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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第二章 知る
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おうちデートその1

「これで大丈夫かしら…」


前日から使用人たちに屋敷の掃除をお願いして念入りにしてもらっているが、不安は拭えない。

普段は気にもとめない窓の桟までが気になってしまう。

お父様からは「まるで恋する乙女だな。」と苦笑いされてしまった。

でも、それも仕方ない。だって今日はお姉さまがうちに遊びに来るのだ!


「ローエンリンデ公爵家の方が来られました!」

「お通しください!今出迎えに参ります!」


ついにやってきた。胸が高鳴る。

急いで応接室へと向かい、ドアを開けるとそこには--


「お姉さま!ようこそお越しくださいました!」

「お邪魔しているよ。今日はお招きありがとう。」

「こちらこそありがとうございます!」

「ちょっとばたばたしていたように見えたが、もう少しゆっくり来た方が良かったかな?」

「あれはその…いくら掃除や片づけをしてと不安で…」

「はっはっは!なるほど、それは仕方ない。私のために精一杯用意をしてくれていたのだな。」


それから私たちは淹れてもらったお茶が冷めてしまうには充分な時間、他愛のない話で盛り上がる。


「そういえば、お姉さまのご趣味に合いそうなカチューシャを見つけましたの。一度私のお部屋に来てもらっても?」

「ああ、では行こうか。」


「髪をいじらせていただいてもかまいませんか?」

「もちろん。遠慮なく頼む。」


そう言ってお姉さまは躊躇なく私に身を委ねる。これは頑張りがいがある。

まずは後ろ髪を二つにまとめて前に持ってきて、その後その二つの束をまたいくつかの束にわける。

その後、その束の一つ一つをヘアカーラーに巻きつけていく。

そしてツーサイドアップにしてカチューシャをつければ…


「じゃーん、黒髪縦ロールのツーサイドアップにカチューシャです!どうです、可愛いでしょ??」


よくある悪役令嬢の金髪ドリルってやつだ。

まぁお姉さまの場合は黒髪なのだが。

これにカチューシャを付けると、ゴスロリチックでおそらくピンクのドレスにも合うだろう。



「少し可愛すぎないか?」

「可愛すぎるくらいでいいんですよ!可愛いんですから!」

「それは言い過ぎだ。でも、一度例のドレスに合わせてみたいな。やり方を教えてもらってもいいか?」

「ええ、お任せください!ヘアカーラーは出来れば前日の夜から…」

「何と、前日からなのか」


私の髪のセット方法の説明を真剣に聞きメモをするお姉さま。

やはり可愛いを作りたいのは全世界共通である。


「なるほど…すごくタメになるな。」

「是非一度お試しいただければ。あのドレスと合わせた姿も見てみたいです!」 

「な、なぁリシア。」

「はい、何でしょう?」

「その、良ければ同じ様な服でお揃いの格好とかしてみないか…?ちょっと、憧れていてな。」

「それはとっても良いですね!姉妹コーデ、やりましょう!」

「ふふ、うん、楽しみだ。」


仲の良い友人とのお揃いコーデ、誰しもが通る憧れですもんね。わかるなあ。

推しとか、そう言ったことを抜きにこの人とお揃いコーデが出来ることを楽しみにしていることに我ながらすごく驚きだ。


「いつの間にか、お姉さまはお姉さまになって居たのですね。」

「ん、どういうことだ?」

「お気になさらず~!」


「ところで、聞きたかったのだが、なぜ服が額縁に入れられて飾られているのだ?」

「えっ、あっ、あー!」


ヤバい。一番隠さなきゃものを隠すのを忘れていた。

そこにあることが日常になりすぎて全く慮外にあったのだ。


「えーっと、その、これはなんというか…」

「んー?…よく見ればこれ、春のお花見の時に私に貸してくれた上着ではないのか?」

「いや、あの、違うくて、いや、違わないんですけどその」

「…まさか、私が着たからという理由で飾っていたりしないよな?」

「あっあっあっ、えっと、何故」

「……あっはっはっは!考えることは同じかもしれないな!」

「えっ?」

「いやな、私もリシアが私に服を買ってくれたとき、何だか勿体なくて飾ってしまいたいと思ったことがあってな。だからなんとなく察しがついてしまったよ。」

「それは普通に着てくださいお姉さま」

「リシアがそれを言うか…?」


こうして、応接室で過ごした以上の時間を二人は仲むつまじく過ごして行ったのであった。


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