二十九話 あの日の再来(2)
新宿に到着すると既に巨大生物により火の海と化したビル群が目に入った。黒いドラゴンのようなその姿は4年前、僕がテレビの生中継で見たアの巨大生物にそっくりであった。
『この巨大生物は4年前の災害で現れたものと同じミズトカゲ型巨大生物コードネームドラゴンであると思われます。体長は以前よりも高くなっています。ビルの8階に相当していますね。鱗は非常に強固な鎧のようなものでスパイクミサイル程度ではダメージを与えられないでしょう。ビーム兵器を中心に戦ってください。また、まあこれは4年前を経験している高橋副隊長や山内隊員は重々承知しておられるでしょうが、近づけばその鋭い爪で引き裂かれるだけです。できる限り距離を取って戦うことを心がけてください。4年前より武装は遥かに強化されています。こいつに苦戦する要素はないでしょう』
『確かにな。若宮、巨大生物は今のところこいつしか出現していないのか?』
『どうやらつい先ほど東京湾にサメ型巨大生物が出現したようです。まあそちらは第一にお任せしてよいかと』
『了解、これから攻撃を開始する。散開してまずは腕と尻尾を攻撃する。奴の攻撃手段がなくなり次第、口にスーパー3を撃ち込んで撃破する。いいな?』
『了解!』
「了解!」
散開するとトライブラスターで攻撃を開始した。普段見慣れない深紅の光線はウィッシュスターとシューティングスターに搭載された新ビーム兵器、クリムゾンレイだ。破壊力はトライブラスターと同等かそれ以上かもしれない。しかし、この巨大生物の鱗はクリムゾンレイをまともに受けても大したダメージを負っていないように感じる。
『攻撃を一か所に集中する。堅牢な装甲はあの時と同じようだ。しかし見てみろ、さっきの数発だけであれだけダメージを与えられていれば増援が来る前には倒せるはずだ。攻撃の手を緩めるな!』
僕たちは副隊長の命令通り両腕と尻尾に攻撃を加えていく。攻撃を受け続ける巨大生物は咆哮を上げて尻尾を振り回すが振り回すたびに鮮血が飛び散った。
『もう尻尾は使えないだろう。俺が突っ込む。援護をしろ!』
『了解!』
「了解!」
シューティングスターが口めがけて突入していくのを後方からトライブラスター、クリムゾンレイを腕に浴びせ、腕からも鮮血が噴出し。黒い鱗は真っ赤に染まった。
武器を失ったドラゴンはなすすべなく吠え続けるばかり。
副隊長はそんなドラゴンの口に容赦なくスーパー3を撃ち込んだ。
体内で爆裂したスーパー3によりドラゴンは木っ端みじんに砕け散った。
『4年前にあんなに苦戦した奴がこんなにあっさり倒せちまうなんて、とんでもない兵器だぜ。巨大生物が全滅したらとっとと封印しないと軍事バランスが乱れて大変なことになりそうだ』
「ええ、そうですね」
『ドラゴンの討伐を確認しました。次がもう来ています。そのままその場で戦闘態勢を整えたまま待機を』
若宮隊員から送られてきたデータを見ると、北西からクマ型の巨大生物が近づいていることがわかる。新宿到達まであと3分。
『油断するなよ。恐らくこいつらは時間稼ぎが目的の雑兵だ。本隊はこちらが消耗してから出てくるはずだ!武相の消耗は極力抑え、決戦に持ち込む』
『了解!』
「了解!」
僕は大きく息を吐き、集中力を高めた。




