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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第二章 知る
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私の欲しいもの

前話水着選びと話を少し重ねています。


今になって思うと、私があれほど人に怒りを抱いたのも初めてだったかもしれない。


狩猟大会の表彰式。

その日エドワードは確かに指定されたくまのぬいぐるみを手に入れ、そのまま受け取ったその足で持ってきた。

…私に。

その場で立ちくらみを起こしてしまいそうなほどに様々な気持ちが噴き出した私は、大勢の人の前でエドワードの胸ぐらをひっつかみ顔を引き寄せ、思いっ切りその顔を平手打ちする。

後ろでお姉さまが「よせ!リシア!」と止めようとするが、その程度では止めるには及ばない。


「あなた、馬鹿なんですか?」


思いが口から滲み出してくる。


「婚約者、居ますよね?せめて、最初は婚約者に持って行くのが筋じゃないんですか?」

「だがレベッカには似合わ…」


その瞬間、お姉さまの掴む手を振り払って、もう一発平手打ちを食らわせる。

この辺りから慌てて従者等が駆け寄ってくるが、私はこの程度で済ますつもりはない。


「似合わない?お前の目は節穴か?…まぁ、私も昔は思って居た時期もありましたし、個人の所感です。だとしても、皆の見ている前で、婚約者をすっ飛ばして贈り物を私に持ってくる理由がどこにあるんですか!!答えろよ!!おい!!」


私はまた手を振り上げるが、そこで強い力で押し倒されその手は届かない。


「お前の婚約者は!!私のお姉さまは!それでもお前と仲良くしようと頑張ってんだよ!!立派に役目を果たすために!悩みながら、立ち止まりながら!それでも!!なのに、お前良くもそんなことが出来るな!!離せ!離せよ!!私がお姉さまの分も怒らなきゃいけないんだ!」


そこからのことは、良く覚えていない。


◆ ◇ ◆ ◇


あれから数日が経った。

何かしらの厳罰も覚悟のことだったが、不思議なくらい何もなかった。

学園の生徒同士のいざこざというのもあったのではないか、という話もあったが、よくわからない。


お姉さまが欲しがっていたくまのぬいぐるみはどこに行ってしまったのか。

ケチがついてしまった以上、もう欲しがるとも思えないのだが、同じようなものを私からプレゼント出来れば、と思う。


それから表彰式で色々あって、学園の避暑地の利用権利は学園の生徒に一般開放されることになった。

非常に不本意ではあるが、今回も結果的にはエドワードが避暑地を一般開放するという、ルート通りの結末になってしまった。


あんな騒動になった後でもきっと、お姉さまは行くことになるだろう。

強い人だから、自分の使命から逃げることはない。


「お姉さまは避暑地にいかれるんですか?」

「まぁ、気は進まないが…行くほかないだろうな。」


ならば私が、せめて私が、お姉さまに降りかかる日々の礫から守りたい。

私の一番大切で、欲しいものなのだから。

たとえいつか、結婚してしまうとしても。この気持ちに答えられないとしても。構わないのだ。


「でしたら私もお供します!」







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