表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第三章 あなたのためなら
29/321

謝罪

長くなったので途中で切っています。

後編は9/6 21:00 更新予定です。

「ありがとう。おかげさまで随分とマシになってきた。さすがは神託の聖女、だな。」

「いえ、私は何も…」

「さて、何から話したものかな。」


体を起こし弱々しく笑うお姉さまは、まるで死にゆく病人の様にも思えて心がキュッとなる。

体が、というより心がとても弱っているような、そんな感じを受ける。


「これは対外的には隠されているから、口外はしないように。私の両親、ローエンリンデ公爵とその夫人は、二年前に亡くなっている。」

「えっ!?」


そんな設定は聞いたことがなかった。確かに原作では影もなく、一度も出てこない。断罪イベントの時も一切の出番はなかったのだが、ストーリーの都合とばかりおもっていた。


「私には次の当主となる兄も居たのだが…そちらも。少なくともローエンリンデ公爵家本家において、生き残りは私だけだ。分家の遠い筋なら残っているがな。」

「お姉さまの家族はみんな…」

「まず謝らせて欲しい。最初に私がリシアを妹分として受け入れたのは、家族ごっこでその寂しさを埋めるためだったと言える。」

「そんな、謝る必要は!」

「お姉さま、と呼んでくれた時、沈んでいた気持ちが少しマシになった気がした。家族が出来た気がした。その後もリシアのくれる親愛を、ただ自分の寂しさばかりに事情も言わずただ受け入れた。リシアは本当に私に信をおいてくれていると理解していてだ。」

「でも、お姉さまはそれに応えてくれたじゃないですか!」

「それでも、最初は誰でも良かったのだ。寂しささえ埋めてしまえるなら。本当にズルい、卑怯な行いだったと思う。申し訳ない。申し訳ない…。」


そう言って頭を下げるお姉さまの背がとても辛そうに感じ、私はそこを手で埋めるように近寄り、正面から抱き締める。


「たとえなんだとしても、お姉さまは私のお姉さまです…。」

「私は、私は本当にズルいんだ。リシアがこうして許してくれると確信が持てるまで、ずっと言えなかった…。きっと、次は私には耐えれなくて…。」


涙と嗚咽を押し込めようと努めるお姉さまの顔にそっと手を添え、胸元に抱き寄せる。

ただ、今は何も聞こえないことにして、静かに彼女の背をさする。


「すまない。良いパジャマを汚してしまった…。」

「こんなもの、後で何ともなりますよ。」

「…私には過ぎた妹分だな、本当に。」

「それでもお姉さまの妹分です!」


そう言ってにっこり笑うと、安心したようにお姉さまは同じく笑い、私にそっと体を預けながら話を続ける。


「数年前、ある時を境に領地の人間に体調不良が増えた。特に屋敷の周囲では酷く患うものが現れ始めた。」

「流行病ですか?」

「と、目されていた。病気の原因と治療法を探るため、我が父上も不調の体を押して陣頭指揮を取った。だが、目処は一向に立たなかった。」

「そんな…。」

「私は家族が戦っている中、酷く体調を崩し、一人王都に移されたよ。思えば、あの時それでも一緒に居たいと、死ぬならともに死にたいと、言えば良かったのかもしれない。」

「そんなことはありません!」

「結局、流行病ではなく隣の領地の鉱山が原因となり、公爵領の水が鉱毒で汚染されていたと発覚したのは、家族を全て失った後だった。」

「…。」


当時に思いを馳せている様子のお姉さまに何と声をかけていいか解らず、私はお姉さまの頭を静かに撫でた。

レベッカの身を冒した鉱毒には、現実にモデルとなったものがあります。

が、あくまで架空のものではありますので、実際とは違う症状が出るときもあるかと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ