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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第四章 「2人」の記憶
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世界の色

レベッカ視点です。

学園にやってきた。

用事があるというわけではなかったが、家の滞っていた業務を数日掛けて片付け、手持ち無沙汰になった。

シンシアからの連絡は未だ無く、リシアがどうなったかは全くと言って知れない。

何かしていないと、体から魂が抜けていくような感覚がする。

私は重たい体を引きずり、気になっていた調べ物を全て済ませようと、図書館を利用しにきたのだ。


調べ物は、すぐに終わってしまった。

やることがない。

世界とは、こんなに鈍色だっただろうか。


誰も居ない自分の教室へ向かう。

いつも座る椅子に腰掛けてみる。

同じくいつも座っている、隣の席に目をやる。


「お姉さま?」


世界がカラフルに染まる。


「リシア!」


私は身を乗り出す。

だが、世界はまた鈍色へと戻る。

そこにリシアの姿はなかったのだ。

どうやら、幻聴や幻覚まで出始めたか。私は苦笑する。


◆ ◇ ◆ ◇


いつも食事を摂る、川のほとりに腰掛ける。

いつもの様に川はせせらぎ、花は揺れる。

大事な物が欠けたいつもの風景が、涙を誘う。


「全部私のせいだ。」


あの時、リシアの言うことを聞いていれば。

あの時、意識を無くさなければ。

あの時、無理にでもリシアと会っていれば。

あの時、帰らずにいれば。


後悔だけが頭を渦巻く。

私は膝を抱え、そこに顔を埋め、ただ時が経つのを待った。


◆ ◇ ◆ ◇


お腹は空いていない。

食事を摂る気にならない。

でも、痩せこけてしまえば、リシアに怒られるかもしれない。

怒られるだけならまだいい。見てくれがこれ以上悪くなって、失望されたくない。

そう思い食事を摂ることにする。


学園の食堂は、職員向けに今日も開いている。

閑散とした食堂に一人、トンカツ定食を持って座る。

まだリシアのお弁当が常態化する前、良く好んで食べたメニューだ。

金属味の酷い口内で、数少ない味が感じれるメニューだったからだ。


私はトンカツを口に運ぶ。

金属の味。

リシアのお弁当はこれより味が薄くても、よく味が解った気がする。

秘密の製法でもあるのだろうか。


食べたくない食事を無理に口に詰めて、私は席を立った。


◆ ◇ ◆ ◇


リシアと課題の打ち上げに行った“今”人気の店は、時が経ち人気の店となった。

相変わらず盛況ではあるが、随分と前から予約を取らずとも、待てば案内してもらえるようだ。


ハチミツをそのまま貪る練習をしていたリシアは私の食べるハニートーストを食べれるようになったのだろうか。

そんなしょうもないことが妙に気になった。

確かめる時は、来るといいのだが。


◆ ◇ ◆ ◇


家に戻る。使用人が慌てて私の元へとかけよる。


「お嬢様!シンシア様から手紙が来ております!」


その瞬間、魂が体に戻ってくる。

今までどこか三人称視点で見ていた世界が、一人称に戻ってくる。


「何だと!?今すぐ持ってきてくれ!」


手紙を受け取った私は、見目も気にせず指で糊付けを破り便せんを取り出す。


「レベッカ様へ。エドワード様に慌てた様子あり。リシア様について何かしらの非常事態があった可能性が高いです。 シンシア」


それだけのシンプルな手紙だ。きっととるものもとりあえず、急いで書いて送ってくれたのだろう。


「今から馬で全て駆けたとて、夜までに着くのは難しいか?」


私は横に控えていた使用人に訪ねる。

今更私の体のことなどどうでもいい。限界まで馬で駆けて、リシアの元へ駆けつけたい。

手紙が着いた時点で数日は遅れている。一刻の遅れも許されない。


「なるほど。解った。15分後、私と選抜した何人かは避暑地へ向けて出発する。準備をしてくれ。」


私は服を騎乗用の物へと着替えようと自室へ向かう。

その時、馬が屋敷に駆けてくるのが見えた。

何だ、この時に。

私は一度来客に帰ってもらおうと玄関口へと足を進めた。


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