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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第六章 次こそ君を
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あなたの故郷

「見えてきたな。あの川を越えた先からローエンリンデ領だ。」


お姉さまは馬車から遠い先を指さす。

目が良いなぁ。私にはまだ見えない。


「もうすぐローエンリンデ領ですか。意外と早かったですね。」


まだ旅立ちから五日目の午後だ。後二日かかると聞いていたが。


「ここからまだ掛かるのだがな。うちは何も無い分とにかく領地が広い。同じ領地の遠い分家筋が残ってるのもそのお陰だな。」

「ああ、鉱毒の被害をあまり受けなかったんですね…。」


なるほど、馬車で二日かかるとなるとさすがに別の地域に近い。

しかし、もう少しでお姉さまの領地であることには変わりない。

気を引き締めないとな。


「ん、どうした?リシアからくっついてくるとは珍しいな。」

「何があるか解りませんからね!警戒しないと!」

「ふふ、そうだな。私もリシアにくっついておこう。」


そう言うとお姉さまは私の頭頂にあごを乗せる。


「毎回毎回そうされるとそのうちそこから禿げてしまいます。」

「良いんじゃないか?そうなれば私の愛の証だな?」

「私が嫌に決まってるでしょう。」


頭頂だけツルっと禿げた頭。想像するだけで嫌だ。

どうにか回避しようと暴れてみるが、お姉さまの力にはかなわない。


「大人しくしてないと、何があるか解らないぞ?」

「むしろ危ないのはお姉さまな気がしてきました!」


◆ ◇ ◆ ◇


「ここから、お姉さまの領地ですか。」


橋を渡り、川を越える。

特に何かが変わったわけではないけれど。

ここからがお姉さまの生まれ育った土地と思うと、少し感慨深い。


「そうだ。ふふ、何もないだろう?」

「いや、そんなことは…ありますね。」

「そうなんだよ、変に取り繕ってくれるよりいい。」


本当に一面何もないところだ。

領地の端というのもあるだろうが。


「ここは、何の畑なんですか?」

「麦畑だな。夏にくればそれなりに壮観だぞ?」

「良いですね。夏にまた来ましょうね?」

「どうせそのうち嫌でも毎年見ることになるだろう?」


お姉さまはそういうと一際私を強く抱きしめる。


「それはそれ、これはこれですよ。」


私はお姉さまのその手を強く引っぱたいた。



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