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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部二章 友達
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手を引く

5月。GWも明けた頃。

憂鬱な気分で大学に来た。

が、今はそんな気持ちも吹っ飛んでいる。


「はむっ。んん…やっぱり美味しいな…。」

「麗香さん、そのピザ好きですねえ…。」


とある空き教室。

以前の様な騒動にならないよう、人気のないこの教室でテイクアウトした巨大ピザを食べている。

というか、巨大ピザなのに出来るんだ。テイクアウト。


「食べでがあるのもいいが、焼き加減が絶妙でな。」

「そういうもんですかね。」


目の前でピザを満面の笑みで頬張るのは麗香さん。

よく使うスタジオの一つが近くにあるらしく、こうしてまたやってきた。


「□□はもういいのか?私が食べてしまうぞ?」

「ええ、もうお腹いっぱいなので。麗香さんが食べて下さいな。」


そういうと麗香さんが幸せそうにピザを取り口にする。

食レポとかも出来るんじゃないか。彼女が食べていると美味しそうに見える。


「今日はこの後どうするんだ?」

「次の衣装の為の素材を買いに行こうと思っていたんですが…まぁいつでもいいので、どこか行きますか?」

「なるほど。ならせっかくなら私も連れて行ってくれないか?」

「麗香さんをですか?良いですけど、楽しいかはわかりませんよ?」

「□□となら、どこだって楽しいさ。」

「はぁ。」


麗香さんの発言に少しドキリとさせられるが、ツッコミ待ちのいじりなのは容易に想像にできるのでスルー。 


「バイクを止めるとこはあるだろうか?連れて行こう。」

「あるとは思います。いつもありがとうございます。」


こうして私は見慣れたバイクの後ろに跨がったのだった。


◆ ◇ ◆ ◇


「なぁ、□□、あれはなんだ?」

「あれはフィギュアのアウトレットですね。」

「これ、すごく出来が良いな。」


麗香さんを連れてやってきたオタク向けの通り。

麗香さんはすぐ何かに目がゆき立ち寄るためなかなか進まない。


「なぁ、□□。見てくれ。人気アニメの見たことのない漫画が売られてるぞ?」 

「麗香さん、とりあえず先に買い物を済ませましょうか。」


いろんな意味でヤバそうなブツを手に取った麗香さんから無理やりそれを取り上げ、手を引く。


「…ふふ。」

「何を笑ってるんですか。」

「いや?」


謎にニタニタしている。

変な人だ。

これ以上どこかに行かないよう、しっかり手を握り引っ張ってゆく。


「今回はどんな衣装を作るんだ?」

「そろそろ夏が近いので、夏の避暑地編の衣装にしようかなーと。」

「ああ、あのピンクの。」


そう、ピンクのフリフリの夏ドレス。

プレイヤーから色々言われていた、アレだ。


「…レベッカにあれは似合わなかったな。」 

「うーん、そうですねえ。」


残念ながら、あまり似合っていたとは言い難いのだ。

本人の見た目にそぐわない。


「私も可愛いタイプは似合わないからな。あまりしないチョイスかもしれない。」

「そうですね。雑誌でもキレイめ、格好いい系がほとんどですもんね。」


麗香さんがモデルをしている雑誌でも、洗練された美しさといった感じを全面に押し出している感じだ。


「でも、もし本当は可愛いものが好きなら、それはそれで良いと思います。」

「じゃあ私が可愛いものを着ても良いと?」

「レベッカのあの衣装は、ちょっと合わせ方が悪かっただけだと思うんですよね。しっかり考えて合わせたらそれなりになるのではと。もちろん最良にはなりませんけど、好きってことは大事ですから。」

「ふふ、そうか。」

「麗香さんは可愛いの、着たいんですか?」


ちょっと気になった。

案外この人、可愛いものが好きな気がするのだ。


「うーん、そうだなぁ。□□とペアコーデの可愛いのが着たいかな?」

「私とペアですか!?」

「□□は可愛いのとても似合うと思うんだ。」

「絶対麗香さんの顔の良さに食われるので嫌です。」

「じゃあ、□□だけでも…。」

「論点すり替わってません?」


そう指摘すると、気づかれたかと言った顔でこちらを見る。

気づかないわけがない。


「はぁー…。」

「すまない。でも本当に□□はもっと可愛い格好をしても良いと思うんだ。」

「そうですかねえ。」


所詮中の下が良いところの私がそういうのを着ても大差ない気がするのだが。


「一度着てみるだけでも良いじゃないか。今度一緒に服を見に行かないか?」

「まぁそれくらいなら…。」

「決まりだな。楽しみだ。」


麗香さんはうれしそうにこちらを見る。

まぁ私も麗香さんに普段衣装着せてる身だしな。


「お、あっちで何かやってるぞ。行こう、□□。」

「だから先に買い物するんですって!」


またもや何かに引き寄せられそうになる麗香さんを引っ張り、私たちは目的のショップへ向かったのだった。

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