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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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タイガーアンドバニー その2

麗香視点です。

私はリシアに渡された衣装を着てゆく。

いっそサイズが違っていてくれ、と思うものの私のためだけに作られた衣装だ。当然、体にぴったりで。

とりあえず現状を確認するために姿見をのぞき込む。

…やっぱりこうなるよなぁ。

性的、としか表現のしようがない己の格好につい嘆息してしまう。


「いーやこれはダメだろ…。」


私はシールを当ててみる。

うん、いややっぱりダメだ。

着るよ?着るけども。騙し討ちに近いとは言え約束だ。

だがなあ。

何というか、最近のリシアはこう、困ったものだ…。

私は上下を限界まで引っ張り、大事なところにシールを貼る。

…むしろ変態さが増した気がするんだけどな。

私は三回ほど深呼吸をして、部屋を出る。


「…どうだ?」

「…とても素敵です。スタイルが良いとやはり映えますね。」


リシアは淡々とした調子で衣装の細かいところを確認しながらそう告げる。

何だか思ってた反応と違う。


「足が長いとエナメル質のタイツがすごくスラッと見せてくれるんですね。お姉さま、いつもより背高くなりました?」

「いや、そんなことはないと思うが…。」


もっとこう、興奮した感じなのかと思えば。

いつものコスプレ撮影会よりさらに冷静だ。


「これ持って、片指広げてその上に乗せて。そうそう。で、真っ直ぐ立って片足の踵を逆足の臑につけて、膝下まですすすと上げてもらって。良いですね。」


小道具のお盆とそれに乗せたカクテルグラスを片手にポーズを取る。

リシアはうんうんと頷いている。


「写真、何枚か撮っても良いですか?嫌なら構いませんが。」

「他に誰にも見せないならいいぞ。」

「見せる訳ないでしょう。…撮りますよ。」


真剣な顔でファインダーを覗き込み、慎重にぱしゃりぱしゃりと写真を撮るリシア。

恥ずかしい気持ちをぐっとこらえて、私は表情を作る。


「次はお尻をつけて、足を広げて、手を足の間に。良いですね。」


色々な指示をこなしつつしばらくの間黙々と写真を撮る。


「本当は暗いバーカウンターとかで撮りたいですが…さすがに厳しいですね…。」

「そう言うスタジオもあると思うぞ?」

「お姉さまがそこでも着てくださるというなら。」

「…まぁ、頑張るさ。」


そうして撮りたい構図が撮れたのかリシアはカメラを置く。


「ありがとうございました。着替えてきて良いですよ?」


…恙無く撮影が終わってしまった。

何というか、望ましい展開なのだが、なのだが…。


「どうかしました?」


リシアは首を傾げる。

虎耳のフードがずれて可愛らしい。


「最近、腹筋がまたよく仕上がって来たと思うんだが、どう思う?」

「さぁ、どうでしょうねぇ。」


丸出しの腹筋をさすりながら問うて見るが、リシアは興味なさそうに答える。

毎朝早起きして寝てる私の腹筋をさわさわしてる奴が興味ないはずがないんだけどな。


「触ってみるとわかることもあるかもしれない。触ってみて?」

「嫌ですよ。ほら着替えてきてくださいな。」


リシアはしっしと追い払うように手をやる。


「なぁ、実はそんなに魅力的ではなかった?」 


私は思いきって聞いてみる。

このままでは着た甲斐がない。


「はい?」

「リシアがつれないから。思ったより可愛くなかったのかなあって。」

「いえ、とても素敵でしたよ?」

「なら、もう少しなんというか、テンション上げてくれても良いんだぞ…?」


我ながら内心そういうリシアを期待していたことに苦笑する。

何だかんだ、いつもみたいに押し倒してとろけそうな甘い声で耳元で囁きながら褒めて欲しいのだ。


「はぁ…。」


リシアはとても長いため息をつく。


「め、面倒くさいこと言ってるよな!ごめん!」


私は慌てて撤回するように手を振る。


「普段のお姉さまがあんまりそういう雰囲気ばかりだと嫌がるから、際どい衣装着てるときこそなるべくしゃんとしないと次の機会に着てくれないかなと思って我慢してたんですけど…。」


リシアは吐き出すようにそう告げる。

それは悪いことをした。

 

「嫌じゃない、嫌じゃないんだ、口ではアレだがなんだかんだそういうの好きで…いかん、変態みたいだな。」

「ふふ、お姉さまは変態ですねぇ。」


リシアはうりうりと腹筋をつつく。

甘いしびれが体を走る。


「でも今はダメでーす。」


リシアはそこで切り上げてそそくさと部屋に入ろうとする。

私はそんなリシアの行動に違和感を抱いて捕まえる。


「どうして?」

「もう、ちょっとだけ待ってくださいな。」


リシアは虎の着ぐるみパーカーを庇うようにそういう。

ふむ、下に何か見せられないものを着ているのだろうか。


「あっ、お姉さま、だめですって!変態!スケベ!」


私は着ぐるみパーカーのファスナーをリシアの抵抗を受けながら下げていく。

そして引っ剥がすと中から出てきたのはノーマルなバニーガールの格好をしたリシアだ。

 

「お姉さまが逆バニーだから、私は合わせて普通のバニーにしたんですけど、その、やっぱり似合いませんよね…?」


リシアは顔を真っ赤にして、色々なところを手で隠そうとする。

…どうしよう、めちゃくちゃ可愛い。

この世のものではない。

私は落ち着いてウサ耳カチューシャをかぽっとはめてやる。


「…可愛い。」

「騙されませんよ。」

「せっかく合わせたんだから、一緒に写真撮ろう?ほら。」

「えっ、ええ?」


私はリシアを引っ張ってカメラのタイマーを設定し、並んで写真を撮る。


「ほら見て、可愛い。」


小柄なリシアはウサギさん感がとてもでていて素敵だ。


「お姉さまがすごすぎて見劣りすりんですが…。」

「ポーズ取ろう?こうとか良いかなあ?」


私は向き合うようにして腰に手を回しじっと見下ろすように顔を見つめてくる。

リシアはしぶしぶ合わせて私の腰に手を回し顔を見上げる。

上目遣いが可愛らしい。このまま見つめ合っていたいくらいだ。


「ほら撮れた。リシアとっても可愛い。」

「いやいや、やっぱりお姉さまのが可愛いですって。私なんか…」

「次はさっきのポーズ左右対称でやろう?」


私はお盆を差し出すと、またしぶしぶポーズを取ってくれる。

私はにこにこしそうになる表情を何とか整えて同じポーズをする。


「もう、似合いませんって…やめましょうよ…」

「めちゃくちゃ可愛い、ほらこことか。」


私は写真を指さして細かく褒めていくが、リシアは首を横に振るばかりだ。


「わかった。次で終わりにしよう、な?」

「仕方ないですね…。本当に次で終わりですよ…。」


私はリシアの腰を抱いてひょいっとお姫様だっこの形にする。

とても軽い。

びっくりしているリシアを横目にそのままベッドに連れて寝かせる。


「最後の一枚は心のファインダーに焼き付けようと思って…。」

「ダメです!終わり!だーめーでーすー!」

「普段されてることを今日はいっぱい返してあげる。たまには良いだろう?」

「ダメですってば!」


私はリシアに覆い被さって唇にキスをする。

普段とは逆に、積極的に舌をこちらから絡めて。

口を離した私は、少し顔を上気させたリシアの耳元で囁く。


「リシアの唇、素敵だ…今日はこれは私のものだからな?」


今から、リシアの一つ一つを愛して褒めてやろうと心に決めた。




ちなみに□□さんは未だに腹筋フェチを隠せていると思っています。

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