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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第六章 次こそ君を
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お月見イベント・その2

団子粉に水を入れ、ひたすらこねる、こねる、こねる。

耳たぶの堅さになればそれをちぎって丸めていく。


「耳たぶの堅さらしいですよ、お姉さま?」

「リシアは何故か私の耳たぶが好きだよな…」


粉のついた手で構わずひんやりしたお姉さまの耳たぶをたぷたぷする。

少しこそばそうにしているが、黙って私の手が届くよう傾けながら触られている。

だって、冷たくてしっかり弾力があるから気持ち良いんですもの。


「ちぎって丸めるの、手伝ってもらえます?」

「ああ、任せておけ。」


お姉さまは一度に大量にちぎって大きなお団子を作っていく。


「ちょっと大きくないですか?」

「そうか?」


まぁ良いか。お姉さまは大きなお団子を食べてもらおう。


「味付けは何にします?言ってたとおりきな粉?あんことかみたらしって手もありますよ?」


一応色々持ってきたのだ。お団子はどう食べても美味しい。


「むむ、悩ましいな…」

「茹であがるまでに考えておいてくださいね?」


お団子を手のひらでころころしながら真剣に悩んでいる表情のお姉さま。

その姿が可愛らしい。


丸めたお団子を沸騰したお鍋に流し込んでいく。

後は浮くまで茹でたらおしまいだ。


「味付け、決まりました?」 

「待ってくれ、もう少し考える…。」

「もう、またほかの味は一緒に作ればいいじゃないですか、気分で決めちゃいましょ?」

「そうか、また一緒に、な。」


明日私たちの関係が終わるわけではない。

これからの約束をいっぱい積み重ねていけばいいのだ。


「ではやはりきな粉で。黒蜜をかけよう。」

「良いですね!ではそれで用意いたします。」


お団子が出来上がったら次はお姉さまの玉子焼きだ。

私は何も口出ししないし、手を出さない。

ただ後ろからじっとその姿を眺める。


「ん、どうした?」

「ふふ、何でもありませんよ。お姉さまの玉子焼き、楽しみです。」


この人が、私のために何かを料理してくれることがもう嬉しい。

拙いながらも何度も練習を重ねただろう手つきに心が暖かくなる。

と、共にお姉さまの愛情を受け止められる私が恋人で良かったとも思う。


「もう出来上がるが…一つお味見するか?」

「ええ。食べさせてください、お姉さま?」

「ああ…リシア、あーん。」

「ふぉいひぃでふ!お姉ひゃま!」

「食べてから話せ。嬉しいけどな。」


お姉さまはそういうと、本当に嬉しそうに笑い、私の頭をそっと撫でる。


「本当に愛おしいな、リシアは。」

「私もお姉さまのこと愛おしいですよ?」


今日くらいは甘々な雰囲気に付き合ってやろう。

私はくっついてくるお姉さまに負けないくらいくっついたのだった。







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