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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部五章 愛してる
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年末のあれこれ その4

「お姉さまー。痒いところはありませんか?」

「ああ。気持ちいいよ。」


お風呂にて。

私はお姉さまの綺麗で長い黒髪を丁寧に洗ってゆく。

最初にまず、頭皮を含め全体にぬるいシャワーを当て、お湯を馴染ませる。

次にシャンプーで頭皮を揉み込む。

毛先にはシャンプーが着かないようにしつつ、念入りに。

その後で、トリートメントを髪全体に染み込ませてタオルでまとめておく。


「長い髪の扱い、手慣れてるな?」

「実家にいた頃はお姉さまくらい長かったんですよ。何の手入れもしてませんでしたけどね。」


雰囲気が出るかと長くしていただけで、特にこだわりもなかったのでひどいものだった。


「ほう、それは一度見てみたいな。」

「恋人の黒歴史見て楽しいですか?」


誇るようなものは何もない。

見てもげんなりするだけだ。


「そんなことはない。リシアはどんな姿も素敵さ。」

「それはそれで、私の可愛くなろうって努力が無駄になったようでムカつきます。」


お姉さまの大きな背を軽くつねってやる。


「痛い痛い。そういうわけではないんだ。」

「じゃあ、何なんです?」


私はお姉さまの肩に顎を乗っけて顔の横から顔を出す。


「えっと…そのだな。」

「言葉に詰まってるじゃないですか。ふーん。」

「違う違う。リシアは魂が素敵だから…」

「結局見た目はどうでも良いって事では?」


お姉さまがとても迷った顔になる。

そろそろ意地悪をするのはやめようか。


「ま、良いです。お姉さまが私の見た目にもドキドキしてくれてるのは知ってるんでー?」


あえて胸をぴったり背中につける。

微妙にだらしない顔になる。

お姉さまは正直だ。


「そういえば、前々から聞きたかったんですけど…。」


私はそのまま体を出来るだけ密着させていく。

腕を回してお姉さまを抱きしめる。


「今、ずっと同じシャンプーとトリートメント使ってるじゃないですか。自分の髪から私の髪の香りがするの、どんな気分ですか?」


逃さないぞと顔を大仰にのぞき込む。

ふふ、照れてる。


「…正直、そばに居ないときもずっとリシアと居るような気分になる。でも、だからこそそばに居ないと寂しい。」


ふぅん。ちょっと望んでいた答えとは違うけれど。

素敵な答えだったので、私は満足する。


「これから、お姉さまの部屋で暮らすときも撮影とかで離れてる時も、私の使ってるものと同じ奴を携帯して使ってくださいね?約束ですよ…?」


耳に囁く。

お姉さまの背筋が震えるのが伝わってくる。


「では、お体お流ししましょうか?」


◆ ◇ ◆ ◇


「それで、お姉さま。」

「なんだー…?」


湯船でくったくたになってとろけているお姉さまを横目に私は髪を洗う。


「結局ご褒美、何にするんですか?」

「何の?」

「そりゃ、大掃除のですよ。」


お姉さまは足を全部湯船から出し、ぶくぶくぶくとそのまま顔を沈めてゆく。

その後しばらくして、浮上して大きく息を吸う。


「さっきのがそうじゃなかったのか?」


お姉さまは不思議そうな顔をする。

ああ、まぁ、アレもお姉さまにはご褒美ですよね。


「私がしたかっただけですが?次はご褒美としてもう一度します?」

「さすがに体力が保たない。勘弁してくれ…。」


お姉さまが必死に首を横に振る。

ちっ。


「トレーニングオタクの癖に体力少なすぎません?」

「それとはまた系統が違うし。リシアが化け物すぎるんだよ。」

「私が性欲オバケみたいな言い方もどうかと思うんですがね!?」


大変不本意だ。

人並み程度です。


「うーん、ご褒美かぁ…。トレーニンググッズを…」

「却下です。」


今でもだいぶ増えてるだろうが。

これ以上増やすなら倉庫借りさせるぞ。


「ああ、そうだ。晩御飯作るのまだなら、今日も私が作ろう。それがご褒美で。」

「よくわかりませんが…構いませんよ。」


本当によくわからないお願いだ。

全然構わないけども。

そうこうしているうちに私は体を洗い終える。


「お?入るか?代わりに出るぞ?」

「お姉さまはそのままで構いませんよ。」


私はそのまま湯船に歩を進める。


「待て。冷静になれリシア。さすがにこの狭い湯船じゃ無理だ。」

「わかりませんよ?」

「いや、わかる!目に見えてわかる!無理だリシア落ち着け!ぎゃー痛い!」



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