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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部三章 恋とは
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ネットカフェ初挑戦 その1

『先日の映画の作品、コミックスを持っていたら貸して貰いたいんですが、どうでしょう?』

『私は本誌で追ってる人なので、残念ながら単行本は持って無いんですよね。』

『そうでしたか。ちょっと読んでみたいと思って。でしたら、買ってみようかな?』

『それも良いですが、試しに前のスーパー銭湯とかで読んでみるのはどうですか?人気マンガなので、確実にあるかと。』

『それも良いですね。』

『もしくは、ネットカフェとか。』

『私、ネットカフェに行ったことがなくて。』

『私もありませんね。興味はあるんですが。』

『良かったら近いうちに一緒にいきません?』

『良いですよ?何時にします?』

『夜に通話でお話しましょうか。』

『わかりました。』


そんなやり取りがあって。

そして今私たちはとあるネットカフェの入り口に立っている。


「お姉さま、これが例のネットカフェですよ…!」

「ああ、緊張するな。」


ネットカフェって、何だか入りにくい気がする。

特にここの系列は入り口に謎の植物や石像が置いてあって、それが妙な圧を出している。


「何でこんな感じの入り口なんですかね?わかります?」 

「リシア、私に何でも聞いてみるの好きだな?」

「なんか謎に知識が出てきそうな気がして。」


店内に入ってみると、空のカウンターが一つ。

その上にある呼び出しボタンを押して店員を待つ。


「お待たせしました。」

「初めての利用なんですが、どうすればいいですか?」

「ありがとうございます。それでは会員証をお作りしますので身分証をお借りしてもよろしいですか?」

「免許証でいいですか?」

「はい、大丈夫です。」


麗香さんはちゃかちゃかと話を進めてゆく。

ここらへんの手際はさすがだな。

私の様な日陰者ではあわあわしてなかなか話にならない。


「お連れ様も身分証をいただいてもよろしいですか?」

「あっ、えっ、はい!」


てっきり代表者が出せば良いと勘違いしていた私は、慌てて財布を出す。


「えっと、身分証…身分証…。」

「落ち着いて。学生証で良いんじゃないか?」


何故か麗香さんが私の頬を指でこちょこちょしながらそう声を掛ける。

それで少し落ち着きはしたが、今度は恥ずかしい。

店員のお姉さんも何故か微笑ましいものを見る目でこっちを見ていていたたまれない気持ちになる。


「学生証です…。」

「ありがとうございます。それではコピーさせていただきますので、こちらの書類の太枠部分を埋めてお待ちください。」


そう言うと店員さんはいそいそと裏に回る。


「もう!何でそう言うことするんですか!」

「すまない。リシアの緊張がほぐれたらなと思ってな。」

「それの倍恥ずかしいです!どうしてくれるんですか!」 

「どうもしないが?」


その私をちょっとおちょくった回答にイラッと来た私は麗香さんの脇腹にパンチを繰り出す。


「おっと、キレが足りないな。」

「ぐぬぬぬ、このっ!」


繰り出した拳を手でキャッチされた私は、もう片方の拳を繰り出す。

その拳もキャッチされて、両手で組み合うような形になる。


「お待たせしました…お待たせしました?」

「あ、あ、あ…すいません…。」


そこで店員さんが戻ってくると、私たちの謎の体勢に目を白黒させる。

私はさらに恥ずかしくて顔から火が出そうだった。



◆ ◇ ◆ ◇


「ありがとうございます。こちらがお二人様の会員証となります。次回ご利用の時にも必要になりますので、なくさないよう気をつけてください。」

「はい…。」


まだ少し恥ずかしさが残っている私は消え入りそうな声で答える。

店員さんも少し苦笑いしている。


「それではお席ですが、カップルシートでよろしいですか?」

「あっ、カップルじゃ…」

「二人用、って意味だと思うぞ?」


麗香さんが体を傾けてニコッとこちらの顔を見る。


「そう…ですね。二人用のシートでよろしいですか?」

「ごめんなさい…それでお願いします…。」


もう帰りたい。穴があったら入りたい。


「可愛いだろ?」

「そうですね。」


麗香さんが問いかけ、店員さんが大きくうなずく。

私はもうどこかに消えてしまいたかった。

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