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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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ピロー・トーク

麗香視点です。

深夜、リシアを腕の中に抱えながら布団の中で二人会話する。

この時間が私は結構好きだ。

新年から数日、まだ身につまされるような寒さの中、人肌の暖かさに眠気をさそわれる。

世界はとても静かで、感じるのは二人の身じろぎの音と呼吸音だけ。

世界で二人きりではないかと思わされるその空間で、のんびりと話し合う。

それを幸せと呼ばずなんと呼ぶのだろうか。


「お姉さま。」

「なぁに。」

「私のおなかぺちぺちリズムよく叩かないでください。」

「えー。」

「それともぽんぽこ良い音が鳴るくらい腹が出てるって言いたいんですか?」

「そう言う訳じゃない。ただ柔らかいお腹の感触が好きで…」 

「ふぅん?」

「いだだ、抓るな抓るな。」


私は今の今までリシアのお腹を叩いていた手を思いっきり抓られ声を上げる。

柔らかいと太ってるはまた別物じゃないか。


「どうせ私は太ってますとも、お姉さまと出会ってから数キロも太って…」

「全然細いと思うけどなあ。それに私は全身どこを抱きしめても柔らかいリシアの触り心地がとびっきり好きで…痛いってば。」


更にリシアの機嫌を損ねた様で、私は再度同じところを抓られる。

リシアは何もわかっていない。

あの何も考えず後ろからギュッと抱き締めたときの質の良いビーズクッションのような、どこまでも手が入り込んでいきそうな低反発な柔らかさ。

あれは中々出せるものじゃない。

リシアの才能のなせる業だろう。

太ってるとかではないのだ、なぜだか不思議と柔らかい。


「お姉さまは乙女心がわかってませんね…。本当に乙女ですか?」

「リシアの騎士になったから、乙女は卒業だ。」

「ちょっとカッコイイこと言ってますけど、結局乙女心解りませんってことですよね?それ。」

「これでも讃えてるつもりなんだぞ?」

「はぁ、やっぱり解らないんじゃないですか。」


リシアはやれやれと言った風に溜め息をつく。

だがそれに関しては私にも言い分がある。


「乙女心が解らない、と言うがな?」

「解らないでしょう?」

「リシア以外の乙女心を攻略しようとしたことがそもそもないわけだ。」

「…それはそうかもですねえ。」

「そして、リシアの乙女心は解らずとも攻略したつもりだ。」

「いつの間に攻略されたんですか?」

「この体勢で寝ることが私たちにとって当たり前になったときから?」

「はぁ。まぁそうかもしれませんね。」

「なので、私には乙女心を解る必要がない。解ったところで使う機会がもうないからな。」

「いや、私の乙女心解ってくださいよ!?」

「知りませーん。」


リシアはぺしりと抗議の様に手の平を叩く。

さほど痛くもない。

実はちょっと照れているから、加減も加減されているのだ。


「私はリシアの好きなところを好きなだけ好きだー!って言う。乙女心など関係ない。」

「はぁ。」

「全身が柔らかいリシアが好きだー!」

「もう勝手になさって…。」


リシアが呆れたように黙り込む。

私はそれを許可と受け取って、お腹をぺちぺち叩いてみる。

しばらく叩いていると、リシアがばっとこちらを振り向く。


「黙って叩かれてるとは言ってませんからね…!叩いた数だけ私もやり返しますから!」

「きゃー、いったいどこを叩かれてしまうと言うんだ…!」


私は叩けと言わんばかりに腹筋に力を入れた。

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