三十一話 科学の悪魔(3)
基地を出発して3分で高橋副隊長のシューティングスターが見えた。戦っているのは筋骨隆々での皮膚に黒い毛をまとったまるで悪魔のような姿をした人型の巨大生物。おそらくこいつが反町隆史が細胞を取り込んで巨大生物へと変態を遂げた姿なのだ。
クリムゾン・レイをまともに食らっても傷一つつかない防御力に人間でも最高クラスの頭脳が合わっているのはとてつもない脅威だ。
「高橋副隊長!」
『熊型はどうした?倒したのか?』
「はい、それで救援に!補給に戻ってください!」
副隊長は悩んでいるのかすぐには返答がなかった。30秒ほどたって任せるという通信が入った。
「行きましょう山内隊員、小林隊員」
『ああ、とにかくフェイルノート発射まで時間稼ぎしないとな』
『慎重にいこーぜ。相手は反町隆史だ。下手すると落とされちまうかもしれない』
「そうですね。実弾で攻めましょう。ビーム系はあまり効いていないようでした」
『そうみたいだな。よし、いくぞ!二手に分かれて同時攻撃する』
「了解」
人間の視野は180度が限界だ。どちらかに注意が向けば視界の外から攻撃ができる。おそらく攻撃するのは先ほど戦った熊型の方が難しいはずだ。
しかし、反町は一切動くことなく、じっと立っている。余裕の表れなのかそれともなにか策でも講じているのか。
『よし攻撃!』
同時にスーパー3を撃ち込んだ。爆発して反町の体が爆炎に飲み込まれて見えなくなった。流石に防御力がいくら高かろうが二発のスーパー3を同時に受けてまったくの無傷ということはあり得ない。
「やったのでしょうか?」
『そんなあっさり終わるわけがないと思うが』
爆炎が消えるまで距離をとって様子を見る。すると反町の姿が見えてきた。
『なんだあれ!』
そこには反町を囲むように半透明なプレートのようなものが地面から伸びていた。プレートには黒い跡がある。見る限りあそこに着弾したらしい。しかしいったいどこにあんなものがあったのだ。
[こんなものかな?君たちの力は?]
大きく開いた口から低くくぐもったような声が響いた。難治尾も不気味でまさに悪魔の声だ。
『用意周到な……』
[君たちが最新兵器を結集してくることは想定できた。こちらも準備しているに決まっているだろう]
そういって反町は、ビルに手を突っ込んで何かを引き出した。手に握ら得ているのはライフルのように見える。
[当然、こちらもそれに対抗する武器を使わせてもらうまでだ]
反町はライフルを埼玉方面に向けた。
「何をする気だ!」
[よく見ているといい]
そういうと反町は躊躇なく引き金を引いた。超高出力のエネルギーが飛んで行って遠くで赤く光った。着弾地点から巨大な黒い煙が立ち上った。威力でいえばクリムゾン・レイの数十倍のはある。こんなもので狙われたらひとたまりもない。かといって市街地に撃たせるわけにもいかないし、フェイルノートを狙われれば一発で吹き飛ばされてしまう。海に行けば第一作戦室の方に損害が出かねない。
『くそ、なんてもん用意しやがったんだ』
[さあ、どうするかね?巨大生物特別攻撃隊?]
どうする、このままでは被害が拡大して東京は火の海だ。何とかあのライフルを破壊しなければ。しかしそれを簡単にはさせてくれないだろう。なんとか虚を衝くしかない。しかし、この男に隙なんてあるのだろうか。




