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最悪の魔王を誰が呼んだ  作者: 岩国雅
頂を知りたくなければ、戦場で空を見上げるな

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コートデナールの巨人たち(6)

 「来るぞおお!」とアルゴルが叫んだ瞬間、草原の起伏の陰に入った王国軍の先頭は見えなくなっていた。

 だが彼の咆哮が終わる頃には、丘を駆け上がる騎兵の姿を全員が鮮明にイメージ出来ていた。

 アルゴルに至っては、先頭を走っていたニコラの顔さえも鮮明に思い浮かべている。次の瞬間には現れることを想像していたのだ。

「来る!」「来るぞ!」

 皆が緊張に震える手をおさえながら、そう口にしていた。

 そんな中で3秒、7秒、10秒。

 1つ向こうの丘の裏から聞こえる馬の駆ける音と揺れが、彼らがそこにいることを教えてくれる。


 だがあまりにも、遅かったのだ。


 だと言うのに、迫りくる気配と馬の足音は増え続けていた。

「まさか……陣形を変えたのか?」

 アルゴルたちへ衝突する直前、彼らの視界の死角で陣形を変えるカル王国軍。

 その想像は容易く出来た。

 そうして。アルゴルが考え付いたのは、直前までニコラを先頭としていた<中央突破>の陣形の逆だった。

「外から回って来るぞ!左右をもっと広げろ!」

 そう言った瞬間、丘の天辺に小さな顔が出た。


 中央に1人と、そこから距離を取って左右に1人ずつ。

 3人の戦士が馬に乗って現れた。

 そして、その3人が丘を駆け下り始めた瞬間に、4300人の兵士が3つの波となって彼らを後を追うように続いた。

「おおおおお!」と咆哮を上げながら、下り坂で加速した数え切れない騎兵。

 その陣形の形はまるで「三叉槍」である。


「丘の裏で左右の馬を待っていたのか。だが、外を回るような位置じゃない。このまま3点で衝突するつもりか!?」

 3人の騎兵が先行することで作られた3つの槍。

 それらはまっすぐにアルゴルたちが築いた盾の壁へ向かっていた。

 敵の分散は彼らにとって好都合だった。

 一点のみに集中した力を耐えるには盾の壁は広がりすぎていたが、分散した今なら対応できると考えたのだ。

「衝突位置に盾を重ねろ!急げ!」

 だが、素早くそれが出来るのはその位置の左右に繋がる2,3枚だけだ。

 それで十分。

 それよりも心配なのは先ほどの矢をすべて回避するような、剣ではどうにもできない技だった。


 だが、それはアルゴルの杞憂に過ぎなかった。


 なぜならカル王国軍による、この後の作戦の続行において必要なことはただ1つだけだったからだ。

 それは、力づくだ。

 そして、それを果たすのは選ばれ兵士たち。

 アルゴルは後に知ることとなるが、陣形の3本の槍の矛を担うは当然、王国最強の戦士。

 三極・ニコラ・デルヴァンクール。

 三極・デッラ・サンデニ。

 三極・マクシム・ミドゥ。


 アルゴルは三極の存在を知らなかった訳では無い。

 前もって聞かされていた。

 その上で侮っていたのだ。

 ジャイアント族の戦士を人間種の個人が圧倒できるなど決してありえない、と。

 千年前に我らの先祖が故郷を追いやられたのは人間の数に屈したのである、と。

 だが今日彼は知ることになる。

 小さな体で得た才能を、短い生で積み重ねた努力を、国と民と剣に捧げた忠義と覚悟を。

 

 アルゴルは仲間の背中を叩き、肩を揺らして語り続けていた。

「あの速度で盾にぶつかればそれだけで奴らは倒れる!突破させるな!絶対に突破を」

 その時、アルゴルは3つの気配が膨れ上がるのを感じた。

 敵はもう目の前、10メートルの距離に近づいていたあの3人が遂に剣を振ろうとしていたのだ。

 

 3人はほぼ同時にあることを唱えていた。

 アルゴルが耳にした言葉は、彼から最も近かった中央の槍の先頭に立つニコラが口にしたスキルの名前だった。

「<百戦剛剣>」

 そうして放たれた剣圧が、重ねられた盾を轟音と共に貫き、ジャイアント族もろとも吹き飛ばした。

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