今年も君を追いかけて
麗香視点です。
「おねーさまー。」
「なぁにー。」
「そろそろ解放して欲しいんですがー。」
「だめー。」
「暑いですー。」
「だめー。」
「そろそろ寝たいですー。」
「このまま私の胸で寝ると良い。」
「嫌ですよ、クッションになるほどない癖に。」
「でもそういうのが好きなんだろ?うりうり。」
「好きとは一度も………何度も言ってますね…」
「うん。」
年明けすぐ。
リシアを取り込んでこたつに入り込んだ私は、そのままリシアを慈しみながら一時間ほどを過ごした頃。
リシアが飽きてきたのかそろそろ脱出しようとするのを何とか粘っている。
ちょうどそんなとき、紫杏からビデオ通話がかかってくる。
リシアを膝に抱えたまま私はこたつにスマホを置いて出る。
「もしもし?」
『もしもし?あけましておめでとう。』
「あけましておめでとうございます。」
『あら□□ちゃん!おめでとうございます。ところで、□□ちゃんの後ろの見切れてるのが麗ちゃんでいいのよね?』
「そうです、見切れてるデカいのが麗香さんです。」
「どうも見切れてるデカいのです。おめでとう。」
『おめでとうー。年が変わってすぐはお邪魔かな?と思って一時間ほど空けたのだけど。』
「普通に掛けてきてくださいよ。」
『あらぁ、そう?』
紫杏は悪戯っぽく笑う。
リシアをからかっているようだ。
「ちょうど今からなんだ。邪魔だな。」
「ちょっと、何するんですか!?」
私はリシアのうなじにキスを落とすと、リシアは慌てて振り向いて怒る。
可愛らしい。
『続けて?』
「紫杏さんまで!?もう、からかうのやめてください!」
「リシア、今日こそリシアの赤ちゃん作らせて…?」
「ぎゃあああ、おねーさまぁー!?なに言ってんですか!?」
リシアのリアクションに思わず悪戯心が沸いた私は、あえてそういう発言をしてみる。
ぺしぺしと叩かれるが、それ以上に楽しい。
『麗ちゃん、それくらいにしとかないと嫌われるわよー?』
「□□が私のことを嫌いになることなんてない。」
「なってますがぁ!?」
『それはそうと、朝になったら龍ちゃんも連れて初詣に行こうと思ってるの。麗ちゃんと□□ちゃんも来ない?』
「どうする?リシア。」
「是非、行きたいです。」
『良かったわぁ。じゃあ、10時に迎えに行くわね?』
「わかりました。」
『じゃ、続き楽しんで~?』
「そうする。」
「いや、続きとかありませんからね!?」
そうして通話を切ると、しばらくの静寂が訪れる。
その後。
「…お姉さま…?」
「うん。」
「覚悟はよろしいですかね?」
リシアは体の向きを変えて、こちらを向く。
足を私の胴に巻き付けて、怒りの目でこちらを見てくる。
その視線にぞくぞくする。
「ふふ、何されるんだろう…?」
「存分に躾て差し上げますよ。」
「明日、10時に迎えに来るってことだけ忘れないようにな。」
「寝れると良いですね?」
そこでリシアはふと固まる。
…どうした?
「ああそうだ。せっかくですしお参りの後お節みなさんでいただきましょうか。私たちだけじゃちょっと多いでしょう?」
「そうだな?」
「紫杏さんにお昼はお節にしましょうと連絡入れといてください。四人で分けるにはちょっと少ないですから、何か他におかず作らないとなぁ。冷蔵庫…何かあったかな…。そうだ、お雑煮でも…。」
リシアはぶつぶつと言いながらすくっと立ち上がり、そのまま考えごとをしながらキッチンに歩いてゆく。
私は微妙に置いてかれた感じをどこに持って行って良いかわからないまま、苦笑する。
何かに熱中すると、他が見えなくなってしまうところも好きなんだけどな。
「リシア、私も手伝うよ。何用意する?」
「いや、材料があるか見るだけなので、お姉さまは座ってて良いですよー?」
「そんなこと言いながらどうせ下拵えとかいって準備だけでもし出すだろー?」
私は立ち上がって、リシアの背を追うようにキッチンに向かった。




