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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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近くて遠い

麗香視点です。

『今、何してますか?』


そのメッセージに気がついたのはメッセージが来てからずいぶん後のことだった。

たまたま、珍しくスマホを充電せず

に眠りそのまま大学に来たせいだ。

普段そこまでスマホに頼ることもないのでモバイルバッテリーといった類いもない。

紫杏か龍斗にモバイルバッテリーを借りることも考えたのだが…


「□□の写真を見せたいのだが…龍斗、モバイルバッテリーはないか?」

「あん?モバイルバッテリー?…ああ、もちじゅうな。」

「いちいち言い直すな。そもそも龍斗はもちじゅうなんて可愛らしい言い方するような面じゃないだろう。」

「うるせえ。もちじゅうって言ったら貸してやるよ。」

「紫杏、モバイルバッテリーを貸してくれないか?」

「良いけど…麗ちゃん充電ケーブル持ってるの?」

「…持ってきてないな。」

「はっ。これに懲りたらお前もiPh○neに乗り換えるんだな。」

「何故にそんなに自慢げなんだ。別にどちらでもいいじゃないか。」

「麗ちゃん、iPh○neは良いわよ。」

「紫杏まで…。この世はもうお終いだ…。」


と、まぁケーブルの違いでモバイルバッテリーも使えず。

結局夕方になり家に帰宅し、ようやっと充電しながら着替えたりだのして落ち着いた頃に画面を見て□□からのメッセージに気づく。


『ごめんなさい。スマホの充電を忘れていて、今見ました。何か御用でしたか?』


慌ててそう返信して画面の前で待つが、一向に返事は来ない。

私も返信が相当遅れたのだ、今すぐ来なくて当たり前だが--


「もどかしいな。」


いつも以上にすぐに返信が来ないことがもどかしい。

□□が多少返信をすっぽかした程度で怒るとも思えないのだが、なんだか少し不安な気持ちになる。


とはいえ、ずっと画面の前に居るのも非建設的だ。

家のことを済ませながら、時折画面を見る。

…中々家事が進まない。

スマホの音量を最大にして置き、画面を見ないようにして待つ。

そうして夕食を作っている最中、通知の音が部屋に鳴り響く。

私は慌てて手を洗って拭き、駆けつける。

…龍斗からのメッセージだった。

あいつ、明日見かけたらただじゃ置かない。


◆ ◇ ◆ ◇


「…よし、今日の分は終わりだな。」


いつもより少し時間をかけて日課のトレーニングを終えた私はスマホの画面をちらりと見る。

結局、今日は返信が来なかった。

さすがにもう寝ている時間か。

一度通話を掛けてみることも考えてみたのだが、普通に考えたら返信も来ていないのに迷惑だろう。


私はシャワーの蛇口をひねり汗を流す。

…そういえば、□□のスマホはどちらだっただろうか。

モバイルバッテリーの呼び方はどちらだろう。

今日は何の用事だったんだろう?

聞きたいことがたくさん溢れ出てくる。

ああ、今すぐ連絡したいな。

どうしてこんなにすぐ連絡する手段がこの世界にはあるのに、心はいつもとても待ち遠しいのだろう。


◆ ◇ ◆ ◇


そして床に就く。

明日、起きたら返信をくれるだろうか。

怒ってたりは…しないよな?

一応最後にスマホを開いて確認し、それから目をつむる。


眠れない。

横向きになり、□□を抱いて寝たときの様な格好になる。

だが、やはり眠れない。

まぁ当然か。本人がここにいないのだから。

結局、元の体勢に戻る。


元々、寝付きは良い方ではない。

寝ている間も周りのことを把握出来てしまう性質柄、中々眠りは浅いことが多い。

前の世界でもそれを解消してくれたのはリシアだったな。


寝れなくても良い、ただ体は休ませないとな。

そう己に言い聞かせながら目をつむり深呼吸する。

次第に自分が眠りに落ちていくのがわかる。


そうして翌朝起きて枕元のスマホを見た私は、返信が来ていないことに肩を落とすのだった。



GW、がっつりお休みをもらってたので今週末は更新したいなと思っています。

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