三十一話 科学の悪魔(4)
反町は余裕の態度でこちらにライフルを向けてくる何としても市街地へ攻撃させてはならない。直撃を受ければ一発で撃沈、しかも撃ってくるのはレーザー。亜光速で飛んでくるものを回避するなんてことは人間にできるはずもない。
クリムゾン・レイを撃ち込みつつ、高度を上げて、上方向にライフルを撃たせるように誘導する。しかし、防御壁が厚い。ライフルを撃つ瞬間だけ防御壁に穴ができるが、そこをピンポイントに狙うのは至難の業だ。ウィッシュスターに搭乗している小林隊員が何度もトライしているがうまくいかない。
「このままじゃジリ貧ですよ」
『弱気になるな!フェイルノートの準備が整うまで耐えるんだ。どんだけ対策していてもフェイルノートの直撃をくらえばただじゃすまないはずだ』
『そうだぜ間宮!まだまだできることはある』
「どうするんです?」
『急降下で脳天を打ち抜く』
「危険ですよ!狙い撃ちされます」
『もちろんダミー代わりにクラスタースパイク投下してそいつを撃たせる。その瞬間を狙ってスーパー3を投下する。奴の防御壁は上に穴が開いている。そこをつく。間宮は援護を頼む』
「わかりました」
成功さえすれば反町隆史に初めてダメージを与えられるかもしれない。しかし、上からの攻撃に何の対策もしていないなんてことがあるのだろうか。この反町という男の用意周到な性格からいってそんなことはないと思う。いやな予感がした僕はフルスロットルで反町の真上をとってクラスタースパイクを投下した。
『おい、間宮!』
山内隊員から無線が入ったが無視して遠くから爆炎を見つめた。うっすらと人影と巨大な板状の物が見える。
[なるほど鋭いな。あのまま急降下攻撃をさせていれば確実に一機仕留められたものを]
反町が左手に持っていたのは巨大な盾。素材はわからないがクラスタースパイクで傷一つつかないところを見るに並みの金属ではない。盾の上部には銃窓、視野を確保するための視察窓が備えられており、もし、あのまま急降下攻撃をしていたら攻撃を防がれた上にカウンタースナイプでウィッシュスターは撃墜されていたに違いない。
『あぶねえ、しかしなんて奴だ。あんなものまで準備しているとは』
これでいよいよ攻め手がなくなった。防御壁だけでなく盾もかいくぐらなければ攻撃を直撃させることができない。もっと最悪を考えたくないが、フェイルノートが通用するのかすら不安になってきた。
[こんなものか。やはり高橋でなければ相手にならんな]
『なんだと!』
山内隊員がむきになった一瞬を反町は見逃さなかった。防御壁を一枚上空に投げるとそれに向かってライフルを放った。投げられた防御壁の表面はウィッシュスターに向いている。
「山内隊員、回避してください!」
『なに?』
反応した時にはすでに遅かった。ウィッシュスターの後部にあの大出力のビームが直撃したのだ!
[誰も防御だけに使うとは言っていない。こいつは本来こういう使い方をするものだ]
墜落するウィッシュスターから脱出する姿が確認できた。脱出装置は生きていたようだ。ひとまずは安心した。しかし、戦力は大幅ダウンだ。
[さて、後は君だけか。間宮さんのお孫さん]
どうにかしなければこちらもやられる。僕はポケットのUSBに手を伸ばした。オーバードライブを使うしかないと考えた。その時であった。
『待たせた!フェイルノート準備完了だ!射線にいる奴は退避しろ!』
待ちに待ったフェイルノートが発射される。ギリギリだが何とか時間稼ぎはできたようだ。僕はすぐさまその場を離れた。
海岸沿いの巨大な弓がスパークして轟音を響かせ音速をはるかに超えた巨大な矢が反町を直撃した!




