二十五話 強大な暴食(2)
基地から出た僕達は2時間近くかけて茨城県の僕の実家へとやってきた。
僕の実家は築100年を超える古民家で祖父、間宮一郎の爺さんが建てた家だと父から聞いた事がある。
「初めまして、間宮一義さん。巨大生物特別攻撃隊日本支部第三作戦室の飯塚です。本日はご無理を申しまして申し訳ありません」
「いえいえ、大丈夫です。父の一郎の事についてですよね。私の知りある限りの事をお話しいたします。さ、どうぞ中へ」
客間に入ると机の上に古い日記帳や書類の綴じられたファイルが置いてある。
「これが我が家に残っている間宮一郎の資料です」
「成る程、では、早速拝見させていただきます」
飯塚隊長はファイルを、高橋副隊長は日記帳を手に取り読み始めた。
この間に僕と泉隊員で父さんに間宮一郎が研究所に関して言及した話を思い出しながら話してもらう。
「父さんの知る限りでいいんだけど、何か職場のことで何か言ってなかった?」
「うーむ……、仕事に関して爺さんが話す事は少なかったから役に立つかはわからないけど」
「それでも構いません。話してはいただけませんか?」
「……何とか細胞の研究をしている事、あとはコウキが幼い頃病気になって死の淵を彷徨った時、その何とか細胞があればコウキが助かるという話を聞いたくらいだ」
既に僕達の知っている情報だ。他に何か知らないかと問うてみるが父はうーんうーんと唸って必死に思い出そうとしてくれている。
どうも時間がかかりそうだったので、今度は母に聞いてみようと僕と泉隊員は客間を出て母のいるであろう台所へ向かった。
台所に行く廊下にて、お盆にお茶の入ったコップを乗せた母を見つけた。
「あらコウキ」
「母さん、母さんは何か知らないか?爺さんの仕事の事」
「私にはそんな話しなかったわよ。もう亡くなったお婆さんには話していたかもしれないけどね」
母はそう言って僕達の脇を通り抜けて客間へと歩いていった。
僕と泉隊員も続いて客間に戻った。
客間に戻ってきて父に何か思い出したか聞いてみたがやはりこれ以上は何も聞いた覚えがないと言う。
こうなると情報があるのは日記帳かファイルの中身となるが全てに目を通すにはまだまだ時間がかかりそうであった。
「隊長の持ってるファイルから書類を外して私たちも読まない?あの量を一人で目を通すのはきついだろうし」
「そうですね」
「隊長、手伝います」
「いや、いい。殆どが専門用語で知識が無ければ全く何が書いてあるかわからない」
実際にファイルの中身を見てみると本当に何が書いてあるのかわからなかった。
神山博士の教え子であった飯塚隊長だからこそわかるのだ。
副隊長は神山博士の手記と間宮一郎の日記帳を読み比べているようだ。
神山博士の手記に書かれていない事を確かめたり、時間関係を調べているようだ。
こちらは手伝う事はできそうもない。
僕は基地に残る武田隊員に連絡を取る事にした。
「武田隊員、何か進展しましたか?」
『いや全くダメだ。そっちは?』
「今のところ何も……」
『そうか……とりあえず頑張ってくれじゃあな』
「はい」
「武田隊員、なんて?」
「進展なしだそうです」
「そうか。うーん……間宮君何かアテない?」
「無いこともないですけど……叔父さん知ってるのかな?」
「茂文か。うーむ何か知っている可能性はある。結婚してからは神奈川県に住んでいて爺さんに会う機会は多かったはずだ」
僕はとりあえず電話をかけてみる事にした。




