-ゴールデンウィーク編-

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138/202

エピローグ『連休の終わり』

 5月6日、水曜日。

 とてもいい気持ちの中で目が覚めた。どんな夢を見たのかは忘れてしまったけど、スッキリとしているので、いい夢を見られたのだと思っておこう。

 カーテン越しに陽の光が届いているので、部屋の中は薄明るくなっている。部屋の時計を見ると、今は午前6時半過ぎか。あんなに体を動かしたのに、結構早い時間に起きられたな。


「ダイちゃん……」


 サクラの声が聞こえたのでそちらを見てみると、サクラは昨日寝たときと同じように、俺の左腕を抱きしめながら気持ち良さそうに寝ている。そして、両脚を俺の脚に絡ませている。


「綺麗だな」


 薄明るい状態でも、サクラの肌が白くて綺麗なのがよく分かる。一糸纏わぬサクラの姿を見ると、昨日の夜にしたことが本当だったのだと実感する。あのときはとても気持ち良くて、幸せな時間だったな。

 寝ているサクラの頭を優しく撫でて、額にキスする。すると、サクラは「えへへっ」と笑い、


「ダイちゃん。赤ちゃん産まれたよ……」

「……赤ちゃんか」


 昨日の夜に初めて肌を重ねたから、そういう夢を見ているのかな。サクラと俺の間に産まれる子供はどんな感じだろうか。


「これで30人目だよ」

「凄く頑張ってるな」


 30人ってことは、野球はもちろんだけど、サッカーも子供達だけでできる。あと、ラグビーは1チーム15人だったはずだからラグビーもできるのか。すげえ。

 ただ、実際に30人も子供が産まれたら、子育てはもちろんだけど、経済的にも物凄く大変そうだ。30人目が産まれたってことは、上の子供達は何人か社会人になっているだろうな。そういった子供達から金銭的に援助を受けていれば何とかなる……ものなのかな?

 あと、サクラが見ている夢の俺達は何歳なんだろう。毎年産まれて、双子がいたとしてもそれなりの年齢になっていそうだ。


「うんっ……」


 サクラはゆっくりと目を開ける。俺と目が合うと柔らかい笑みを浮かべる。


「おはよう、ダイちゃん」

「おはよう、サクラ。起こしちゃったかな。頭を撫でて額にキスしたから」

「ううん、そんなことないよ。とてもいい目覚めだし」

「それなら良かった」

「……何だか、とてもいい夢を見た気がする。でも、どんな夢なのか忘れちゃった」

「ついさっきまで寝言言っていたぞ。でも、目を覚ますと忘れちゃうことって多いよな」

「そうだね。ちなみに、どんな寝言を言っていたの?」

「俺との間に30人目の子供が産まれたって」

「それは凄いね! ダイちゃんも私も頑張ったなぁ」


 あははっ、とサクラは快活に笑う。どんな雰囲気の子供なのか訊いてみたかったけど、夢自体を忘れているから分からないか。

 少しすると、サクラの笑い声が止まり、じっと俺の体を見てくる。そして、ほっとした様子に。


「どうした? サクラ」

「……ダイちゃんが裸だから、昨日の夜のことが本当だったんだって思えて。ダイちゃんと最後までするのは夢だったし、昨日の夜はあまりにも幸せだったから、本当は夢だったんじゃないかって思ってさ」

「そっか。俺もさっき同じように思って……サクラの綺麗な体を見て、本当のことだって分かったんだ。それが嬉しい」

「そうだったんだね」


 そう言うと、サクラは俺の左腕の抱擁を解く。その流れで、サクラは俺のことを抱き寄せて俺の顔を自分の胸に埋めさせる。


「サ、サクラ?」

「……私も昨日のことが本当だって分かって嬉しいから」


 その言葉の直後、脳天付近に優しい感触が。きっと、サクラが俺の頭を撫でてくれているのだろう。

 それにしても、直に触れているからかサクラの胸……凄く柔らかいな。付き合い始めた翌日に寝間着越しの胸に顔を埋められたけど、あのときと比べたら段違いだ。温かくて、とてもいい匂いもする。


「……私の胸はどう?」

「とてもいいよ。ドキドキもするけど、安心もできる」

「良かった。一紗ちゃんと杏奈ちゃんが泊まりに来た日にマッサージしてもらったけど、あれ以上に昨日の方がバストアップ効果ありそう。その……色々なことをしてくれたから」

「そ、そうか。胸が大きくなる手助けになれば幸いだ」

「ふふっ」


 もし大きくなったら、今以上に柔らかく感じられるのだろうか。サクラに協力を求められれば、恋人として喜んで応じたいと思う。

 サクラの胸が気持ちいいから、段々と眠くなってくる。ただ、サクラも起きたし、このまま眠りに落ちるのがもったいない気持ちもある。


「ねえ、ダイちゃん。これからシャワーを浴びたいなって思うんだけど、一緒に浴びない?」

「ああ、いいぞ」


 そう言って、サクラの胸から顔を離して、サクラの顔を見る。

 すると、サクラはニッコリと笑って、一度頷いた。


「ありがとう。……その前に、おはようのキスをしてもいいかな?」

「そういえば、まだしていなかったな。いいよ、サクラ」

「ありがとう。……おはよう」


 サクラは嬉しそうな笑みを浮かべて、俺におはようのキスをしてきた。昨日の夜にサクラとたくさんキスしたけど、唇が重なった瞬間にサクラとのキスはいいなぁと思える。気づけば、両手をサクラの背中に回していたのであった。




 連休最終日の予定は特に決まっていない。

 明日提出する課題は全て終わっており、特に今日中にしなければならないこともない。

 ただ、今出ている課題は全て終わらせようとサクラが提案してきた。連休明けの明日からバイトも入っているし、今日のうちに終わらせた方が明日以降楽になるだろう。俺はサクラの提案を受け入れた。

 今出ている課題の中には、サクラがあまり得意でない化学基礎や数学Bの課題もある。サクラ曰く、分からないところを訊いてたくさん時間を使ってしまうかもしれないので、連休が終わる今日中に終わらせたいと考えたとのこと。

 化学基礎や数学Bの課題で何度かサクラに教えることもあったので、午前中いっぱい時間をかけて、今出ている課題を終わらせた。

 課題から解放されたので、午後はサクラと一緒に昨晩録画したアニメなどをのんびりと観た。そのときはもちろん、サクラと身を寄せ合って。


「ねえ、ダイちゃん。今年のゴールデンウィークは今まで一番楽しかったよ。盛りだくさんだったし、ダイちゃんと恋人になってから初めてのゴールデンウィークだからかな」

「俺も今年が一番楽しかったよ。中2から去年までのゴールデンウィークは、距離のある時期だったし」

「そうだね。またダイちゃんと一緒にゴールデンウィークを過ごせて嬉しいよ!」

「俺もだよ。29日からって考えると、サクラと東京パークランドにデートへ行って、和奏姉さんが帰省して、小泉さんと一紗、杏奈が泊まりに来て。サクラとは……したかったことができたし。本当に盛りだくさんだった」


 色々なことがあったから、パークランドにデートへ行ったのが1週間前なのが信じられないな。


「ダイちゃんはもちろんだけど、みんなのおかげで忘れられないゴールデンウィークになったよ」

「そうだな。スマホで写真をたくさん撮ったし、何年経っても、今年のゴールデンウィークの思い出話に花が咲くかもな」

「きっとそうだろうね。……いつかは夫婦になって、思い出を振り返っているのかな」


 楽しげにそう言うと、サクラは上目遣いで俺のことを見つめてくる。サクラの言葉から「夫婦」って言葉を聞くと、ドキッとすると同時に心が温まる。


「そうなっているだろうな。……いや、なりたいな」

「ダイちゃん……」

「それに、昨日の夜にずっとよろしくって言ったじゃないか。だから、いつになるかは分からないけど、結婚しよう」


 サクラの頭にそっと手を乗せる。

 話の流れで結婚しようと言ってしまったけど、いざ口にすると結構照れるな。頬が熱くなってきたのが分かる。でも、言ったことに後悔はない。結婚したいと思えるほどにサクラのことが大好きだから。

 サクラは赤くなった顔にとても嬉しそうな笑みを浮かべ、大きく頷いた。


「うんっ! よろしくお願いします!」


 元気良く承諾の言葉を言うと、サクラは俺にキスしてくる。サクラの柔らかな唇から伝わる温もりは優しくて、いつまでも感じていたい。

 今年のゴールデンウィークは、例年以上に盛りだくさんで思い出深い時間になったのであった。




続編-ゴールデンウィーク編- おわり

これにて続編は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やレビューなどお待ちしております。

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