二十八話 反町若菜の告白(1)
1週間がたち、反町若菜への尋問が始まることとなった。
僕と飯塚隊長、高橋副隊長の三人で病室に入った。部屋に入ると大木さんが出迎えた。
「まだ手術を終えて1週間、体力が落ちているから長くても1時間くらいしか時間を取らせてやることはできない。どんな悪人だろうが助けるのが医師としての俺のポリシーなものでな。1時間経ったら強制的に退室してもらうぞ」
「わかった。善処する」
大木さんが退室し、僕たちはベットに近づいた。ベットに横たわっている反町若菜は1週間前とは別人のように穏やかで、あんな人をおちょくるような話し方をするようには見えない。
「話せるだけ話してもらうよ。いいかい?」
隊長は優しく彼女に語り掛けると、か細い声で「はい」と言ったのが聞こえた。
「うん、それじゃあ」
「すみません、その前にベットを起こしてもいいですか?喋りづらくて」
「ああ、いいよ」
ベット脇のスイッチを操作してベットを起こすと彼女は頭を手で押さえた。
「頭が痛むのかい?」
「……大丈夫です。包帯が少しきついだけですから」
「そうか。まあ無理はしないでいい。不調があればすぐに大木を呼ぶから」
「はい」
「それじゃあ始めようか……」
僕は飯塚隊長のアイコンタクトを合図に盗聴器が無いかを調査したが、どうやらないようである。
「問題なしです」
「よし、それでは今から聞くことに嘘偽りなく答えてもらうよ」
「はい、嘘をつくつもりはありません。ただ、私自身記憶が曖昧な所があるのです」
「マイクロチップを取り除いた事が原因だろう。まあ心配はない。既に解析を始めている」
「そうですか……。まず、謝らせていただきます。申し訳ありません」
彼女は深々と顔を下げた。
「私が望んでやった事ではなくとも、父に思うように操られ、それに抗うこともできなかった。それは私の罪です。それに……そのせいで多くの人に迷惑をかけています。だから、全てお話しします」
彼女の目から涙が一雫ぽたりと布団に落ちて滲んだ。
「落ち着いて、ゆっくりとでいい。話してみてくれないか」
反町若菜は語り始めた。反町隆史という人間がどういう人物なのか、そして、反町隆史の野望について……。




