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【ナーロッパではない中世】この転生には、いったいどのような<意味>があるというのか?  作者: エンゲブラ
本編

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34 打診



葬儀を終えた、その日の夜。

ジギスムントからの呼び出しで、シュヴァルツブルクへと登城したフェリクス。


「悪いな、フェリクス。このような日に……」


「いえいえ、私用により帰還のご挨拶が遅れましたこと、誠に申し訳ございません」


「呼び出したのは他でもない。ヴィクトール(=ボヘミア王、皇帝)より選帝侯への就任の打診があってだな……」


「それは誠におめでとうございます!」


「親書にはヴィクトールのみならず、かの宰相リーシュカのサインも入っておった」


「はい」


「お主とテオドールからはボヘミア閣僚の態度が軟化したいうと報告を受けてはおったが、実際にこのような形で証明されてしまうと何というか……だな」


「で、お受けになられるのですか?」


「選帝侯となるにはボヘミア王を含め、他の選帝侯たちからの過半数の同意が必要。選帝侯の定員は七名であるゆえ、現在の面々から一名を削る必要があり、また厄介な面々の懐柔も必要と……」


()()()、とはザールブリュッケンとドレステンの大司教あたりですか?」


「ああ、お主はあやつらのことをその……良くは思っておるまい。ボヘミアの票は問題ないにしても、残り三票をどこから…… 」


「それに関してなのですが、すでにテオドールからも耳にお入れだとは思いますが ―― 」フェリクスは、保守派のザーリュブリュッケンとドレステンへの方針の変換とバーゼル大司教への不信感を素直にジギスムントに述べた。

「―― これは私自身の経験不足から来る過ちであり、これまでの()()も含め、閣下には少なからぬ損失と失望を与えてしまい、誠に申し訳ございません」


「いやいや、実際にあやつらに対し、これまでも絶縁状を叩きつけてきたわけではない。この度、こちらの方から態度を軟化させるというのであれば、あやつらの気性上、間違いなく乗ってくるであろう。全く問題はないゆえ、気にするでない。むしろ、これまでのこちらからの冷淡な態度の雪解けに、あやつらも喜ぼう」

ジギスムントは、髭を撫でながら、わざとおどけるように微笑をフェリクスに向けた。

「ところでフェリクスよ、いよいよノイシュタットの爵位を継ぐそうだな」


「はい、その件も含め、冬が来る前に今一度、プラークへと急ぎ戻る必要がありそうです。今回の選帝侯会議に向けての調整もリーシュカ殿と直接話しておく必要もありますし……あ、バルデはシュヴァルツブルクに置いて行きますので、良い具合にお使いいただければと。それとあやつには()()()()()への入室のご許可も頂ければ、幸いです。あやつが(わたくし)の専属となることを決めたのも私のカメラアイによる書物類が主たる目的でありますゆえ」


「おうおう、あの名高き放浪楽士バルデを専属にしたのであったな。さっそく明日にでも面通しを行い、よきに(はか)らおう」


「少々礼儀に難のある男ではありますが、歌とその知性は一級品です。閣下のお心をわざと逆撫(さかな)でするような発言をすることもあろうかと思いますが、そこは閣下の広大なる度量で何卒(なにとぞ)よしなに」


()()()、か……噂どおり、なかなかに面白そうな男であるな。よかろう、しかと心得た」


「それでは明朝、またバルデを連れてまいります。今宵(こよい)はこれにて失礼 ―― 」


「お、そうそう。すまぬ、あとひとつ用件があった!これがある意味、一番の問題となるのやもしれぬが、選帝侯会議で新しい選帝侯となるための承認を受ける際の儀礼に、なにやら()()()()()があるという話を耳にしたのだが、帝都で何かそのようなことの噂を聞いたことはあるか?これを知らぬと()()()()扱いを受けるともヴィクトールよりの親書にあったのだが……」


「なるほど、少々お待ちを……」

脳内の書庫インデックスを検索し、それらしいものがあるのかの照会作業を行うフェリクス。

「それに関しましては、プラークの帝国図書館で目にしたザールブリュッケンからの寄贈図書にそれらしきタイトルの書物がありましたゆえ、プラークに戻る前に、取り急ぎ書き起こしを行いましょう」


「誠か、恩に切るぞ、フェリクス!褒美には何を求める?」


「……褒美、でございますか?」

ジギスムントの珍しい物言いに、少し困惑を見せるフェリクス。

「閣下からはすでにかけがえのない、たくさんの物を頂いておりまするゆえ、この上 ―― 」


「そうだ、フェリクスよ!お主が爵位を得、(わし)の選帝侯就任が決まった際には、我がひとり娘のヒルダ(=ヒルデガルト)をお主にやろう。あやつはお主より4つほど年長となるが、姉さん女房というのも悪くはあるまい」

まるで今思いついたことかのように、白々しい演技を見せるジギスムントに呆れながらも、まさに寝耳に水とも言える提案に、頭をぐるぐると高速回転させるフェリクスであった。



挿絵(By みてみん)

(すくすくと超絶美少女に成長しているヒルデガルトちゃん近影)


<作中の選帝侯>

・聖界選帝侯(宗教関係者)

 →ドレステン大司教、ザールブリュッケン大司教、バーゼル大司教

・世俗選帝侯(領邦君主)

 →ボヘミア王、バイエルン公、オーストリア公、サヴォイア公


※今回は、勢力を縮小させているサヴォイア選帝侯の地位を剥奪し、シュヴァルツヴァルト辺境伯ジギスムントを選帝侯位に昇格させる発議となる模様。時期は今冬を越した後の春先となる予定。



<歴史上の選帝侯(=現実世界)>

・聖界選帝侯

 →マインツ大司教、ケルン大司教、トリーア大司教

・世俗選帝侯

 →プファルツ選帝侯(ライン宮中伯)、ザクセン選帝侯、ブランデンブルク選帝侯(辺境伯)、ベーメン王(ボヘミア王)



ヒルデガルトとの婚約の提案は、さすがに作者も驚きの展開なんでやねん

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なろう系 オススメ 異世界転生
― 新着の感想 ―
 うわぁ……、やっぱりこうなったか。  着々と『フェリクス1世』への道を進んでますね。(笑)
 ヒルデガルトさんとの突然の婚約話にびっくりしました。  全体的に面白くてどこが面白いかと言いにくい小説ですね。
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