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我ら、巨大生物特別攻撃隊!  作者: ひぐらしゆうき
最終章 我ら、巨大生物特別攻撃隊!
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三十三話 絶望の中の希望(2)

 第三作戦室に入るとメインモニターに戦況が投影されている。

 異形と化した反町隆史の表情は不敵な笑みを浮かべて、東京の町を破壊し尽くしている。


「副隊長の様子はどうだった?」


 頭に包帯を巻いた山内隊員が僕の元にやってきた。ウィッシュスター墜落時にヘルメットが割れておでこに裂傷を負ったのだという。


「危険な状態だそうです。助かるかどうか……」


「……そうか。しかし、お前も1人でよくあそこまでやったな。少しでも休めよ」


 僕の事を励ましてくれているが、山内隊員の顔は引き攣った笑みを浮かべている。彼自身もこの戦況を見て悔しさと情けなさで押しつぶされそうになっているに違いないのだ。

 それは、僕も、特別攻撃隊全体もそうな筈だ。

 僕は椅子に座って俯いた。葬式のようなどんよりとした空気感と、苦虫を噛んだような気持ち悪さに襲われる。

 僕は、すぐに立ち上がってコップを手に取って水を汲んで一気飲みした。

 どうやってもこの気分を変えられない。

 再び席に着くと、通信設備の方から声が聞こえてきた。どうやら武田隊員と小林隊員が話しているようだ。


「……なあ武田、今後の作戦どうなると思うよ」


「そんな事わからないさ。でも、最悪の可能性も考えなきゃならないかも知れないだろう」


「どういう事だ?」


「あまり言いたくないんだが、もしかしたらだ。……核を使うことになるかもしれない」


「な、核!?」


「声がでかい!……あくまでも可能性だ」


「だけどよ!」


「わかっている。でも、核を使わなければ倒せないと判断する可能性は十分にある。現に4年前の事件の時は考案されていたんだ。しかし、放射能で細胞がどう反応するかわからない。通常通り高濃度の放射線で細胞が死ぬのなら、反町を倒せる」


「その代わりに、東京は焦土にするって?ふざけんなそんなことあってたまるかよ!」


「あくまでも可能性だと言っただろう。日本がその道を選ぶ可能性は低い。核を使わず倒せるならその方法を試すさ。……今は待とう。俺もお前も疲れてる。今は何も考えず休もうぜ」


「……っくそ!無茶言うなよ」


 核の使用か。

 アメリカ本部が救援を出して、その際に本部のお偉い方もこちらに来ているらしい。

 本部の意向は大きく影響するだろう。

 本部としても核を使うと言うことは避けるだろう。恐らく別の方法を模索している筈だ。

 しかし、そうなるとどう戦う?

 今ある武器では奴を倒せない。救援が来たとはいえ戦闘員は疲弊している。怪我人、死人も出ている。

 新兵器が輸送されていると言う話もない。

 駄目だ。僕が考えてもどうにも思い浮かばない。

 やっぱり休んだ方がいい。でも、戦っている隊員がいるのに休んでいいのか?

 僕はまだ無傷で機体もある。いつでも戦える状態にあるのに。

 頭の中をぐるぐるとまとまらない考えが巡って余計休めない。

 悪循環なのもわかっている。なのに、思考が止まらない。


 ーピピピピピ


 通信機から音が鳴り、僕は通信に出た。


『間宮くん、聞こえていますか?』


「反町……若菜」


『突然すみません。すこし、いいですか?』


 一体何だというんだ。反町若菜から通信機は取り上げられている。一体どこで通信機を手に入れたのだ?


「良くはない。何故君が通信を?」


『今は言えません。静かにして、良く聞いてください』


 何のことかわからず、僕はただただ通信機に耳を傾けた。

 ザザザという不快な音が少し鳴り、少しすると掠れたような声が聞こえた。


『……聞こえるか?間宮……』


「た、高橋副隊長」


『情け、ないが、こうして喋るのが精一杯だ……。間宮、お前に……ザザ……ザ……』


「副隊長?」


『ま、任せた……お前なら……倒せる』


 プツリと通信が切れた音がした。

 あの重症で喋れるのか?そんなわけがない。これは一体なんだ?

 考えていると、若菜の声が聞こえた。


『聞こえましたか?』


「おい、今のは高橋副隊長が今喋った声なのか?」


『そうです。今は意識を失っていますが、確かに今喋った言葉です』


「そもそも何でその部屋に君が居る?」


『すみません、どうしても副隊長の容態が気になって人目を盗んで来たのです。通信機は副隊長のものです。勝手に動いて本当にごめんなさい』


「大木さんにはすぐに報告する。……だけど、ありがとう。やれるって気になったよ。じゃあ」


 僕は通信を切るとすぐに大木さんに連絡を入れた。高橋副隊長が言葉を発したこと、反町若菜が部屋を抜け出したことを報告した。

 僕には少し自信が戻ってきていた。

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