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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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目覚めて

麗香視点です。

「おはよう。□□。」

「あれ?麗香さん?えーっと…。」

「寝る前のことは思い出せるか?」


起きあがろうとする□□の体をそっと支え起こしてやる。

□□は少し考えるそぶりをした後、ぽつりと口を開く。


「…もしかして、私麗香さんにそこそこ失礼なことしました?」

「そんなことはないと思うがな?」


□□の発言に思わずくすりとなる。

あの程度を失礼と言えるあたりが可愛らしい。


「あの、ごめんなさい。そしてありがとうございます。ここまでしてもらって。」

「いいんだ。私がやりたかっただけだから。それより、熱はどうかな?」


□□のおでこに手を当てると、少し気恥ずかしそうにしながらも大人しく熱を測られている。


「うん、一旦熱は引いたみたいだな。とはいえ、まだぶり返す可能性はある。今日は大人しくしてるんだぞ?」

「はい。」


□□は神妙に頷く。

その様子がまたまた可愛らしい。

困ったものだ。


「しかし、風邪とはどうした?体でも冷やしたか?」

「あー…ちょっと昨日の雨に降られちゃって…。」


□□は少し気まずそうに目を反らす。

この様子は、何かあったな?

先ほど寝る前に言ってた事に関わりがあるかもしれない。


「□□は、私に何か言いたいことがあるんじゃないか?」

「いや、そんなことは…」


否定しようとする□□の目をじっと見つめる。

最初は言わないとばかりに黙りこくっていた□□だが、私の視線に居心地悪そうにしばらく座っていた後、観念したように口を開く。


「昨日お昼、実は□□さんの大学に行ったんです…。」

「そうなのか!?」

「そこで、その。お友達と楽しくされてる麗香さんを食堂で見て。私、嫉妬してたんだと思います。」

「昨日の食堂といえば…」


龍斗と紫杏と恋愛相談をしていたはずだ。

確かに仲の良い友人と居たと言って差し支えないだろう。


「あの、私お恥ずかしながら、今まで麗香さん以外にまともに友人が居なくて…だから、勝手に麗香さんもそうだと思いこんでた節があって…」

「なるほど。」

「麗香さんが通知が来てるはずのスマホを見て、返信せずにお友達と話し続けたのがちょっと悲しかったんです。おかしいですよね。麗香さんの一番の友だちになったつもりで…。」

「スマホ?ああ…。」


恐らく龍斗と紫杏に□□の写真を見せようとしたときだろう。

あの時、そもそもスマホの電池がなかった。

スルーしたわけではない。


「あれは、スマホを見ようとしたら充電を忘れててつかなくて…□□のメッセージをスルーしたわけじゃないんだ。」

「解ってます。メッセージでもそう言ってましたもんね。でもそれで、私ちょっと拗ねちゃって…雨の中傘もささず返って…勝手に一番の友人と勘違いして、それで勝手に拗ねて…馬鹿みたいですよね。」


□□は少ししょんぼりとして布団の端をよじよじする。

自分が悪いと思っているのだろう、小さくなったその姿には哀愁さえ漂う。

その様子に私のハートは完全に落とされる。 

思わず私は□□のその体を抱きしめる。


「かっわいいなぁ□□は!どうしてそんなに可愛いんだ?」

「きゃ!?あの、麗香さん!?…私今ちょっとたぶん汗くさい…」

「可愛い、本当に可愛い!ちょっと頭撫でても良いか?」

「えっと、あの、ダメです。」

「そうかそうか!じゃあ撫でちゃおう!」

「ちょっと、麗香さん!!」


□□の意向をスルーして、思いっきり頭をヨシヨシしてやる。

なんだかんだ□□はされるがままになっている。

ひとしきり□□を愛でた私は、□□を解放してやる。


「□□は可愛いな。なぁ?」

「どうしてこうなったのか、全然わからないんですけど…。」

「そりゃ、□□がとっても可愛らしいこと言うからじゃないか?」

「いや、ちょっと訳解んないですね…。」

「そうか?じゃあもう一撫でしても?」

「ダメです。」


□□がふしゃーと毛を逆立てた猫のようになる。

さすがにこれ以上撫でると怒られそうなので、私は手を引っ込める。


「なるほどな。事情はわかったよ。それでいじけてた可愛らしい□□ちゃんは雨に濡れて帰り、こうやって風邪をひいたわけだ。」

「言い方がなんか腹立ちますが、そうですね。」

「だがな、□□。その話にはちょっと勘違いがある。」

「私が麗香さんの一番の友人ってところですか?」

「違う。そんなわけ無いだろう。…そうだな、少し私の身の上話からしようか。」


龍斗と紫杏の話からするには、少し昔話をした方がいい。

そうして私はぽつりぽつりと昔のことを語り始めた。

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