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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部四章 君の全てを
250/321

共に歩めば

麗香視点です。

「おはようございます!お姉さま!」

「おはよう。リシア、大学はどうした?」


病室に来るなり熱烈なハグをしてくるリシアの頭を撫でながら問う。


「やだなぁ、お姉さま。今日は日曜日ですよ。」

「ああそうだったか。どうも病院にいると曜日感覚が狂ってしまうな。」


私は腕の中のリシアをめいいっぱい撫でてやる。

尻尾があれば千切れんばかりのご機嫌ぶりだ。


あれから。私は紫杏と龍斗とリシアに正式に謝罪し、二人の監視の元でリシアと色々なことを話し合った。

いつも言葉の足りない私だけより、二人が見ていてくれる方が良いだろうから。

そこでは、私を訪ねて来てくれるのは構わないが大学など自分の生活は犠牲にしてほしくないこと、しっかり休息はとること。そして、私は全力でリハビリをして手足を動かせるようになりたいこと。

そんな私を横で支えてほしいこと。そのどれをもリシアは二つ返事で了承してくれた。


「今週も全部ちゃんと大学行ってからお姉さまのところに来てますから。安心してください!」

「そうか。えらいぞ、リシア。」

「お姉さまこそ、ひそかに体を自分で起こせるようになってるではないですか。えらいです。」

「二人ともえらいってことだな。」

「ですね。」


私たちは見つめ合い、笑いあう。


「おう麗香、元気にしてるかーって、げ、□□が居るじゃねえか…」


龍斗が訪ねてくる。なにやら嫌そうな表情になっているが。


「龍斗さん、おはようございます!私が居たら何か不満でも?」

「そういう訳じゃねえけどな…」

「じゃあ何なんだ、はっきりしろ。」

「龍斗さんひどいです、私悲しい…よよよ…」

「お前のせいで□□が泣いてしまったではないか。全力で詫びろ。」

「本当に泣いてる奴はよよよとは言わないんだよな…」

「お姉さま、龍斗さんが私の泣き方を馬鹿にしました!」

「何だと!?龍斗、お前万死に値するぞ。」

「だーっもう!セットで揃うと鬱陶しいんだよお前等!」


入り口でぶち切れる龍斗を見てリシアがクスクスと笑う。

可愛いんだよな、こういうところが。


「何もう龍ちゃん、入り口で騒いで。」


紫杏がデカい龍斗の背からにゅっと顔を出す。

どうやら一緒に来て後から病室に顔を出したようだ。


「紫杏さん。龍斗さんが私に意地悪言うんです。」

「何ですって?龍ちゃんあなたなんてことを…」

「いや、紫杏は俺の味方しろよ!?」

「私は□□ちゃんの味方するけど?」

「紫杏さん…私も紫杏さんの味方です!」


リシアが嬉しそうに紫杏の方をみる。

私も負けられないとリシアを抱き寄せる。


「私もいつだってリシアの味方だ。」

「お姉さま…」

「帰りてえ…」


リシアと私が見つめ合う中龍斗のつぶやきだけがやけに大きく響いた。


◆ ◇ ◆ ◇


「お姉さま。あーん。」

「んー!おいしい。リシアの肉じゃがは絶品だな?」

「そんな、お姉さまの好みにただ合わせただけですよ。」


としても、ここまで美味しく思わせてくれる味付けにしてくれるというのがすごいのだ。

幸せ者だな。私は。


「今日はリハビリは何時ですか?」

「15時からだな。」

「わかりました。今日も頑張りましょうね。」


毎日のリハビリもリシアは可能な限りついて見てくれている。

まだ手足が動かせなかったころも、毎日の曲げ伸ばしとリハビリの先生から教わったマッサージを欠かさず行ってくれた。

リシアがこうしてリハビリを懸命に手伝ってくれることは、本当に比喩でなく力を貰っている気がする。

おかげで、医者も驚くほどのスピードでリハビリは進んでいる。


「この調子なら、退院には本当に補助なしで歩けているかもしれないぞ?」

「その時は約束通り共に温泉に行きましょう。」


リシアがグッズなどを処分して私にと用意してくれたお金。

あれは受け取らなかったものの、今更グッズを集め直すのも、ということで、それなら私が退院までに補助なしで歩けるようなことがあればこのお金で温泉に湯治に行きましょうと提案してくれた。

…リハビリの進みが速いのはそれも大きなモチベーションとなっているからだ。

だって、行きたいじゃん、リシアと温泉。

湯上がりのリシアはきっと…


「お姉さま?」

「な、なんだ?」


妄想に耽っていると、リシアに声をかけられて思わず声が上擦る。


「期待してますよ。」

「…ああ。」


私にはもったいないくらいの幸せな時間が過ぎていった。




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