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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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麗香の昔話

麗香視点です。

「さて、何から話したものか。あまり長くても飽きてしまうだろうしな?」

「そんなことないです。聞きたいです。」


□□の真剣な表情に思わず笑顔になる。

□□は、いつもこうしてまっすぐに話を聞いてくれるな。


「いや、そんなにおもしろいこともなければ長くもないんだ。まぁ軽く聞いてくれ。」

「わかりました。」


そううなずいて見せる姿がすでに真剣で軽くではない。

思わず頭を撫でようとすると避けられた。


「私は物心ついたころから両親が居なくてな。乳幼児の頃から施設で育った。」

「施設…ですか。」

「まぁ、公的なしっかりしたところだ。本当によく面倒を見てもらった。」

「そうなんですね。」

「10歳の頃だったか。私と同い年の男の子が同じ施設にやってきた。とある事件で両親を同時に失ったそうだ。それが龍斗だ。□□が見たツンツン頭の人相の悪い奴だな。」

「はい。いらっしゃいましたね。」

「奴は対抗心の強い男でなあ…元々力の強かった私によく突っかかって来たよ。思えば、事件の時に母親を守れなかった後悔もあったんだろうな。人より強くなりたがっていた。」

「優しい人なんですね。」

「ああ。良い奴だよ。尤も、短距離走、腕相撲、筋トレ。全部私が勝ち続けているがな?」

「麗香さんは麗香さんで大人げないですね…。」


□□が呆れたような顔をする。

納得のいかない私は首をすくめる。


「それで、その一年後にまた同い年の女の子が施設にやってくる。その子は両親が離婚して、片方に引き取られたは良いもののネグレクトされ施設に引き取られたそうだ。名は紫杏。もう一人の女の子だな。」

「ああ、あの穏やかそうな…。」

「そうだ。紫杏はなぁ、施設に来た頃全てに無気力無関心といった感じでただただ静かに座っている子だった。きっと、環境がそうさせたんだろう。今からは想像がつかないがな。」

「本当に意外です。」

「あれを変えたのは龍斗だよ。さっきも言ったとおり、奴は母親を守れなかったことが後悔だった。だから、紫杏に対しても心配で、守ってやりたかったんだろう。ずっと色々な面倒を見ていたよ。まぁ11の男だ。面倒を見るといっても連れまわしたりとかだけどな。」

「ああ、まぁそうでしょうね。」

「懐かしいな。龍斗が紫杏の手を引いて私のところに勝負を挑みに来る。だいたい私にコテンパンにやられるんだ。そんなことをしてるうちに、ちょっとずつ紫杏がそれを見て笑うようになって。いつの間にやら、龍斗が面倒を見るんじゃなくて龍斗が面倒見られてたな。」

「なるほど。なんか解る気がします。」

「私が勉強に注力しだしてからは、龍斗も競うように勉強を始めて…紫杏は私たちの夜食を作ったりしながらも、私たちが勉強を終えるまでは必ず一緒に付き合ってくれていた。同じ部屋でよく教えあいながら勉強したものだ。」

「だから皆さん一緒に良い大学に行かれたんですね。」

「そうだな。あの二人は私の自慢だよ。そうして私は高校時代から始めたモデルの収入で、二人は同棲して色々節約しながら奨学金とバイト代で、それぞれ施設を出て独り立ちを始めた。」

「そして今に至ると。」

「そうだ。だから、なんというか…あの二人は私にとって仲の良い友人というのもあるが…家族なんだよ。龍斗と紫杏は恋人同士でもあるが、同様に家族だとも思っていると思う。無論、私に対してもな。」

「家族、ですか。」

「まぁ、大学でも二人とつるむことが多かったし、モデルの仕事で人より顔も出さないから、他に知り合いはいれどそんなに仲良くはないんだ。浅く狭くだな。そんな私だが、深い付き合いの大切な友人が出来た。誰だと思う?」

「…私、ですか?」


少し照れた、でも嬉しそうにそう答える。

その動作が一々ツボに来る。


「正解!ご褒美に…」

「要りません。」

「つれないな。」


撫でられまいと微妙に警戒している。

じりじり寄るとじりじり離れていく。


「と、いうことでだ。□□が見たあの二人は私の家族。そして□□は家族以外では一番の友人だ。そんな一番の友人が風邪をひいたと聞いて居てもたっても居られず看病に来たってことだよ。だから、自分が一番の友人でないというのは勘違いだ。解ったか?」

「ありがとうございます…。」


そう言うと少し下を向いて布団をまたよじよじする。

だが、先ほどと違い、どこか幸せそうだった。




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