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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第四章 「2人」の記憶
53/321

助けて※表現要注意

少々暴力的なシーンがあります。

苦手な方はご注意ください。

三日目の朝がくる。

木にもたれて眠るのにも少しなれてしまった。


昨日の夕方、蛙石を見たと言うことは今日には途中の街を越えれそうだ。

街にも立ち寄りたいが、お金もなければ身分を表すものもない。

追っ手のことも考えるとここは素直に回避する方がいいかな。


◆ ◇ ◆ ◇


走っていて気がついたのだが、初日に折ったと思われた左腕が治りつつある。

まだ腫れているが、初日の様な熱と痛みはもうない。

折れるまでは行かなかったのだろうか。

確かにあの時、折れるほどの衝撃だったと思うのだけど。

何にせよ、腕が使えるのに越したことはない。

ここに来て発覚した明るい要素に気分もあがる。

折り返し地点も後少し。頑張るぞ。


◆ ◇ ◆ ◇


途中の街を越えた。

見るも無惨な見た目をしている自覚はあるので、人目のない場所で遠目に街を見ながら抜けていく。


そう言えば、王都に入るときはどうしよう。

なにも考えていなかった。

この見た目では間違いなく怪しまれるだろう。

騒ぎになり、エドワードに見つかればどうなる?

王都までもう半分を切った。着くまでに、何かしらの解決策を考えねばならないな。


◆ ◇ ◆ ◇


「おい、どこへ行く?」


夕方、街外れの山の中を考えながら進んでいけば突然声をかけられる。


「おお、身なりはあれだが、顔は綺麗だし、胸はでけえ。完璧じゃねえか。」


しまった。油断していた。こいつは山賊の類だ。

街の近くの山中に拠点を構えて旅人を狙う集団。

ここは奴らの縄張りのど真ん中でもおかしくない。

私は振り向かずそのまま走り出す。少しでも、距離を開けないと。


その思いも虚しく、私の横腹に衝撃が走り、肋骨がぽきぽきと折れる音がした後、体がふっとぶ。

体をしこたま木に打ちつけ、頭から血が出る。その場にうずくまり、吐く。


「まあ待てよ。なぁ?一緒に居たいと思えるようにしてやろうか?」


そう言うと男は私に覆い被さり、ボロボロのパジャマを破って行く。

やめて、私の体はお姉さまのものだ。お姉さま以外誰に渡さない。

それならばいっそ、今ここで舌を噛んで--


死の覚悟をきめた瞬間、私の上に居た男が居なくなる。


「おい、何してくれてんだ、てめえ?」


山賊の仲間割れか?何にせよ今のうちに逃げないと--


「おい、リシア嬢、これ着とけ。」


私の元に一着の服が投げられる。そこにあるのはハミルトン家の紋章。まさか。

私が見上げると、そこにいたのはカイトだった。


「良いか、少しの間目を瞑っていろ。いいな?」


カイトの言うとおりに目を瞑って下を向く。


「おいお前、ただでは済まないからな?」


口を抑えられているのだろうか。男の声はくぐもって聞こえない。カイトの声もどんどん遠ざかって行ったかと思うと、遠いところで男の断末魔がした。




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