初詣に行こう! その3
麗香視点です。
ここにいる皆が元気でいてくれますように。それからリシアがずっと隣にいてくれますように。それからリシアが私を甘やかしてくれますように。それからリシアがもっとデレてくれますように。それからリシアがあのミニスカートでまた膝枕を…
「…さま!お姉さま!」
「呼んだか?」
私が熱心に祈っていると、横で必死に呼ばれていることに気づく。
ちょっと集中しすぎたようだ。
「長いです!後ろの人待ってますよ!」
「まだお願いごとの途中なんだが…」
「もう、こういうのはちゃちゃっと終わらせないと迷惑ですよ!」
「それもそうか。」
私はリシアに手を引かれ、先に横に避けていた紫杏たち二人の元に誘われる。
「何祈ってたんだ?」
「□□のミニ…げふん。龍斗こそ何をお願いしたんだ?」
「あ?何でも良いだろうよ。」
「龍ちゃんと私はね~、麗ちゃんを助けてくれてありがとうって。お礼言ったんだよね?」
「だっ、紫杏言うなよ…。」
「私も同じ様な感じですね。」
「…心配、かけたな。」
私は皆に改めて深く頭を下げる。
「ま、今が元気なら良いんじゃないですか?ねぇ?」
「そうよ~。今じゃ、事故前より元気な気がするもの。」
「少なくともパワーは上がってるな。馬鹿力に磨きがかかった。」
「皆…。」
私は龍斗の手を取って握りつぶした後、紫杏とリシアと軽くハグをする。
「さ、じゃあ帰りましょうか。□□ちゃんのお節が待ってるものね~。」
「私もてつだったんだぞ?」
「ところで、お姉さま?」
「ん?」
「私のミニスカートの何を願ったのか、帰りながら聞かせて貰いましょうか…?」
もう一度病院送りにならないかな。これ。
◆ ◇ ◆ ◇
「黒豆美味しい。」
「ん~このたたきゴボウ絶品ね?後でレシピ教えてくれない?」
「黒豆美味しい。」
「ええ、構いませんよ。龍斗さんはかずのこお好きなんですか?」
「魚卵系が好きなんだよ。ぷちぷちして。」
「黒豆美味しい。」
「へぇ、良いんじゃないですか?痛風だけ気をつけないと。」
一人、黙々と黒豆を食べていると、リシアがすっと冷蔵庫からお重に入らなかった黒豆をタッパーで出してくれる。
甘くて美味しい。
「お待たせしましたー。雑煮ですよー。」
「わっ、汁が白い。白湯みたい。」
「餅も丸い。こっちじゃ見ねえ雑煮だな。」
「地元風なんで、お気に召すかどうか…。」
「私は気に入ったぞ!」
「食べてから言いましょうか。お姉さま?」
私はその白い雑煮をいただいてみる。
うん。塩気が薄いか?
麹が多く、とろっとかつつぶつぶした喉ごし。
甘いな。具の野菜が味噌汁の味を吸うというより、味噌が野菜の味を吸った風だ。
私の知っている汁物とちょっと毛色が違うが…嫌いじゃない。
むしろ、甘味好きの私からすると普通のより好みかもしれない。
「うむ。美味しいな。」
「でしたらまぁ、良かったです。」
「優しい味わいねぇ。」
「ポタージュみたいな風にも取れるな。こいつ。」
大方好評のようだ。
リシアは料理上手だからな。
「丸餅なのは理由があるの~?」
「角が立たないように、ですね。お節と同じ縁起物です。」
「まぁそうなのねぇ。龍ちゃん、麗ちゃん?たらふく食べなさい?」
「なぜ俺たちが…」
「お前がツンツンしてるからだろ。」
「おい。」
「二人とも?」
「「はい。」」
紫杏に睨まれたので黙って二人静かに餅を口に入れる。
そんな私たちをリシアがくすりと笑いながら見ていて、とても幸せな時間だなと思った。
「あっ、鯛の姿焼き焼けたかな?」
「私が味見しよう!」
「ずりぃぞ麗香!俺も食べてえ!」
「ああもう!私が全部食べますよ!?」
「「それは無理だろ」」
「どうしてそう言うときだけぴったり息が合うんですかね!?」




