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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第四章 「2人」の記憶
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攻防

レベッカ視点です。

翌日、立って動けるようになった私は、シンシアの案内で早速リシアの居るという部屋に向かう。


「今日も面会謝絶になっていますね。」

「リシアを管理しているのは誰だ?」

「エドワード様だったかと。」

「あいつか…。」


私たちは直接交渉するためにエドワードを探す。


「ああ、レベッカにシンシア嬢。こんにちは。」

「リシアの体調はどうなっている?」

「僕がすぐさま向かって救助したから、ちょっと弱っては居たけど問題はないよ。」

「そうか。どうにか会えないか?」

「それは難しいんじゃないかな?」

「何故だ?」


私はエドワードを睨む。問題がないなら会わせられない理由がない。


「実は彼女、お姉さまに見捨てられたって、錯乱しているんだ。」

「どういうことだ?」

「私が溺れている時に、お姉さまは助けに来てくれずに居なくなったと。酷く悲しんで精神的に病んでいる。」

「そんなはずはない!私はお前に助けを求めに行ったじゃないか!」

「僕もそう言ってるんだけどね。心の傷は深いようで、なかなか受け入れられないようだ。」


まさか、リシアが。そんなはずは。

私が混乱していると、それまで黙っていたシンシアが口を開く。


「その話、本当ですか?」

「…どういうことだい。シンシア嬢。」

「簡単な話です。いつだってレベッカ様を信じていたリシア様が、そう簡単にレベッカ様を疑うように思えないんですよ。」

「でも、それが事実だ。」

「日頃のリシア様を見て、それを信じろと?」


シンシアのその発言を聞いて、私は冷静さを取り戻す。

そうだな。リシアが私を一方的に恨んだり疑ったりするなんてあり得ない。

彼女はいつも私を信じてくれていた。


「なぁ、エドワード。私がダメならシンシアだけでも会わせることは出来ないか?」

「とにかく精神的に病んでいる以上、誰にも会わすことは出来ないというのが医師の見立てだ。飲み込んでくれ。」

「…わかった。」


私たちが諦めて引くと、エドワードはそそくさと姿を消した。


「あの人、何を企んでいるんですかね?」

「さぁ…ただ、リシアに会えないのは寂しいな…。」

「本当仲むつまじくて羨ましく存じます。」

「そうだろう?ありがとう。」

「嫌味なんですけどね。これ。」


◆ ◇ ◆ ◇


その後も、リシアの休む部屋を何度も訪ねるが全く会わせてもらえる気配がない。

エドワードも杳として捕まらず、何日かが過ぎた。


限界まで予定を引き伸ばしていたが、いい加減王都に帰らなければいけない。

本当はリシアと共に帰るはずだった。

それが難しくても、せめて一度だけでも。


「エドワード。」


私は帯剣してエドワードの部屋の前で待ち伏せした。

今日こそ何とかして会わせてもらってから帰ると。


「レベッカか。リシアなら会わせられないよ。」


そう嘯くエドワードの口先に剣を一閃する。


「次はこれでは済まないぞ?エドワード。」


私は剣を構えてエドワードへと対峙する。


「そこまでする?普通。」

「それだけの価値のある人間だよ。私にとっては。」

「昔は君に勝てなかったけどね。僕も剣は出来る方だ。粘ればどうなるだろうね?」


そう言うと、エドワードは予想して携帯していたのか、剣を取り出し構える。


「さてな。リシアの為なら頑張れるかもしれない。」

「さすがに婚約者とはいえ、切りかかられれば手討ちにしても問題がないはずだよね。」


私たちはしばしの間にらみ合う。

そして、唐突にエドワードが剣をおろす。


「やめ、やめやめ。とりあえず剣は納めて。ほら。」


抵抗する気をなくした相手に剣を構えていられず、私も剣を納める。


「リシアに会わせてくれるか?」

「それは難しい。本当のことだ。ただ、王都に帰せるようになれば真っ先に君のところへ向かわせよう。」

「お前がリシアを王都に帰す保証がどこにある?」

「僕だって神託の聖女をいつまでも理由なしにここに縛り付けるのは難しい。それくらい解るだろ?」


これ以上の譲歩は引き出せなさそうだ。

もし、エドワードが約束を破ったとしても、エヴァンス子爵家には必ず一度帰す必要がある。

エヴァンス子爵家であれば快く私に会わせてくれるだろう。


リシアと会えないことは非常に口惜しいが、このままエドワードを切って会ったとして、その後は死罪になってリシアを悲しませるだけだ。

今日は引くしかないようだ。


「とでも言うと思ったか!」


私は再度エドワードの胸元へ剣をきらめかせる。


「おっと、当たらないよ。それ以上やれば僕もタダではすまさない。」

「この剣先に引っかかっているもの、なんだろうな?」

「ちっ、化け物が…!」


私が狙って居たのは最初からエドワードの胸ポケットの鍵だ。

エドワードは昔から大切なものを胸ポケットにしまう癖があり、今回もそうだとあたりをつけたのだ。


「ではリシアに会ってくる。失礼。」


私はリシアの元へと足早に向かう。

やっと。やっと会える。あの笑顔がまた見れるのだ。

面会謝絶の札のかかった部屋のドアを開ける。


「リシア!レベッカだ!体はどうだ?」


そう声をかけて入った部屋は、もぬけの空だった。

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